第6話 鉱山
Side:スルース
「僕、鉱山の依頼受けるの? きつい仕事よ」
冒険者ギルドの受付嬢が心配顔で、俺を覗き込んだ。
「大丈夫、やれないと判断したら帰ってくる。でも、パイルバンカーに撃ち抜けない障害などない。それに、やりたいから。恰好良いじゃない」
「えっ、鉱夫が」
「うん、男らしい仕事だよね。まさに男の仕事」
パイルバンカーで掘り進む。
最高に良いじゃないか。
「そう言われれば、そうだけど。もっと別なのがあるわよ」
「いやこれが良いんだ」
「無理そうだったら、恥ずかしがらないで、帰ってくるのよ。あなたの年齢なら無理でも仕方ないんだから」
「うん」
ギルドで鉱山の依頼を受けて鉱山行きの馬車に乗る。
これはギルドが用意してくれた馬車なので無料だ。
金のない俺には好都合。
馬車に揺られること2時間。
山のふもとに着いた。
「うひゃあ、ここがパイルバンカー撃ち放題の職場かぁ。たぎるぜ! たぎるぜ! くぅ、堪らん!」
ちまちま歩いて、山上りなどしていられない。
「【バリヤー、エクスプロージョン】、ひゃっはぁ。ロケット加速」
背中に当たる爆風で体が痛いが、そんなのは些細な事だ。
一刻も早くパイルバンカーを撃ちたいぜ。
ロケット加速を連発して、誰よりも早く鉱山の入口に着いた。
そこには袋に入った鉱石が山と積まれてた。
採掘道具係の立て札がある。
立て札がある建物に入った。
「おい、坊主。お前、ハンマーを振るえるのか?」
職員が俺に声を掛けた。
「御心配には及びません。魔法でやるので」
「魔法増幅系のスキル持ちか。まあ良いだろ」
「鉄の杭を貸して下さい」
「ハンマーは使わないが、鉄ノミは使うのか」
「はい」
ずっしりと重い鉄の杭と空の袋を持って坑道の奥へと入る。
誰もいない場所を見つけた。
観客がいる方が盛り上がるが、何となく失敗しそうなんだよな。
失敗したら、ちょっと恥ずかしい。
じゃあ、一丁やってみますか。
「【バインド、バリヤー、エクスプロージョン、クールウォーター】」
鉄の杭が空中に固定され、その後ろに結界が出来、結界の中が爆発。
杭が岩に叩きつけられた。
俺は岩に叩きつけられた。
がらがらと鉱石が崩れる音。
「くっ、威力が強すぎたか……」
体が動かない。
しばらく経って。
「坊主、しっかりしろ」
という声が微かに聞こえた。
眠いんだ。
寝せてくれ。
気が付くと鉱山の救護所だった。
体は痛いが、たんこぶがある以外は大丈夫だ。
余裕、余裕。
脳震盪を起こしただけか。
ベッド脇には木札3枚と鉄の硬貨6枚が置かれてた。
ええと、この札は何?
俺は札を手に取ってじろじろ見た。
「坊主、初めてか。その札は、1袋の鉱石を採ると1枚もらえる。相場は変わるが、札1枚で大体銅貨3枚だ。端数はここだけで使える鉄貨で払われる」
隣のベッドに寝ている男に言われた。
骨折しているのだろう。
包帯と添え木が見える。
スキルで治せば一瞬で治る。
スキルでの治療は治療費が高いのかもな。
俺も怪我には気を付けよう。
パイルバンカー関連でなら、どんな怪我もどんとこいだけど。
「説明してくれて、ありがと」
「いいってことよ。寝てるのが暇で暇で、ちょっと話し相手になってくれ」
「うん」
それから、色々と鉱山の話を聞いた。
鉱山では助け合いらしい。
でないと簡単に死ぬ。
ロックワームというモンスターがいるらしい。
おお、ちょうど良い敵だ。
神様に感謝。
実に良い。
俺が掘った鉱石を札に変えてくれた人にはお礼を言わないと。
ベッドから起きて、体の確認。
骨に異常はない。
打ち身とたんこぶがあるだけだ。
「俺をここに運んで、札を持って来てくれた人は誰?」
「おう、ラークさんだ」
「ありがと、じゃ、行くね」
「坊主、またな。たまに来て、話し相手になってくれると嬉しいぜ」
何人かに聞いたら、ラークさんはすぐに見つかった。
「救護所に運んで、鉱石も換金してくれて、ありがとう。スルースと言います」
「いいってことよ。助け合いが大事だからな。怪我が酷くなくて良かったな」
「うん」
「ところで、助ける前に、爆発音がしたが、ありゃ何だ?」
「パイルバンカーだよ」
「パイルバンカー?」
良くぞ訊いてくれました。
誰かにパイルバンカーのことを話したくて堪らなかったんだよ。
「パイルバンカーってのは金属の杭を爆発で撃ち付ける武器なんだ。最強武器で、ロマンなんだ!! 胸熱で!! 爽快で!! 切り札で!! 見せ場で!! 芸術で!! そんで、そんで……」
「おう。まあちょっと、落ち着け。鉱石を掘れる威力があるなら、Dランクのモンスターぐらいには勝てるか。坊主の歳なら、凄いぞ」
「うん、まあね。今はDランクぐらいだけど、完成したらSランクだ」
「夢がある話は嫌いじゃないぜ。俺の夢は金を貯めて、店を持つことだ。そして、綺麗な嫁さんをもらって、子供に恵まれ、幸せになる」
「良い夢だね」
「ああ、平凡な夢だけどな。未来の俺を想像すると頑張れる」
「俺もパイルバンカーの未来を想像すると、おかず無しで毎日パンが食える」
「くだらねぇ。ゴミ虫共が、揃って。糞妄想を垂れ流しているぜ」
「タックル、俺達の夢を糞だと言うのか!」
「おう、そんな夢、糞の役にも立たねぇ。糞なら肥料になるからな。ここはゴミ溜めなんだよ」
「ここがゴミ溜めなんて、百も承知だ。そのゴミ溜めをタックルお前も這いずり回っているんだぜ。ゴミ溜めだからこそ、夢がなきゃ生きていけない」
「くくくっ、そんなだから、お前らはここから抜け出せない。夢なんてのは要らないんだよ」
「パイルバンカーを糞だと言ったな! パイルバンカーに謝れ!」
「この不気味な子供は何だ? やろうってのか? おい、集まれ! 加勢しろ!」
「スルース、喧嘩は不味い。落ち着け。タックルも仲間を退かせろ」
「そっちから売った喧嘩だぞ」
「ギルド職員が来るのが見えないのか?」
「くっ、覚えてろ」
タックルと仲間たちは去った。
ええと、ギルド職員らしき人は来ない。
「ラークさん、嘘をついたの?」
「ああ、そうでもしないと袋叩きだ。タックルはクズだが、仲間が多い」
腰の鉄ノミが、パイルバンカーをタックルにぶち込めと言ってる気がする。
いつか、タックルをパイルバンカーで一撃だ。
おう、熱い一撃をお見舞いしてやる。
待ってろよ。
パイルバンカーの弱点は、多数の敵に対応できないこと。
超近接攻撃だから、範囲攻撃には不向き。
だが、それがロマン。
一対一で決まれば無敵。
それがパイルバンカー。
タックルと一対一の状況を作り出すチャンスを窺おう。
いまの俺はまだまだだ。
パイルバンカーとしての完成度は10%にも満たない。
本物のパイルバンカーは凄いんだ。
宇宙戦艦の分厚い装甲すら、撃ち抜く。
そのレベルを目指して、極めるのみ。




