第23話 試し撃ち
Side:スルース
リリアンヌから冒険者ギルドへ言伝がされていた。
鉱山主になれたらしい。
あの岩山一帯は石切り場として使うと言って格安で買った。
石のサンプルを採取したら、ミスリル鉱石が偶然見つかったという筋書きだ。
売った貴族はあんな場所が高値で売れたと最初喜んでいたが、ミスリル鉱石が出ると知って臍を噛んだ。
しばらく金を貯めて、俺は鉱山の儲けを全て杭につぎ込んだ。
見よこの黒光りするアダマンタイトの杭を。
このオレンジ色のオリハルコンの杭を。
俺は布で綺麗にコレクションの杭を磨くのが日課になった。
試し撃ちだ。
ゴーストが出るという墓場に行く。
装備はミスリルの杭だ。
灰色の霧のまとまりがフワフワと飛んできた。
「ミスリルパイルバンカー。【アラーム、バインド、バリヤー、エクスプロージョン、クールウォーター】。手ごたえがないのが、ちょっと不満だな」
ジャキンと音がして、ミスリルの杭がゴーストを貫く。
ゴーストは魔石を落として霧散した。
たわいない。
おっ、青白い光の霧が集まって人型を取った。
噂に聞くレイスかな。
「掛かって来い」
「キシャー!」
「金縛りか? スキル破壊魔力パイルバンカー! 金縛りの声とて、パイルバンカーの敵ではない」
魔力パイルバンカーで、金縛りが解けた。
レイスはドレインタッチをしようと俺に向かって来る。
「ミスリルパイルバンカー。【アラーム、バインド、バリヤー、エクスプロージョン、クールウォーター】。つまらぬ物を撃ってしまった」
レイスはミスリルの杭に貫かれて、魔石を落として霧散した。
よし、次はストーンタートルをやってみよう。
草原の草は風にたなびいていて、遠くに陸ガメみたいなモンスターがいた。
草を食んでいる。
「恨みはないが試し撃ちに付き合ってくれ。【バリヤー、エクスプロージョン】、ロケット加速。アダマンタイトパイルバンカー、【アラーム、シャープエッジ、バインド、バリヤー、ロール、エクスプロージョン、クールウォーター】」
ロケット加速した俺は、ストーンタートルに肉薄。
アダマンタイトの杭を、パイルバンカーで突き刺した。
甲羅が見事に割れた。
ストーンタートルは甲羅を脱ぎ捨てると走り去る。
追うまでもないな。
甲羅を貰って次の試し撃ちに向かった。
次はミスリルワームだ。
俺の所有の鉱山での仕事だ。
勝手知ったるマイ鉱山。
ずんずん中に入り。
地面に耳を押し付けた。
おっと隣の坑道か。
ロックワームやミスリルワームはさんざん狩ったからな。
狩り方は分かっている。
隣の坑道に入るとお目当てのミスリルワームが姿を現した。
「オリハルコンパイルバンカー、【アラーム、シャープエッジ、バインド、バリヤー、ヒート、ヒート、ヒート、ヒート、ヒート、ヒート、ヒート、ヒート、ヒート、ヒート、エクスプロージョン、クールウォーター】。ヒートパイルバンカーだ」
灼熱のオリハルコンの杭が、ミスリルワームの脳天を溶かしずぶりと入った。
冷却の蒸気がいつもの5割増しだ。
ヒートパイルバンカーは良いな。
灼熱の杭は胸熱だ。
鉱山の全てのミスリルワームを討伐してギルドに帰ると、リリアンヌが来ていた。
「来ちゃったですわ♡」
「おう」
「千里眼でスルース様の居場所を確かめて来ましたけど、お嫌でしたら今後は千里眼は使いません」
「嫌じゃないよ。今日はまた何で?」
前世でスマホの位置情報を恋人に把握されてるとか聞いて、もし俺がそうでも別に嫌ではないと思った記憶がある。
パイルバンカーをけなされたりしない限り問題ない。
「少しも顔を見せてくれないので、会いに来ました」
「パイルバンカーは着実に進化している。リリアンヌが俺の物になる日は近い」
「まあ、そうなのですね」
「お嬢様、そのような蕩けきった顔をして、はしたない」
「アイラ、そんな顔などしてません」
「知ってますよ。スルース様に作ってあげたのと同じ杭を、毎日うっとりと見つめているではありませんか」
「おお、リリアンヌもパイルバンカー愛に目覚めたのか。パイルバンカーは良いぞ。最近開発したヒートパイルバンカーは熱くたぎった杭でずぶりと溶かし貫くのだ」
「熱くたぎった♡。溶かし貫く♡。まあ、なんということでしょう。受け入れられるかしら」
「アダマンタイトパイルバンカーは黒光りして恰好良い」
「黒光り♡。まあ♡。受け入れたい♡」
「リリアンヌはパイルバンカーを受け止めたいのか。絶対防御でも目指すのか」
「包み込むのです」
「パイルバンカーの砲身になりたいのか。その心意気や、良し!」
「お嬢様、はしたない妄想はおやめ下さい」
「何度も出入りする場面が頭にちらつくのです」
「そうだな。パイルバンカーの砲身は使い捨てではない。何度もピストンする」
「ピストンー♡! ええ、ええ♡!」
「だめだこりゃ」
「アイラ!」
「素直にそのものをすぱりとおっしゃって誘ったらいかがです。もっとも私はお目付け役として許せませんが」
「そんなはしたないことなど言えませんわ」
「リリアンヌのパイルバンカーの砲身になりたい気持ちは分かった。共同作業で熱き杭を必ず撃ち込もう。その時を待っている。魔法の腕を磨いておいてくれ」
「はい♡」
更なる強力なパイルバンカーを目指すぞ。
杭の材質は、汎用の鉄、聖なる力のミスリル、硬さのアダマンタイト、灼熱のオリハルコン。
あとはドラゴンの牙を削り出した杭とか使ってみたいな。
ドラゴンの牙は魔法が良く乗るらしい。
ヒートも良いが電撃を纏わせたパイルバンカーとかも良いな。
きっと恰好良いだろう。
でもスパークの魔法はビリっと来るぐらいしか駄目なんだよな。
スタンガン程度が精々だ。
ドラゴンの牙なら電撃を溜められないかな。
できるような気もする。
電撃を目一杯溜めて撃ち込むパイルバンカーは爽快だろうな。
よし、ドラゴンが出たら、最大出力パイルバンカーで討伐だ。
牙を絶対に手に入れないと。
「リリアンヌ、ドラゴンの出現情報はないか?」
「ございまんせん。ドラゴンは暴れたら、国軍を総動員する強敵です。討伐は無理でも追い払うために、撃退は即座に行われます」
「いないのか、がっくりだな」
「気を落とさずにですわ。休眠状態のドラゴンなら、どこかにいるかも知れません。暇な時に千里眼で、洞窟の中などを調べてみることに致します」
「頼んだ」
「はい、お役に立てて嬉しいですわ」
「お嬢様、身内ではない他人のためにスキルを使われるのは軽率です。評判を考えて下さい」
「アイラ、固いことを言われては困ります」
「スルース様が、婚約者になるまで待つべきです」
「俺は待っても良いぞ。やりたいことはまだ色々とあるからな」
「スルース様のお役に立ちたかったのですが、仕方ありませんね」
どうせ、リリアンヌが強化パーツとして使えなければ、ドラゴン討伐は難しいだろう。
婚約を全力で目指すべきだな。




