第22話 食用スライム
Side:ルックミート
私はルックミート、研究者だ。
なんの研究か聞きたいかね。
食用スライムの研究だ。
水と雑草で、増える食用スライム。
どうだ、素晴らしいだろう。
飢饉対策にもってこいな研究。
その恩恵は計り知れない。
歴史に名を残すほどの偉業だと思わないかね。
それをあの糞貴族が、台無しにした!
くそがぁ!
許せん!
研究費の打ち切りだと。
あと一歩なんだぞ。
食べられるスライムはできたじゃないか。
吐くほど不味い、それが何だ。
食えるということが重要。
栄養価も満点なのにだ。
あの糞貴族は一口食べ盛大に吐いて、私の首を落とせと言った。
「なあ、みんなどう思う?」
「ぐぎゃぎゃ」
「ああ、分かってるよ。貪りくってるから、美味いと言いたいのだね。私を讃えたまえよ」
雨が降り始めた。
食用スライムが爆発的に増える。
ふむ、ゴブリンの大量発生が、起こるな。
この近辺は、あの糞貴族の領地。
ゴブリンの大軍に飲まれて、後悔するが良い。
食用スライムには、少し改良を加えてある。
ゴブリンの成長促進と、繁殖促進の効果を付け加えた。
天才である私には簡単なこと。
味はさらに不味くなったが、ゴブリンにとっては美味らしい。
食用スライムから、ゴブリンの成長促進の成分を抽出して、薬を作った。
投与した赤ん坊ゴブリン100匹のうち、生き残ったのは1匹。
その1匹はゴブリンキングになった。
ゴブリンキングはなぜか私に懐いた。
きっと、私を親だと思っているのだろうな。
私の命令にも素直に従っている。
とりあえず、村を平らげよう。
そして全ての村を平らげて、糞貴族の館がある街を包囲して滅ぼすのだ。
村の包囲が始まった。
ゴブリンキングの指揮は、絶妙だ。
増えていくゴブリン。
ゴブリンが1000匹を越えた所で、食用スライムが全滅してしまった。
ふむ、病気によるものらしい。
品種改良した植物の作物は、病気に弱くなる場合が多い。
食用スライムもその理からは逃れらなかったらしい。
些細なことだ。
糞貴族をやったら、食用スライムを病気に強くなるように、改良すれば良い。
スライムの種と言える休眠コアは保管してある。
ゴブリンキング率いる1000匹もいれば、街も落とせるはずだ。
糞貴族の街は、小さいからな。
ゴブリンキングに指揮を任せて、研究する。
様子を見に行ったら、ゴブリンを合成してる奴がいる。
うむ、ゴブリンが強化されるのは好都合。
あっ、近づいたら私も取り込まれてしまった。
ぐぬぬ。
この体の制御を寄越せ!
体内で争う。
数えきれないほど何度も争い、私はその長い戦いに勝った。
冒険者の男が眼下に見える。
たった一人で歯向かうらしい。
この巨体に敵うものなら、掛かってこい。
血祭りにして、初めての戦果としよう。
そして、村や街を全て滅ぼし、この世界の王となるのだ。
征服した国から集めた尽きぬ財力を用いて、食用スライムを完成させる。
この体なら可能だ。
パンチを繰り出す。
拳を砕かれた。
なぬっ、無敵のはずのこの体がなぜ通じない。
激痛が走る。
逃げるという選択肢が頭に浮かんだ。
だが、この冒険者は追いかけて来る。
そんな気がした。
世界の王が逃げるなど、あり得ない。
次は、魔法だ。
これなら対処できまい。
火球を放つと、停止させられて、霧散した。
馬鹿な。
片足の足首が砕かれる。
激痛が走った。
そして、もう一方の足も。
痛みで気絶しそうだ。
やめろ!
やめてくれ!
額に激痛が走り、意識が途絶えた。
Side:サムボデ
巨大ゴブリンの後始末は大変だった。
肉が腐り始め悪臭が立ち込めて、誰もが嫌気がさす。
虫がぶんぶん飛んで来るから、さらに嫌気がさす。
皮は金になるのでみんな気合が入ったが、肉は肥料ぐらいにしかならん。
これが美味ければ、腐る前に徹夜で処理しただろう。
「これで終りとしよう。みんな、ご苦労様」
村長がみんなを労う。
「やっとかよ」
「魔石を売って、金があるから良かったものの。あれが無ければ、後始末なんかしなかった」
「死骸の後始末しないと、病気が流行ったりするんだぞ」
「匂いを消す魔法を掛けても、まだ匂いがこびりついているようだ」
「ああ、飯を食う時に匂いが気になることと言ったら、閉口ものだ」
残ったこの骨はどうするかな。
観光資源として使えないかな。
だが、ゴブリンの骨じゃ誰も来ない。
「村長、この骨を加工して、ドラゴンの骨にしてみないか」
「費用はどうする?」
「変形スキル持ちに、少しずつやってもらう。どうせ魔力なんか、寝れば溜まる」
「作物は全て駄目になったし、家畜も買わんといかんから、時間はあるか。やってみるか」
ドラゴンの骨なら偽物でも人が訪れるだろう。
名物がほしいところだな。
ドラゴン饅頭とかだな。
歩きながら考える。
鞄が落ちているのを発見した。
中を見ると、瓶に詰められた何かがたくさんと、ノートが入っている。
ノートを読む。
ふむ、食用スライムね。
育て方は簡単。
水と餌だけだ。
瓶のラベルに食用スライムの干し肉というのがある。
どんな味だ。
干し肉を舐めてみる。
「げろげーろ!」
盛大に吐いた。
これは駄目だ。
こんなの食えるか。
ノートには味の改良をすれば完成とある。
ノートを隅々まで読む。
難しい専門用語とかは分からないが、大体は把握した。
この研究者は馬鹿だな。
俺はあることに気づいた。
家畜を飼ってると自然と判るんだが、家畜の肉の美味さは与えた餌で決まる。
当たり前と言えば、当たり前。
雑草が不味いのは、誰だって知っている。
そんな物を餌にすれば、不味い物しかできないだろう。
牛なんかは、雑草でも食うけど、美味い餌を与えた時ではやっぱり違う。
とうもろしを餌にして、食用スライムを育ててみた。
食用スライムを恐る恐る食べてみる。
「美味いぞー!」
これを名物に出来ないかな。
牛を育てるより簡単だ。
ノートを書いた研究者の目的であった飢饉対策にはならない。
与えた餌の量より、食用スライムは小さいからな。
だが、珍味として名物にはなりそうだ。
食用スライムの料理を考えてみよう。
それは女衆に任せるべきだな。
食用スライムの味は、食わせる餌で変わるはずで。
研究すれば、いろいろと名物ができるはずだ。




