第28話 パイルバンカー道
Side:スルース
パイルバンカー布教のために道場を開くべきか。
パイルバンカー道。
撃の一、パイルバンカーは一撃必殺。
撃の二、弱点に容赦なく叩き込むべし。
撃の三、大物をやることを良しとする。
撃の四、杭は飛ばすべからず。
撃の五、ジャキンという音で開始とすべし。
撃の六、終わった後の放熱の蒸気を残心とすべし。
撃の七、やったかとは言ってはいけない。
こんな感じでいいかな。
リリアンヌに言ったらすぐに道場ができた。
パーチェスは木の杭に綿を付けたタンポン杭で訓練していると言ってたな。
あれを採用しよう。
練習生はリリアンヌとメイドのアイラだけだ。
リリアンヌは放課後、いつもここに来てる。
「【アラーム、バインド、バリヤー、エクスプロージョン、スチーム】。ていっ」
リリアンヌが魔法を唱える。
ジャキンと音がしてから爆発が起こり、杭が的に当たった。
蒸気が立ち込める。
リリアンヌの爆発は水を掛けても蒸気にはならない。
なのでスチームの魔法とした。
スチームの魔法は蒸し料理を作るための魔法だ。
「うむ、見事だ」
「やった先生に褒められました」
褒めて才能を伸ばす。
前世のテレビで偉そう教育者が言ってた。
「だが、爆発が弱い」
「少し怖いのです」
褒めた後に改善点を指摘する。
「怖いなら、結界の魔法で、自分も守れば良い」
「やってみます。【アラーム、バインド、バリヤー、エクスプロージョン、スチーム】。ていっ! やった、スルース先生やりました。的が割れました」
「見事だ。さらに精進するが良い」
「はい」
「では、次は私が。【アラーム、バインド、バリヤー、エクスプロージョン、スチーム】。でりゃ」
アイラのパイルバンカーは的を割った。
威力がリリアンヌのとは違う。
「アイラを師範代にしよう」
「嬉しくないですね。こんな流行ってない道場では」
「道場破りも来ないですし、平和でいいのでは」
「パイルバンカーは対人を目的とした技ではない。メカを壊すための技だ」
「機械を壊すための技なんですね」
「お嬢様、機械などハンマーを振るえば壊せます」
「人を殺すために作られたメカを壊すのだ」
「まあそんな恐ろしい物が」
「殺人機械など絵空事です。天使と同じです。ありえません」
「うむ、この世界にはないのだ。だがそういうメカが宇宙空間で戦闘している世界がある」
「まあ、スルース様は別の世界に行った事があるのですね」
「そうだな」
「詐欺師ですね。では私達を連れて行ってごらんなさい」
「見てきたんだ。これは事実だ。嘘判別スキルに掛かっても問題ない」
「信じます」
「お嬢様、私は悪い男に騙されないか心配です。いいえ、既に悪い男に騙されています」
「スルース様はお金持ちですし、強いお方です。弱い物虐めもしませんし、立派な殿方だと思います」
「ぐぬぬ、私は認めませんよ」
「うふふ、いつかスルース様の杭が……」
「エロに染まってますね」
「リリアンヌは俺と共同作業して貰うのだ。俺は騙してなどいない」
婚約は偽装だが。
それを言ったらリリアンヌが協力してくれない。
「嘘をついている顔です」
「ぎくっ」
「男には隠しておきたい性癖のひとつやふたつあるのです。貴族教育で教わりました。叶えられるのなら、叶えておあげなさいと」
「いえ、この男はそういう意味での嘘ではありません」
「なんのことかな?」
「絶対に化けの皮を剥いでみせます」
リリアンヌに頼んで、魔石の粉を薬莢に詰めた物を作ってもらった。
薬莢には弾丸でなくて杭が嵌っている。
薬莢の雷管の場所にはミスリルが嵌っている。
ここに魔力を通すと爆発するというわけだ。
砲身も作って貰った。
重いと取り回しが大変だ。
保持は拘束魔法で出来が、腕に装着するのがベストだ。
俺の腕だと2発が限界だな。
いっそのこと馬鹿でかいガントレットみたいなのを作るか。
それなら3発はいける。
シオマネキみたいに片腕が大きくなるが問題ない。
設計図を書いてリリアンヌに渡す。
数日後出来上がった。
右手にガントレットを装着。
3発のパイルバンカーが付いている。
左手をガントレットに添えて、魔力を流して発射する仕組みだ。
「【アラーム、バインド】、発射、【スチーム】」
うん、魔法の負担が減った。
一発撃つごとに金貨数枚が飛んで行くが、まあそれは良いだろう。
反動が凄いな。
腕が持っていかれる。
身体強化魔法はない。
家電魔法に身体強化はないものな。
バインドがなかったら肩の関節が外れていただろう。
でもこのぐらいの威力がないとモンスターに太刀打ちはできない。
バインドでしっかり腕を保持するしかないか。
何か物足りない。
ああ、硝煙の匂いか。
火薬の匂いがない。
匂い魔法はある。
本来は香水みたいな匂いを出す魔法だ。
「【アラーム、バインド】、発射、【スチーム、パヒューム】」
立ち込める火薬の匂い。
うん良くなった。
全て魔法でやってみる。
「【アラーム、シャープエッジ、バインド、バリヤー、ロール、エクスプロージョン、クールウォーター、パヒューム】。うん、良いよ、良いよ」
詠唱が無粋だ。
無詠唱でやるか。
無詠唱でパイルバンカー魔法をやる。
うん、さらに良くなった。
魔石パウダーと魔法とどちらが良いだろうか。
パイルバンカーをメカとして作りたいなら、魔石パウダーだな。
あくまでも魔法で再現というのなら、全て魔法でやるのが良い。
メカの方は、ロボットを作らにゃなるまい。
モンスターではない人が作るゴーレムというのがある。
これにパイルバンカーを搭載するのが良いのだろうな。
だが、魔法のパイルバンカーは愛着がある。
ずっと一緒に戦ってきた。
いまさら斬り捨てられない。
ここは両方やったらいいじゃんの欲張り思考だな。
魔法でのパイルバンカーとゴーレムでのパイルバンカーの両方で究極を目指す。
金なら腐るほどある。
じゃんじゃんつぎ込むべし。
「ところで、ゴーレムってどう作るんだ? 本を探したが売ってないんだよな。秘伝なのか?」
「国の秘密ですわ。国軍の偉い人と研究者しか、詳しくは知らないはずです」
ああ、兵器だから、軍事機密情報か。
参ったな。
戦争に行って鹵獲しよう。
「この男、悪そうな笑みを浮かべてます。お嬢様お気をつけ下さい」
「嫌だな。変なことは考えてないよ」
倒したなら、こっそり収納鞄に入れても良いよね。
敵軍の物なら、どこかも文句が出ないはず。
返せと言われたら、のらりくらりかわそう。
「これは盛大に考えてる顔です」
「顔に出てる?」
真面目な顔をして取り繕った。
「無理にキリっとした顔にしても無駄です」
「りりしいお顔ですわ」
戦争とかは今はないようだ。
つまらんな。
でも、ゴーレムが欲しいから戦争を起こすほど、狂ってはいない。
傭兵として、関係ない国の戦争にでも行ってみるか。
パイルバンカーは、宇宙戦争の兵器だ。
対人で殺したりはしないが、ゴーレムはぶち抜きたい。
城壁とか、要塞とかを一撃で崩すのも良いな。
まだ、そんな出力はないが、いずれは実現したい。
夢が広がトリング砲。




