第44話 王族の秘伝武術
Side:スルース
パイルバンカー道場に人が溢れてる。
ファンクラブの女の子達が来たのだ。
女の子率が高いのは気にしない。
パイルバンカー愛に男女の差はないからな。
男は俺と、タッフルと、知らない奴。
こいつはどこから出て来た?
だが、パイルバンカーに興味がある奴は大歓迎だ。
「お嬢様、顔が怖いですよ。言ったじゃないですか。もてると」
「スルース様が素敵なのは知ってます。でも、焦りが……」
「2番目に大事と言われたではないですか。どっしりと構えてないと、みっともないですよ。お嬢様は正妻ではないですか」
「正妻! まだ結婚してません」
「はい、まだ正妻候補ですね。数人の愛人は覚悟しておかないとならないようです。そういうのをしっかり管理してこそ、正妻です」
愛人など、下らないし、要らん。
強化パーツなら、いくらあっても良いがな。
攻撃力と索敵の他の強化パーツは、あるとしたら機動力関係かな。
だが、転移で近づくなど邪道。
リリアンヌの強化は魔法全般だ。
結果、機動力も上がることになる。
だから、不足している要素はないな。
完璧とは言わないが、かなり完成度は高くなってる。
「知っていると思うが、俺がこの道場の道場主と師範を兼ねているスルースだ。師範代を紹介する。師範代のアイラだ。そして、その隣が婚約者のリリアンヌ。リリアンヌは俺にとって大事な人だ」
「アイラです。リリアンヌ様のメイドをしております。師範として、最低限のことはやります。本業ではないので」
「大事な人。愛を感じますわ」
師範代はそのうち別の者に代えてもいいな。
腕を見てからだが。
「ぶー! ぶー!」
ファンクラブの女子から、ブーイングが起こる。
「師範代として、言わせて頂きます! お嬢様方、そういう態度はスルース様に嫌われますよ!」
「そうね。こういう態度は嫌な女に映る」
「家が決めた婚約者でも無下にはできないから、仕方ない」
「愛が無くても、冷たくするのは酷い男よね」
「形ばかりの婚約者でも、見捨てる男はクズよ」
「顔と体だけでなくて、性格も良いのね」
「さあ、始めよう!」
アイラが的から距離を取って構える。
ロケット加速で近づいて、急停止、的に密着。
木の杭が爆発の力で撃ち込まれる。
アイラの手本は見事だ。
ジャキンという音も、蒸気も、火薬の匂いも完璧だ。
威力はないが仕方ない。
俺とは違う。
リリアンヌはファンクラブの女の子と話している。
仲良くやっているみたいだな。
「あの、僕はオルトスと言います。お見知りおきを」
正体が分からなかった奴の名前はオルトスか。
アイラの手本を興味深そうに見てたから、パイルバンカーを馬鹿にしている感じはない。
ただ、分析してるような雰囲気がある。
スパイなのか?
パイルバンカーの技術が盗まれても俺は気にしない。
それどころか、俺とは別のパイルバンカー組織とか出て来たら、ちょっと良いかもなとも思う。
ライバルは必要だ。
パイルバンカーを競い合いたい。
存分に技術を盗んでくれ。
戦場でライバルとパイルバンカーでやり合えたら嬉しい。
「是非、パイルバンカーを覚えて帰ってほしい」
「そうします」
ファンクラブの女の子も、パイルバンカーの練習を始めた。
「この流派の由来はどういうものなの?」
ファンクラブの女の子が、リリアンヌに聞いてる。
ええと、あるアニメでロボットが使ったのが最初。
キャタピラローラで接近して、パイルバンカーをぶち込むタイプのロボットだったな。
「ええと、分かりませんわ。でも、推測はできます。式典やパーティ会場はスキルが妨害されてますよね。王城の中もですけど。そういう場所でこそ、威力を発揮する武術ですわ」
リリアンヌ、違うよ。
ぜんぜん違う。
でも、宇宙戦争とか言っても信じてもらえない。
リリアンヌとアイラは本気で信じてなかった。
リリアンヌはスルース様の言うことなら信じますわと言っていたのに、社交辞令だったんだな。
ちょっとショック。
モンスターのいる異世界で、宇宙戦争は確かにないな。
これを信じる奴は頭がおかしい。
うん、だよな。
俺でもそれぐらいは分かる。
「えっと、王族の秘伝武術ですか?」
おい、おい、何でそんな話になる。
「かも知れませんわね」
リリアンヌ、そこは否定しようよ。
もう、別にどうでも良い。
俺のパイルバンカー道に揺らぎはない。
あのアニメの数々を見せられたら良いのになと思う。
だが、仕方ない。
ファンクラブの女の子が、王族の秘伝武術ですってと騒ぐ。
もう、好きにしろよ。
さて、俺も練習するか。
「【バリヤー、ウインド】、ジェット加速。そして【アラーム、シャープエッジ、バインド、バリヤー、ロール、ウインド、スチーム、パヒューム】」
風の力で、加速。
空気を圧縮して、木の杭を撃ち出す。
パシュっとい音は迫力がないな。
アラームの魔法で爆発音を付け加えるか。
爆発は不味いと言われたから、こんな技も開発しておくと役に立つかもしれない。
威力的には爆発版には劣るけどな。
女の子3人をパイルバンカー部に勧誘したら、みな入りたがった。
多いほど良いから問題ないけど。
オルトスも入るらしい。
スパイなら、当然だな。
部室は学園の中に置くとして、練習はこの道場でやる。
「なんというか射程が短い武術だな。俺はハルバートを普段使っているが、接近戦になったら、これを使うのもありかもな」
タッフルがそう感想を言った。
「切り札にしてくれるのか」
「ああ、腰に鉄の杭をひとつぶら下げても、動きに問題はない」
パイルバンカーはロボットのいくつもある兵装の中のひとつ。
副武器として、使われることが多い。
主武器として使う俺は、そういうアニメの設定からいったら邪道だな。
邪道でも好きなんだから仕方ない。
タッフルはパイルバンカーの正道だな。
それもまた良し。
「嬉しいよ。分かってくれて」
ファンクラブの女の子はみんな魔法に慣れてない。
魔法による家事はしてなかったらしい。
貴族の令嬢が多いみたいだが、男勝りなので余計に家事はしてなかったとのこと。
剣術好きが多い。
ただ、主武器がレイピアみたいな刺突武器の子が多い。
なので、突くと言う動作のパイルバンカーは気に入ってた。
技としてはパイルバンカーよりロケット加速の方が人気がある。
そちらは必ず覚えたいと言っていた。
ロケット加速からのレイピア刺突がやりたいらしい。
好きにすれば良い。
パイルバンカーのパイルに、レイピアを使うと言っている女の子もいる。
となると、レイピアの柄を長くしないといけない。
それと柄頭にでっぱりは必須だな。
飛ばすなどという行為は認めない。
だが、趣味はひとそれぞれ。
飛ばすなどと言う暗黒面に落ちたら俺は認めないけど、表立って文句は言ったりしないさ。




