第32話 魔王教の信者
Side:魔王教の信者
およそ、千年前、4人おられる魔王様を滅ぼした聖者の後継者を殺すのが、私達の役目のひとつ。
もちろん、魔王様達の復活も画策している。
こちらも重要だ。
長い間、分からなかった聖者の力の封印場所が判明した。
聖者の力を葬り去らないといけない。
でないと、後継者が聖者の力を受け継いで、新しい聖者となってしまう。
聖者の力の封印を破って、葬り去りたかったが、近づくことさえできない。
聖者め、死んでもここまで力を維持するのか。
封印場所が分かったのは無知な村人が、封印された石碑を動かしたからだ。
予言など、あらゆる探知のスキルを阻害する結界が張ってあったようだ。
動かしたので、結界が破られた。
とにかく破壊するなり、葬り去らないと。
運の良い事に、骸骨魔王様の復活の準備が整った。
長い間に何千人と生贄を奉げて、復活の力が溜まったのだ。
聖者の力の封印近くに、骸骨魔王様を復活させる。
さすれば、骸骨魔王様が聖者の力の封印を葬り去ってくれるはずだ。
骸骨魔王様の復活儀式は成った。
奉げられた生贄が、アンデッドとして、溢れ出た。
いよいよかと思われたら、アンデッド達が討伐されていく。
だが、これも計算のうち。
アンデッドといえ、所詮は下級モンスター。
Eクラス冒険者程度でも簡単に討伐される存在だ。
数は多いが、それだけだ。
骸骨魔王様さえ復活なされば、問題は全て解決する。
だが、骸骨魔王様があっさりと滅ぼされた。
聖者の力はどうなった。
後継者が現れて、聖者が誕生したのか。
骸骨魔王様を滅ぼした冒険者からは聖なるオーラが欠片も感じられない。
どういうことだ。
力を受け継いたが、完全に自分の物にしてないのか。
それとも、力を使い果たしたか。
絶好の機会。
骸骨魔王様の仇を討って、後継者を亡き者にしてやる。
「怨霊結界! 生贄を悪神に1000人奉げて、賜ったスキルを味合うと良い。この結界の中の生物は、あらゆる力を吸われて死ぬ。苦しみながら死ぬと良い。ふはははっ!」
「なぬっ? ゴーストの結界か。あの骸骨野郎、最後っ屁をかましやがったな。聖なる石パイルバンカー。ありゃ、駄目だな」
「ふふふっ、勝ったな」
「そうか、電池切れか。充電魔力パイルバンカー」
冒険者の杭が、凄まじい聖なるオーラを放った。
怨霊結界は瞬く間に消えた。
そして、我の体が塵になる。
我はハイレイスに、生まれ変わった。
死んだら、アンデッドになるスキルを掛けておいてよかった。
くそっ、あの規模の聖なるオーラを出せるのなら、完全な聖者じゃないか。
一刻も早く、このことを仲間に報せないと。
「あれっ、生き残りがいるじゃないか。電気を充電しただけで、パイルバンカーをやってないから、モヤモヤしてたんだよ。やっぱり、パイルバンカーは突き出してこそだな」
やめろ、やめてくれ。
それを近づけるな。
「ザコみたいだが、これで良しとしておこう。聖なる石パイルバンカー。あー、すっきりした」
あああ……。
Side:スルース
ゴーストの結界を破ったら、魔石がたくさん散らばった。
壁を作るぐらいのゴーストが集まっていたのだから、当たり前だ。
拾うのめんどくさい。
草とかあるからな。
どうする?
別れの挨拶したのに村に戻るのもな。
恰好悪いよな。
それに、村人はひとりだけだった。
もっと、人数が欲しい。
そう思ったら、荷物満載の荷車を引いた村人達がこちらに向かって歩いてくる。
かなり怠そうだな。
お疲れモード全開に見える。
ダルダルなのか。
魔石を拾えとか言ったら、睨まれそうだ。
馬鹿な俺でも、それぐらいの空気は読む。
パイルバンカーは全てを解決する。
お疲れモード全開のダルダルをぶち破ってやるよ。
聖なる杭ができると言っている。
「充電魔力パイルバンカー!」
盛大に白い光がほとばしった。
「おおっ、怠さとか眠気とか全て吹き飛んだ」
「範囲回復系のスキルか」
「冒険者様、ありがとうございます」
「なんか古傷も治っているんだけど」
「おお、膝の痛みとかもなくなってる」
「俺は腰の痛みだ」
「魔石がここら一帯に散らばってる。好きに拾え。感謝に思うなら、パイルバンカーを讃えよ。全てはパイルバンカーのおかげ」
「何か知らないが、パイルバンカー万歳」
「どんな物か知らないが、パイルバンカーに感謝を」
「わからんけど、とりあえず、パイルバンカー凄い」
「パイルバンカーって何って、聞いたら不味いのか?」
「村にひとりいるから、そいつにパイルバンカーのことは聞け。じゃ、行くから」
聖なる杭って、回復アイテムだったんだな。
アンデッドを回復アイテムで倒すのは、RPGのお約束。
でも、なんか嫌だな。
パイルバンカーの世界はSFチックな世界観。
RPG要素はお呼びじゃない。
モンスターのいる異世界でそんなことを言っても仕方ないのかも知れないが、俺だけはSFチックでありたい。
よし。
俺は聖なる杭に、回復ナノマシン発生パイルと書いた。
これで良い。
治るのはナノマシンのおかげ。
アンデッドを滅ぼすのは、敵のナノマシン集合体に、ナノマシンウイルスを撃ち込むのだ。
断じて、回復アイテムなどではない。
傷が治るのもナノマシンのおかげ。
そういう、設定にしておこう、
聖なる杭パイルバンカーなどという言葉は今後一切使わない。
ナノマシンパイルバンカーだ。
くっ、殺せ。
なんたる屈辱。
心まで支配できると思わないことね。
そんな意思が伝わってきた。
おっ、ベルトに吊るしたナノマシン杭が暴れている。
他の杭に当たって、カチャカチャと鳴っていた。
妖刀ではないんだから、静かにしろよ。
抗議の意思が感じられた。
ナノマシンという名前が嫌なのか。
頭の固い奴だな。
名前ぐらい、良いだろう。
二つ名とか持っている奴だって、ゴロゴロいる。
そう思ったら、ナノマシン杭が暴れなくなった。
だが、私は聖なる杭だという強固な意思が伝わってきた。
はいはい。
次の使い手にそう呼んでもらえ。
ナノマシン杭から、早く死んで次に交代しろと、殺気が飛んで来た。
妖刀じゃないんだから。
「分かったよ。人がいない時には聖なる杭って呼んでやる。ただし、格好つけの場合は駄目だ」
仕方ないわね、もうそれで良いわよ。
好きにして。
もう、付き合いきれないとの意思が伝わった。
ローラーダッシュでその場を後にした。
布教活動は始まったばかり、この世界をパイルバンカーで満たすのだ。




