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一撃必殺!パイルバンカー!~スキルがなくて追放された俺はパイルバンカーで天下を取ってざまぁする~  作者: 喰寝丸太


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第3話 スキル無し

Side:スルース

 3歳になったよ。


 ろれつが滑らかに回るようになった。

 これで魔法が使える。

 まず覚えたのは結界魔法。


「【バリヤー】。できた」


 ふむ、第一段階は成功だ。

 大いなる一歩だと言ってよい。

 よし、次なる一歩だ。


 結界に拳を打ち付ける。

 結界は砕けた。


 もろいな。

 紙の強度ぐらいしかないような気がする。


 用途的には、とりあえず物を入れる箱だからな。

 虫とかの侵入も防げるけど。


 使える魔法ではあるけど、この強度だと問題にならない。

 強度を増すために重ね掛けしかないな。


 爆竹だって、ぐるぐると何回も紙を巻いて作ってある。

 100回ほど結界魔法を重ねたら、かなりの強度になった。


 よし、次に行こう。

 第二段階だ。


 爆発だ。


「【エクスプロージョン】」


 ばふんと、情けない音がして、爆発が起こった。

 この魔法の使用用途は威嚇。

 相撲の猫騙しみたいな魔法だ。

 モンスターなどを、少しびっくりさせるだけの物。

 重ね掛けすると、爆発の規模は大きくなったが、限界はある。


 みんなは爆竹を分解したことはあるだろうか。

 危ないので良い子も悪い子もやってほしくないが、とにかく少量の火薬を紙で巻いてある。

 爆竹の火薬量は驚くほど少ない。


 なのに、爆発はかなり派手だ。

 こんな話もある。

 手の平で爆竹を爆発させれば、ちょっと痛くて少し火傷するぐらいで済む。


 だが、手で爆竹を握って爆発させたら、どうなるか知ってるか。

 大惨事だ。

 最悪は指が吹き飛ぶ。

 良い子も悪い子もやるなよ。

 絶対だからな。


 とにかく密閉された場所で爆発が起きると威力は倍増する。

 なので、結界魔法の中で爆発魔法を使う。


「【バリヤー、エクスプロージョン】。ぶべらっきょ」


 ああ、何で寝ているんだ。


「旦那様、大きな音がして、スルース坊ちゃまが血まみれで中庭に!」

「えへへ……」


 結界の中に爆発を作ったぞ。

 やった、がくっ。


 意識が戻ったら包帯で全身巻かれてた。

 痛くない所を探す方が難しい。


「スルース坊ちゃま、お可哀想。お母様に会いたかったのね」

「無理もないわよ。幼いんだから。まだ、死ぬってことが良く分かってないのかもね」

「誰よ、天国に行けば、エリーゼ様に会えるなんて、スルース坊ちゃまに教えたのは」


 天国、そんなことは言われてないが。

 エリーゼという母親に会いたいと思ったことはない。

 恋しいのはパイルバンカーだけだ。


「とにかく、私達がスルース坊ちゃまの心の隙間を埋めて差し上げないと」

「ええ」

「賛成」


 大事に扱ってくれるなら文句はない。

 でも、ちょっとだけ騙しているようで、申し訳なく思う。


「キュラリーは、スルース坊ちゃまが怪我したと聞いて、喜んだみたい。そして、死なないと聞いてがっくりしたのよ。許せない」

「ガセインが、我がままな子供になってるわ。嫌いな食べ物を食べさせようとしたら、メイドを引っ掻いたそうよ」

「母親の性格を引き継いだのね」


「スルース坊ちゃまがいなくなったら、私、このお屋敷のメイドを辞める」

「私もよ」

「同じく」


 俺は体を起こした。


「スルース坊ちゃま、痛い所はありませんか」

「痛くはないよ。少し悔しいだけ」


 敗因は結界の1方向を薄くしておかなかったからだ。

 全方向に爆発したんだな。

 てへへ、失敗。


 うん、痛いけど痛くない。

 痛さが爆発の威力を証明してる。

 失敗だけど、成功だ。

 パイルバンカーに一歩近づいた。


 笑い出したい気分。

 この爆発力なら、パイルバンカーに結構な威力が出る。


 優しい目のメイド以外、何となく親父や使用人の視線が厳しい。

 どうやら俺は変人か狂人だと思われたらしい。

 3歳で自殺未遂したということになってた。


 若いってのは良いね。

 すぐに治った。


 だが実験する場所は選ばないといけない。

 とりあえず結界魔法の訓練は続けよう。


 ええと、杭を持つ手が危ないな。

 なぜなら杭に爆発が当たるからだ。


 使えそうな魔法を思い出す。


「あれかな。拘束魔法。【バインド】」


 うん、小石が空中で動かない。

 これで良いな。


「よし、最終段階の魔法をやるぞ。【クールウォーター】。うん、出た水が冷たい」


 これで理論上は準備はできた。

 爆発魔法の訓練がしたい。


「もう嫌になっちゃう。洗濯してもハトの糞が」


 メイドが嘆いている。


「俺が追い払ってやろうか」

「危ない事はしませんよね」

「うん」

「じゃあ軽めにお願いします」


「【エクスプロージョン】」


 爆発が起きぼふんと音がして、ハトが逃げて行った。

 これなら、何度も爆発魔法を放てる。


「無駄な魔力が使えないので助かりました。坊ちゃま、ありがとうございます」

「何度だってやってあげるよ」


 パイルバンカーをやりたくて、うずうずするが我慢だ。

 拘束、結界、爆発、冷水の各魔法を極めるぞ。


 そんな日々を過ごして、スキル鑑定の儀の6歳を迎えた。


「始めろ」


「では、行きます。スキル鑑定。こっ、これは!」

「どうした?」

「スキルがひとつもありません」

「何だと。くそっ、エクスカベイト家に出来損ないなどいなかった。いいな。スルースは勘当する。もはや家族ではない」

「はい」


 パイルバンカースキルは無理だったか。

 じゃあ、別にスキルは要らないや。


 廊下を歩いていると、弟のガセインに出会った。


「お前の母はブスだってな。母上が言ってたぞ」

「それがどうした。顔の美醜など時代や人によって変わる。普遍的な価値だとは言い難い」

「難しい言葉を使うな。俺を馬鹿にしてるのか」

「いいや。普遍的価値とはパイルバンカーのことを言うのだ。この恰好よさは、比べる物がない。たとえ、別世界になったり、時代が移り変わろうとな」


「パイルバンカーなんか糞だ」

「パイルバンカーを悪く言う奴は許さない。まだ、完成してないが、食らえ。【バリヤー、エクスプロージョン、クールウォーター】」


 結界の中で爆発が起こる。

 ガセインは爆発で吹き飛ばされて、壁に叩きつけられた。

 熱くなった結界に水が掛けられ、蒸発する。

 蒸気が立ち込めた。

 どんなもんだ。


 杭があったら、完璧だった。

 もっとも、ガセインを殺すまで、やるつもりはない。

 パイルバンカーをけなされたぐらいでは、命までは取らないさ。

 だが、殴る程度のことはする。

 空砲なのを感謝しろよ。


「スルース坊ちゃま、ここは私達にお任せを。聞いてましたよ。エリーゼ様を侮辱されたら、怒るのは仕方ありません」

「いや、パイルバンカーが馬鹿にされたから」

「恥ずかしがらなくていいんですよ。分かってます」


「どうやら、俺って勘当されたらしい。みんなによろしく言っておいてくれ。じゃあな」


 俺の部屋で、これからどうするかしばらく考えていたら、使用人がひとり入ってきた。


「旦那様の命令だ。お前を路地裏に捨てて来いとな。抵抗するなら、痛い目に遭ってもらう」

「そんなことしなくても勝手に出て行くのに」

「とにかくついて来い」


 王都の路地裏に使用人に連れられて入った。


「お前さんに恨みはないが、仕事なんでね」


 そう言うと、使用人はナイフを抜いた。

 おお、殺し屋か。

 まだ完成してないが、パイルバンカーの最初の獲物は殺し屋らしい。

 たぎるぜ、胸熱だ。

 強敵を撃破してこそのパイルバンカー。

 弱い者虐めのパイルバンカーなんて美学に反する。


 最初の敵として、申し分なし。


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