第31話 親玉との戦闘
Side:ウェイ
「さあ、親玉と一騎打ちだ。燃えるねぇ。たぎるぞ」
言動が変態だな。
形があれなんで余計にそう思う。
「スキル鑑定、どんなスキルを持っているかと思えば何もないではないか。とんだ道化よな」
「ふん、パイルバンカー馬鹿は道化に映るかも知れない。だが、それが何だ。パイルバンカーが最強であることは変わりない。どんなゲームでもたいがい最大の攻撃力を誇る」
「戯言を。死ねっ。火球つるべ打ち」
おい、ファイヤーボールだぞ。
これ平気なのか。
「魔法破壊魔力パイルバンカー! 魔法破壊魔力パイルバンカー! 魔法破壊魔力パイルバンカー! 魔法破壊魔力パイルバンカー!」
技が四度、繰り返され火球を撃ち消した。
「いでよレイス。精気を吸いつくしてしまえ」
レイスと冒険者が位置取りをするためにクルクルと回る。
まるで踊っているかのようだ。
焦れたレイスが手を伸ばす。
その隙を冒険者は見逃さなかった。
「ミスリルパイルバンカー」
「キェェ……」
ミスリルの杭に貫かれ、恐ろしい形相の青白い光を放つレイスがあっさりと倒された。
「ふん、金属には電撃だ。【サンダー】」
スケルトンの突き出した手から眩い光と共に電撃が放たれた。
「避雷針パイルバンカー」
冒険者が鉄の棒を地面に突き刺すと電撃はそこに吸い込まれた。
「電気の性質を良く知っていたな」
「当たり前だ。こんなのは常識だよ」
「めんどくさいが相手にしてやる。掛かってこい」
「ローラーダッシュ」
冒険者が滑るようにスケルトンに近づいた。
冒険者がスケルトンに捕まえられた。
ピンチだ。
これで冒険者が負けて終わるのか。
「捕まえたぞ。精気全部を吸ってくれる」
「さて、どっちが捕まったのかな。聖なる石パイルバンカー」
冒険者が杭を放つ。
黄金色の光を放つ石の杭が喋るスケルトンの頭を貫いた。
「ぐっ、なぜ。我が負ける。なぜだ……」
「そんなのは決まっている。パイルバンカーが最強だからだ」
あっさり勝っちゃったよ。
なんなのこの冒険者は。
後には特大の魔石が残された。
赤ん坊の頭ほどはあるだろうか。
Sランク魔石よりでかいだろう。
「村の復興に使え」
「この魔石をくれるのか?」
「ああ、パイルバンカーの偉業を知らしめてくれ」
「そんなことで良いのなら」
「聖なる石の杭は貰っていくぞ。アンデッド退治に役立つからな。次はドラゴンゾンビとやってみたい」
「よしてくれ。そんなのが現れたら死ねる」
「パイルバンカーを覚えたいと言っていたな」
たしかに言ってしまった。
仕方ない付き合おう。
「ああ、その通りだ」
「まずは結界魔法だ。そして爆発魔法。この時に結界の一方向をわざと薄くしておく」
「【バリヤー、エクスプロージョン】。いてて、いてえな、この野郎」
「まあ最初は難しいと思う。それができたら爆風が飛びだす方向へ杭を置いておく。拘束魔法で杭を保持するのが良いぞ。手だと消し飛ぶかも知れないからな」
「ああ、気をつける」
「そして重要なのは。最初にジャキンという音。そして最後に蒸気と火薬の匂い。これは作法だ」
「分かった。パイルバンカーができるようになったら必ず付け加える」
「ガントレットを返せ!」
「おう。ちょっと名残惜しい。これがあれば、オーククラスが倒せる。この辺じゃ敵なしだ。どうしても駄目? これが欲しい! 欲しいよう! 頂戴!」
「気持ち悪い目で見るな。玩具をねだる子供じゃないんだぞ。良い歳した大人がやると気持ち悪い。気に入ってくれて、嬉しい気持ちはあるが、悪いが駄目だ」
「ちっ、忘れて置いてったら良かったのに」
「代わりにこれを置いて行く」
冒険者はガントレットの代わりに、魔鉄の杭を100本置いて去って行った。
俺は同じ村に住んでる仲間達に、パイルバンカーのことを色々と伝えた。
「【バリヤー、エクスプロージョン】。おう、爆発だ。なんか爽快だな」
「何やってるんだ。面白そうだな。ええと、こうか。【バリヤー、エクスプロージョン】。なるほど、ちょっとすっきりするな」
「爆発の魔法で、動物とか鳥を追い払ったことはあるが、ここまで大きな音がでるなら、こっちの方が良いな」
「あー、拘束魔法で杭を空中に固定して、撃ち出すんだ」
俺は教えてやった。
「こんな感じか。【バインド、バリヤー、エクスプロージョン】。地面に杭を打つのに便利だな」
「ハンマーで打ち込んだ方が早い。魔法の多重起動って難しい」
「ゆっくりやればできるさ。【バインド】、【バリヤー】、【エクスプロージョン】。最初はこんな感じだ。徐々に魔法と魔法の間を短くする」
「俺は10秒ぐらいの間がある。【バインド……、バリヤー……、エクスプロージョン】」
「みんなそんな感じだよ。魔法使いじゃないんだから」
多重起動は難しい。
俺も、魔法と魔法の間は10秒ぐらい掛かる。
あの冒険者は、魔法と魔法の間が、無かったな。
ひとつの単語みたいになってた。
やっぱり本職は違う。
そして、1ヶ月。
「この間、川の岩にパイルバンカーを打ったら、魚が大量に浮かんできたぜ。パイルバンカーのおかげで魚には困らない。先が平たい杭なんて何に使うのかと思っていたが、これ良いよな。最強だと思うぜ」
良いのか。
だが村人は喜んでいる。
まあいいか。
「ウサギの巣穴近くで地面に使ったらウサギが飛びだしてきたぜ。最強だな」
これも良いか。
俺は冒険者に、魚とウサギに対して最強を誇ると手紙を書いて送ったところ、せめて猪に使ってほしいと返事がきた。
猪の鼻づらにかますのはとてもじゃないが、恐ろしくて出来ない。
俺達は魚とウサギで十分だ。
「樹をパイルバンカーで打って、カブトムシを獲ったよ。みんな最強と言っているけど、これこそが最強だ」
子供はカブトムシか。
平和で良いな。
この村では、あの黒いオーラのスケルトンが倒された日に、毎月、パイルバンカー祭りを開く。
魚とウサギとカブトムシを一回のパイルバンカーでどれだけ獲れるか競う。
みんなパイルバンカーの腕を磨くのに余念がない。
あの音と匂いと蒸気の作法もやっている。
意味のないことだと分かっているが、ジャキンという音がしたら、危なくないように離れる。
蒸気で終わったことを報せるのだ。
匂いはまあ意味がないと思うが一応やっている。
今回から、美しいパイルバンカーを競う競技も始まった。
平和な事だ。
いつかあの冒険者をこの祭りに招待したい。
祭りの優勝者にはあの冒険者がトロフィーとして、欲しい。




