第51話 パーティ
Side:エローラ
ガセインがスルースを誘惑して、おびき出せと言って来た。
リリアンヌの婚約者は願ったり叶ったりよ。
金貨1枚のアクセサリーは売り払った。
まずはリリアンヌが男と会う予定を突き止める。
こんなの認識疎外スキルを持っている私なら容易い。
リリアンヌの千里眼は怖いけど、屋敷のメイドは怖くない。
そして、その予定を盗み聞きした。
屋敷の来客をもてなすために、準備は必要だから、メイドの会話にそういう台詞は自然と出てくる。
屋敷で二人だけで会うわけではないけど、スルースに疑念を抱かせるのが、重要。
疑念の種を植え付ければ、あとは育てるだけ。
「念話」
スルースに念話する。
『リリアンヌが浮気してる』
「むっ、テレパシーか。リリアンヌが浮気か。それは別に構わない」
くっ、淫乱女のリリアンヌの婚約者で、こいつも変態だと忘れてた。
複数のパートナーと同時にとか噂に聞く、淫らなパーティぐらいはやってそうね。
『詳しいことを説明したいから、会いに行ってもよろしいですか?』
「うーん、別にいいけど。じゃ道場で」
仮面を用意して、スルースの道場の入口から中を窺う。
スルースだけのようね。
一心不乱に木の杭を的に打ち込んでいる。
あの動き。
そんなプレイスタイルに興奮する変態嗜好なのね。
私、耐えられるかしら。
とりあえず、体の関係はなしの方向でいきましょう。
「スールス様、先程の念話の者です」
「ああ、来たか。リリアンヌの浮気の証拠があるなら買うぞ」
買ってどうするのかしら。
私には関係ない。
「いえ、まだ手元にはありません」
「まあ、別に良いや保険だから。せっかく来たんだから、パイルバンカーをやっていけよ」
あの杭を受け入れろっての。
無理よ。
いくら私でも無理。
リリアンヌみたいな変態の淫乱じゃないんだから。
「またの機会に」
「残念だが、まあいいか」
帰って、ガセインに報告。
「駄目ね。手強いわ」
「そうだろうな。次はどうする?」
「近々、王族主催のパーティがあるから、そこで何かできないかやってみましょう」
「そうだな。上手くいけば、スルースの社交界での評判をずたずたにできる。葬るとしてもじわじわ行こう」
「そうね。パーティの招待状と私のドレスと装飾品をお願い」
「ちっ、仕方ないか。支援者がいるから、奴らに出させよう」
支援者?
ガセインから、その支援者に乗り換えたいものね。
お金持ちの匂いがする。
ガセインから、絶対に聞き出さないと。
Side:スルース
王族主催の立食パーティ。
リリアンヌの父親のエングレイ伯爵から、仏頂面で招待状を受け取った。
断りたかったが、そんな雰囲気ではない。
いくら俺でもパイルバンカーをさすがに撃ち込めない。
それぐらいの常識はある。
リリアンヌをパートナーに立食パーティ会場の入口。
ふーん、王城じゃないんだ。
「スルース様、王族主催となってますけど、実は父が費用から、何から何まで手配しているのですわ」
「へぇ」
心を読まれたのか。
まさかな。
「ミスリル、鉱山が増えましたよね。財産が凄まじく増えたので、ガス抜きですわ」
「気配りも大変だな」
「ええ、父の最近の悩みはもっぱら、それです。敵を作ると良いことはありませんから。味方を作り、王家に謀反の心など欠片もないと気配りが必要になります」
「招待状をどうぞ」
俺は懐から紹介状を出した。
「決まりですので。武器のチェックをさせて下さい」
「ああ、やってくれ」
俺のチェックは男が、リリアンヌの方は女性が。
当たり前だけど。
「この腰に吊るしているのはなんですか?」
リリアンヌは木のパイルを装備している。
隠してはいないから、悪意ではないとすぐに判るはず。
「ええと、相棒ですわ」
「えっ、愛棒! 失礼しました」
「何だ。何か問題か?」
警備責任者と思われしき人が出てきた。
「この腰の……、恥ずかしくて……」
「ああ、言わなくて良い。魔道具かどうかのチェックはしたか?」
「はい。問題ありません」
「ふむ、鉄扇を持ち歩く、元女騎士のご婦人もいらっしゃる。刃物でないのなら、問題ないだろう。見なかったことにしろ。口外もするなよ。良いな!」
「「はい!」」
武器だと取り上げられても、問題なかったのにな。
最強武装が見抜けないとはまだまだだな。
立食パーティでリリアンヌにぴったりくっついて食事してたら、女の子が寄って来た。
うんっ?
知らない顔だ。
「なんて物を持ち込むんです。こんな嫌らしい汚い物を!」
女の子の視線はパイル。
この野郎、いや女郎め、パイルバンカーを侮辱したな。
女郎の大声に俺達に視線が集まって人が寄って来る。
「何だ、このオーク女は? ああ、オークといちゃついたのか?」
俺の言葉に女郎の顔が驚愕に染まる。
「なっ、なぜそれを! なんで私がオークに犯されたのを知っているの!」
えっ、俺なんかまたずぶりとやっちゃいました。
パーティ会場にいる貴族達がざわめく。
「初めてだって言ったのに。騙したのか」
「俺もそう言われた。オークと寝るような女だったとは」
「僕も騙された。とんだ悪女だな」
「何人もと寝てたのか。最悪だ」
「あっ! 嘘、嘘、嘘よ! 冗談よ!」
「だが、何人もの男と寝ていたのは嘘じゃない」
女郎の被害者の男が指摘。
「くっ、リリアンヌ。お前のせいか。千里眼スキルで、私がオークに犯される現場をみたのね。許さない」
女郎は指輪の宝石を外して、ふっと息を吐きかけた。
粉末が宙を舞い、リリアンヌが距離を取る。
「毒ですね。みなさんお気をつけを」
「解毒剤を撒きます」
駆け付けた使用人がすかさず、バケツに入った液体をぶちまけた。
女郎がずぶ濡れになる。
「あああ! 引っ掻いて! 噛みついてやる!」
「パイルバンカー!」
爆発音がして、リリアンヌが持っていた木の杭が凄まじいスピードで女郎の顔面に突き刺さる。
蒸気がプシューという音を立てて噴き出す。
そして、硝煙の匂い。
「がっ!」
女郎の前歯が何本が折れた。
ざまぁ。
女郎は警備に拘束されて、連れて行かれた。
「スルース様、見事なパイルバンカーです」
「えっ、リリアンヌのじゃなくて?」
「ええ」
「ああ、あのオーク女って言葉か。そうだ、言霊パイルバンカーだ」
「見事です」
「リリアンヌのパイルバンカーも見事だったぞ」
ちなみにパーティ会場はスキルと魔道具と刃物が禁止。
鉄の鈍器認定されるような武器も禁止。
鉄扇はギリギリセーフなんだろな。
魔法は許可されている。
でないと、給仕が仕事をできないからだ。
そう言う感じだな。




