第47話 死亡フラグ
Side:スルース
座学の授業中にずっと、魔力パイルバンカーの練習。
動く的がないと、上達している気がしない。
イメージトレーニングも良いが、時間を有効に使わないと。
パイルバンカー道の頂は遥か彼方。
1秒たりとて、無駄には出来ない。
漫画で、空中の紙を槍で突くってのがあったな。
似たようなのは色々とある。
正拳突きで布を貫いたり。
魔力では物理的な攻撃力は発生しない。
イメージを魔力に込めれば、スキルみたいに使える。
風系のスキルに、風圧槌打がある。
相手を吹っ飛ばす技だが、硬くできないかな。
俺は、手に手ぬぐいを持って、魔力パイルバンカー風圧槌打バージョンをやってみた。
手ぬぐいが風で揺れる。
俺は最前列の席なので、先生の髪の毛が風で乱れる。
「スルース君、君は私の座学がそんなにも退屈かね?」
「すみません。パイルバンカーにあるまじき失態です。飛んで行くパイルバンカーなど、邪道という他ないです」
「馬鹿にしているのか?」
「迷惑を掛けないように、パイルバンカーを頑張ります」
「金で何でも解決できると思わないことだ。いいね」
「はい。金があってもパイルバンカーの技量は買えませんから」
なぜか呆れて何も言わなくなる先生。
ふむ、風は飛んで行ってしまう。
パイルなら出っ張りがあるからな。
風じゃ出っ張りは作れない。
固体を出す系のスキルは内職が目立つ。
それなら、木のパイルを使った方がまし。
うーん、何だ。
簡単な方法があるじゃないか。
結界でパイルを作れば良い。
結界は動かせられない。
でも、反動は術者に返ってくる。
結界が受けたエネルギーを受け取ってる。
つまり、結界でパイルを作って、それを的に当てて、反対側に衝撃を加える。
そうすれば、的は衝撃を受け取る。
授業中に爆発音は不味いよな。
衝撃を与えるスキルはいくつかある。
ほとんど音が出ないものもあったな。
結界のパイルを手ぬぐいに当てる。
反対側に魔力パイルバンカーを衝撃波のイメージで打ち込んだ。
手ぬぐいの半分が、粉々に砕け、先生が埃まみれになる。
「完全に怒ったぞ。このクソガキ。死ね! 超光刺突!」
光でできたレイピアが俺に向かって突き出された。
光の癖に遅い攻撃だ。
魔力パイルバンカー発動。
光のレイピアは砕け散った。
魔力で構成されてたら、そりゃ魔力で砕けるよ。
こっちの魔力の方が高密度なんだから。
「はぇっ? 何をした?!」
うん、光系のスキルって威力はあるのかな。
光るパイルバンカーなら、ほんのちょっと格好良いかもと考えた。
いいや、金属だよ。
パイルバンカーの王道は金属。
魔力パイルバンカーも邪道だけど、これは練習だから。
シミュレーターみたいな物。
ロボットの戦闘訓練にはシミュレーターはつきもの。
「先生、パイルバンカーは無敵なんですよ」
「くっ、もういい。大人しくしてれば、文句は言わない。気をつけたまえ」
「はい」
手ぬぐいが木端微塵になるなんて、考えてなかったな。
結界の後ろを叩いて、衝撃波を伝えるって、こんなのパイルバンカーじゃない。
突き出されないパイルバンカーなど認めん。
いろいろと考えていたら、授業が終わってた。
部活だ。
パイルバンカー道場に急ぐ。
すでに、オルトスとタッフルと女の子達は来ていた。
リリアンヌとアイラがいるのは当たり前だ。
オルトスはアイラと話している。
良い雰囲気だな。
歳の差カップルだが、オルトスはアイラが好きなのか?
笑っているオルトスの顔は演技には見えない。
スパイの癖に、潜入先で女に惚れるのは、失格だぞ。
そういう奴は、女を庇って大抵死ぬ。
「オルトス、死ぬなよ」
俺はオルトスの肩を叩いてそう言った。
「えっ、僕は死ぬの?」
「隠さなくても良い。アイラが好きなんだろ?」
「まあ、アイラ。寿退職も近いですね」
「お嬢様! からかわないで下さい!」
「いつもの仕返しですわ」
「アイラさんとは、話が合うんですよ。何か他人事だと思えなくって。僕は平民ですから、アイラさんと結婚しても問題ないですけど」
「ほわっ!」
「アイラの真っ赤な顔を見れたのは初めてです」
「オルトス様、冗談ですよね?」
「僕は仕事ができる人が好きなんです」
「すっ、好き!」
「オルトス、死なないように頑張れよ」
「何で死ぬのが確定してるんですか?」
「お約束だから」
「スルース、パイルバンカーはしないのか? 俺はだいぶ慣れたぞ」
「タッフルは婚約者はいないのか?」
「三人いるよ」
「ハーレムだな」
「親同士の口約束だから、全員に振られるかも知れない。俺は容姿がこれだから」
太っちょキャラは案外最後は結婚できたりする。
振られキャラもいるけど、そう言う奴はおちゃらけナンパ野郎だ。
硬派太っちょは大丈夫。
「自信持てよ。まあ、振られキャラの傾向はないから、きっと大丈夫」
パイルバンカー訓練で汗を流した。
それにしてもオルトスがアイラとはな。
10歳差もないから、あり得ない話ではないけど。
年上好きなんだろうな。
女の子達も熱心に練習してる。
騎士学園の生徒だから、戦闘訓練では手は抜かない。
パイルバンカーが流行っていい気分だ。
「スルース様、この道場では段位や級はございませんの?」
「おお、威力で、考えるか。この厚さの板が撃ち抜けたら、なん級とかそんな感じだな」
「最初の級はパイルバンカーが出来て的に当てられたら、合格ぐらいがよろしいのでは」
「そうだな。あまり最初の壁が厚いと、嫌になるからな」
段なら、鉄板ぐらい撃ち抜いてもらわないと。
もちろん金属のパイルを使ってだけど。
「備品は僕に任せて下さい」
オルトスは必死だな。
アイラからは情報は得られなかったようだ。
そこは俺もアイラを信用してる。
「うん、じゃ任せた。ぼったくりでなければ金は出すよ」
「ぼったくりなんてしませんよ。免状の作成も任せて下さい。何かバッジみたいな物も必要ですね」
うーん、ヘルメットかなと思うんだけど、ヘルメットは鎧とかと合わせないといけない。
服にヘルメットはありだけどな。
パイロットスーツも欲しいよな。
バッジは階級章みたいなデザインの奴で妥協しておくか。
道着として、パイロットスーツとヘルメットがほしいな。
特にヘルメットは必要かも。
木のパイルが砕けて、顔に傷ができたら大変だ。
野郎にとって、傷は勲章だが、女の子は不味い。
金もあるし、作らせよう。
ピットマイン商会に発注しよう。
パイロットスーツは蒸れそうだから、そういうのが平気な仕組みが要るな。
俺のは真空でも活動できるような仕様にしたい。
宇宙に出る予定はないが、ロマンだからな。
雰囲気作りは大事。




