第34話 敵討ち
Side:スルース
「俺の継母のキュラリーを殺したい」
リリアンヌに言ってみた。
簡単な解決方法なら分かる。
門をパイルバンカーで吹き飛ばして、無理やり入る。
立ち塞がる障害を全てパイルバンカーで吹き飛ばせば、終わりだ。
パイルバンカー道としては正しい。
だが、リリアンヌに迷惑が掛かる。
パイルバンカーを撃つときは、味方の被害が出ないようにするのがお約束。
味方も爆発に巻き込まれたなどという作品は見たことがない。
だから、相談してみた。
あらかじめ、パイルバンカーで仕留めるよとか言っておくのがマナーだ。
パイルバンカーのことなら配慮は必要。
他の事項なら、無視しても構わない。
「お嬢様、こいつ殺人予告しましたよ。血が繋がらないとは言え、母親を殺したいなんて、どんな殺人鬼ですか」
「アイラ、貴族の家は色々とあるのですよ。実の兄弟でも殺し合いになることはあります。そんな状況は悲しいことですが。キュラリーと言うと、私が知る限りですと、エクスカベイト伯爵家ですわよね」
「そうだ。門をぶち破って、殺したら不味いよな?」
「お嬢様、縁を切った方がよろしいのでは?」
「とりあえず、理由を聞きましょう」
「実の母を殺した仇なんだ。証拠も持っている」
「貴族の実態を垣間見た気分です。前妻を後妻が殺すなんて、演劇ですね。お嬢様、首を突っ込むおつもりですか。やめておいた方がよろしいかと」
「スルース様、パイルバンカーの奥義は、弱点に一撃ですよね。わたし、良いことを思いつきました。亡くなったお母様の実家はご存じですか?」
「知らないが」
「アイラ、屋敷まで行って、貴族に詳しい者に聞いてきて下さい」
「止めても無駄なようですね。では行ってまいります。【バリヤー、エクスプロージョン】、ロケット加速」
アイラはロケット加速を使いこなしているな。
便利だから、使わない手はないと思うが。
「アイラが帰ってくるまでに、作戦を説明いたします。実のお母様の実家に証拠を送りつけます。貴族なら体面が大事ですから、キュラリーをお母様の実家に始末してもらいましょう。実家にパイルになってもらうのですわ」
「これもパイルバンカーか。策略パイルバンカーとでも言おうか。気に入ったよ。リリアンヌ、やるな。素晴らしい、エクセレント」
「これぐらい、貴族なら当たり前ですわ」
アイラが帰ってきた。
「【バリヤー、エクスプロージョン】、ロケット加速。カナン伯爵家です」
「家の格に問題はありませんね。派閥関係も問題なさそうです」
証拠の殺人依頼書を同封して、詳細を書いた手紙を出した。
カナン伯爵家の追及が始まったらしい。
どうやら、糞親父は無関係とするスタンスで動いているようだ。
まあ、キュラリーが糞親父と結婚する前の話だからな。
共謀の可能性はあるが、全面戦争にはしたくなかったのでしょうねとリリアンヌは言っていた。
落としどころと言う奴か。
糞親父が共謀したかは、後で問い詰めるとしよう。
1発のパイルバンカーで仕留める敵は1体。
お約束だ。
キュラリーは裁判に掛けられ、証拠があるので、有罪になった。
糞親父は嘘判別スキルの使用を望んだが、キュラリーは拒否。
結果は見えてるからな。
俺でも拒否するよ。
糞親父の共謀の線は薄くなったが、糞親父が糞なのは変わってない。
糞親父はこの期に及んでも、キュラリーを信じているのだな。
糞だな。
そして、3日後。
「スルース様、キュラリーが脱獄したようです」
リリアンヌからの報告。
「しぶといな。まあ、大人しく処刑される玉じゃないよな」
「千里眼。わたしのスキルからは逃れられません」
「よし、止めを刺しに行くとするか」
リリアンヌから場所を聞いたら、そこは安宿だった。
キュラリーがいる部屋の扉をパイルバンカーで吹き飛ばす。
「その顔はエリーゼ! 私を殺しにきたのですね! 殺されてたまるものですか! 芳香、このスキルの匂いを嗅げば、どんな人間も魅惑されます」
くそっ、こんな切り札を持ってたのか。
体の自由が利かない。
思考も失われつつある。
届かないかも知れないが、撃つ。
「魔鉄パイルバンカー!」
無詠唱でパイルバンカーを発動。
撃ちなれたパイルバンカーなら、寝てても撃てる。
魔鉄の杭が、空を貫く。
当たり前だが、硝煙の匂いがした。
スキルの匂いがかき消される。
操られそうになっていた意識が戻った。
パイルバンカーは最強だ。
「近寄るな!」
「魔鉄パイルバンカー!」
キュラリーの顔が潰れてぐちゃぐゃに。
手加減したから、死んではいない。
「ぎゃあ!」
鏡を出して、キュラリーに見せてやった。
「私の美貌が! ああ……」
ショックのあまり気絶したみたいだ。
まだ、殺すつもりはない。
守備兵が到着した。
「こいつ、匂いで人間を操るらしい。香でも常に炊いておけば、防げるはずだ」
「協力ご苦労様です。今度はスキルが使えない牢獄にぶち込むようにします」
キュラリーは、魔女認定された。
魔女認定されると、その死に方は凄まじい苦痛を伴う。
殺人ぐらいでは、魔女認定はされない。
牢番を皆殺しにして、逃げたようだからな。
柱に括りつけられたキュラリーは、絶え間ない絶叫を放っている。
苦痛を与えるスキルと、意識が常に正常になるスキルが掛かっている。
髪を振り乱して、絶叫を上げ続けるその姿はまさに魔女。
顔を俺が潰したし、余計に魔女らしく映る。
王都の住人が石を投げる。
哀れだな。
パイルバンカー道は、一撃で仕留めるのを良しとする。
こういうのは違う。
柱に括りつけられた罪人は殺しても罪に問われない。
みんな殺すつもりで石を投げているからね。
ここで、恰好良く締める。
「俺はこの女に母親を殺された! 最大の一撃を与えたい! 良いだろうか!」
殺せコールが起こる。
「魔鉄パイルバンカー最大出力!」
パイルバンカーがキュラリーに突き刺さり、キュラリーの胴体は爆散した。
良いパイルバンカーだった。
味方を巻き込むことがないパイルバンカーが出来た。
満足、満足。
良い終わり方だ。
キュラリーが貴族でなければ、もっと簡単に殺せた。
そして、俺が貴族なら、問題はなかった。
勘当を解く意味が、リリアンヌとの婚約だけではなくなったな。
気持ちよくパイルバンカーを放つには、貴族の地位も必要だ。
金でほとんどのことは方がつくが、そうでない場合もある。
王になったら、もっと気兼ねなくパイルバンカーが撃てるのかな。
王を目指してみるのも悪くない。
パイルバンカーの為なら、苦労など苦労ではない。
とりあえずは貴族の地位からだな。
勘当を解くついでに、領主になってみるか。
パイルバンカーならそれぐらい容易い。
無敵だからな。
絶大な攻撃力。
パイルバンカーに不可能はない。




