第43話 ファンクラブ
Side:スルース
体術の訓練だ。
最初はウンクラか。
クズみたい奴だから、色々と実験するのに心が痛まない。
少しぐらい良心に反しても、ぶち込みたいと思ったら、容赦なくパイルバンカーをぶち込むけどね。
些細なことだ。
宇宙戦争に正義などない。
戦争は双方に言い分がある。
パイルバンカーはためらいなくぶち込むべし。
殴られるタイミングで、魔力パイルバンカーを拳に撃ち込む。
カウンターの練習だと思えば、痛みなんて気にならない。
金属のパイルをぶち込むのを想像して、魔力パイルバンカーする。
あれっ、ウンクラがフラフラしてる。
まるで殴られたみたいだ。
そして、鼻血を出した。
さすが、パイルバンカー。
無敵だ。
最強だ。
やっぱり、パイルバンカーに敵はいないな。
視線を感じる。
なぜか、何人もの女子生徒が、俺の動きを追っている。
パイルバンカーに興味があるのか。
なら、布教してやらないと。
分かる人には分かるんだな。
見えない魔力のパイルバンカーなのに虜にしてしまう。
罪作りなパイルバンカーだ。
なんで、魔力パイルバンカーがウンクラに効いたか考えた。
成分分析魔力パイルバンカーができたのだから、スキルでできることは全てできるのかもな。
でも、魔力放出なんてのは、ありふれた技術だ。
それが、スキルみたいな効果になるのはなぜ?
理由と原因はあるのだろうが、パイルバンカーは最強だから、不可能なんてない。
だよな、それで全て解決だ。
こまけぇことは良いんだよ。
パイルバンカーは最強、この一言で全て解決。
宇宙戦艦も、宇宙要塞も大爆発。
実際には無理だろう。
だが、パイルバンカーは最強だからで、俺は納得できる。
色々な実験をしながら、対戦は進む。
色々な技を覚えた。
骨折させることはまだ無理だが、肉離れ程度なら簡単に起こせる。
挑戦者が居なくなったので休む。
女子生徒が、手ぬぐいと飲み物を持ってきた。
きゃあきゃあ言ってるが、パイルバンカー人気だな。
嬉しいよ。
飲み物に成分分析パイルバンカーをぶち込む。
うん、毒は入ってない。
いや、鉱石の成分分析をやっただろう。
不明な成分が気になって、色々と実験したんだよ。
そしたら、ヒ素のサンプルで、ヒ素が判別できるようになった。
リリアンヌが他の毒はどうでしょうと言って、毒のサンプルを集めたんだ。
結果、毒を分析できるようになったというわけ。
珍しい毒も網羅したから、毒見には自信がある。
「サイン下さい」
真っ赤な顔で、差し出される写真。
俺の半裸写真じゃないか。
着替えの時のだな。
我ながら良い筋肉だ。
パイルバンカーを撃つには反動に耐える筋肉が必要。
だから、鍛えてる。
サインはするよ。
布教は大事。
パイルバンカー最強と書いた。
他の女生徒には、一撃必殺パイルバンカーとか、パイルバンカー無双とか、ジャイアントキリング・パイルバンカーとか、パイルバンカーからの敵爆散とか、色々と書いた。
みんな、喜んでいる。
うん、こうでないと。
男子生徒のひとりが近寄ってきた。
こいつもパイルバンカーの虜か。
力士体型をして、愛嬌のある顔立ち。
悪意は感じられない。
パイルバンカーを撃ち込まないであげよう。
「虐められてるのか?」
「うん? そんな事実はないな」
「反撃したら、もっと酷く虐めるって言われたんだろ。ああいう奴らの言うことは知っている。隠さなくても良いんだ。虐めを誰にも言うなよと言われているんだろ。俺は君の味方だ」
「味方かどうかは、俺が決める。質問だ。爆発で金属の杭を撃ち出して、どんな敵も一撃必殺。どう思う?」
「そんな、攻撃が出来たら、すっとするかもな。恰好良いかもな。君はそれを奴らにぶち込むと想像して耐えてるのか?」
そうだな、最初はそんな想像をして、耐えながら魔力パイルバンカーをやってた。
「ああ、そうだ。そうやって耐えた。スルースだ」
「タッフルだよ」
握手をした。
こいつは味方認定してやろう。
「お前は、今日から戦友だ」
「ああ、一緒に虐めと戦おう。それにしてもモテモテで羨ましいな。奴らは君のそういう所にも嫉妬してるんだ。俺は太っててどんくさかったから、昔、虐められた。今は鍛えて、素早く動けるようになって、虐めはなくなったけど」
「素早いのは大事。高速機動は必須だな。鍛えるのは良い事だ。鍛錬は基礎として重要」
「スルースは相当鍛えてるな」
「ああ、そこは自信がある」
戦友がひとり出来た。
後で、パイルバンカーを教えてやろう。
体重がありそうだから、かなりの反動にも耐えそうだ。
パイルバンカー向きの体格だ。
どっしりしてるしな。
リリアンヌは結界と拘束の魔法で、パイルバンカーの反動を殺してる。
邪道だが、趣味でやるなら、そんなもので良いだろう。
ソフトパイルバンカーだ。
女子だからな。
男子とは違う。
それぐらいは俺も許容できる。
今日の授業は終りか。
体力的と魔力量的にはまだ余裕がある。
所属するクラブを探すか。
部室棟に足を踏み入れた。
パイルバンカー部とかないかな。
なければ作るしかないか。
一通り見て回ろう。
スルースファンクラブの表札が掛かったクラブがある。
えっと、俺と同名の有名人がいるのかな。
入ってみるか。
「きゃあー!」
「スルース様よ!」
「本人降臨!」
「カメラはどこ?!」
うん、もしかして、俺のファンクラブ?
なのか?
パイルバンカーに関係ないから、気にしないでおこう。
パイルバンカーの利点にも不利にもならない。
「彼女はいます?」
「あー、婚約者ならいる」
偽装婚約だが。
「えー! ショック!」
「でもでも。婚約ってことはまだチャンスがある」
「婚約者を愛してますか?」
「愛はないな」
愛はパイルバンカーに奉げている。
強化パーツとして、必要性はかなり感じているが。
「そうよね。家の決めた相手なら、そうなりますよね」
「これはチャンス」
「略奪愛ってのも良いかも」
良い機会だ。
パイルバンカーの布教をしよう。
「放課後はいつもパイルバンカー道場で鍛錬する予定なんだ。良かったら見学に来てくれ」
「はい、絶対に行きます」
「パイルバンカー流って聞いたことがない。マイナーな流派かしら」
「何があっても行きます」
「みんなにも知らせないと」
「ところで、この集まりはいつできた?」
「入学式で、イケメンをチェックして、速攻で作りました」
「そうそう、一年に一回、推しを誰にするか決めるの」
「今年はあなたが選ばれました」
1年でお役御免か。
別に何にも思わない。
パイルバンカーに関係ないからな。
帰りに職員室に寄って、担任のタルタス先生と話す。
パイルバンカー部を設立するためだ。
「入学早々、クラブを設立に来たのはお前が初めてだ。クラブの設立には最低5人要る」
5人か。
タッフルは確定として、後はファンクラブの中から、パイルバンカーに興味を持った人を勧誘しよう。
「分かりました」
「明日、言おうと思ったが、お前、廊下で爆発を起こしたそうだな。苦情が来てるぞ。被害がないから、今回は大目に見てやる」
「ええと、爆発でなくて送風なら、良いですか?」
「暑い時、歩きながら、送風の魔法を使うのは誰もがやる。校則には違反してないな」
「ありがとうございます」
ロケット加速より遅いが、廊下では風を推力にして移動するとしよう。
戦場というわけではないからな。
俺でもそれぐらいは譲歩する。
ロケット加速高速機動は戦場でパイルバンカーを撃ち込むためにある。




