第20話 ゴブリン大量発生の危機
Side:サムボデ
ゴブリンが大量発生した。
その数50。
上位種もいる。
詰んでいる。
ゴブリンは村を囲んだ。
村の入口にバリケードを作って、柵を強化。
籠城した。
頼みの綱は従弟のサムワン。
王都まで助けを呼びに行ってもらった。
士気は高い。
「ゴブリンなんかに負けて堪るか」
「おう」
農具を持って立ち上がる村人。
最初は何とかやれてた。
柵越しに攻撃するだけだから。
だが、数がなぜか増えるゴブリン。
増え続けているようだ。
倒しても倒しても数が減らない。
しかも、倒したゴブリンの死骸をゴブリンは食っていた。
倒したら、ゴブリンに餌を与えていることになる。
かと言って倒さなければ、増える一方。
ゴブリンアーチャーが矢を放って怪我人が増えた。
投石もそれに追い打ちを掛ける。
「不味いぞ。ゴブリンマジシャンがいる」
「火を放たれたらどうにもならない」
恐れていたことが起こった。
バリケードに火球が激突。
燃え上がった。
もう柵はあてにはできない。
みんな家に閉じこもった。
ゴブリンは扉をぶち破れるのにそれをしない。
扉を叩くだけだ。
だが、家畜は軒並み殺されて奴らの胃袋に消えた。
奴らがなんで俺達を殺さないのか分かった。
ある家が窓から食料を投げたのだ。
その家はしばらく攻撃されなくなった。
ゴブリンの数はますます増えて行く。
食料を全て出させるつもりだ。
くそっ、頭の良い奴らだ。
備蓄されている食料がどんどん減っていく。
これがなくなったら、俺達はゴブリンに食われて死ぬのかな。
食料を切り詰めて生活する毎日が始まった。
水瓶の水も節約しないと。
こうなったら、食料を盛大に食ってぶくぶく太ろうかとも思ったが。
たぶんそれをするとゴブリンが喜ぶ。
食っても地獄。
食わなくても地獄。
どっちにしても地獄。
救いはないのか。
サムワンは助けを呼べたのかな。
金貨10枚ほどで、依頼を受けてくれる冒険者が現れるだろうか。
運の悪いことに、上位種はゴブリンキングだった。
ゴブリンチーフぐらいなら、良かったのに。
「あなた、食料があと3日ぐらいしか持ちません」
妻にそう言われてしまった。
「きっと助けはくる。サムワンは裏切ったりしない。とにかく何かしないと。合成スキルで食料を作り出せたらな。やってみるか」
何を合成しよう。
麦わらと塩かな。
塩味の麦わら。
「合成」
食ってみた。
塩味は効いているが麦わらだ。
失敗だな。
牛でもない限りこんなのは食わん。
子供が集めたどんぐりがある。
「合成」
塩味のどんぐりができ上がった。
皮をむいて食べる。
くそっ、渋い。
「抽出スキルで渋を抜きます。抽出」
妻が、渋を抜いてくれた。
今度は食える。
栗ほどじゃないが、まあまあの木の実だ。
「うん、なんとなく食料になった」
窓から作った食料を投げ、ゴブリンの攻撃をやめさせる。
その隙に各家を回ってどんぐりを集めた。
どんぐりを家畜の餌にしている家もあるので大量に集まった。
塩味渋抜きどんぐりを作って暮らした。
塩味渋抜きどんぐりは俺達の食料にもなった。
これでしばらくは暮らせる。
だが、それもなくなった。
もう食料はない。
ゴブリンの数はますます増えてる。
「あなた、皮をゴブリンに食わせましょう。人間は食えなくてもゴブリンなら食べます」
「よし、革靴、皮のシャツや上着、革製品を全部、食料に変えるぞ。合成」
ハーブの粉など、塩、食用の油と皮を合成した。
「抽出」
妻が皮製品に使われていた薬品の成分を抜く。
小さくちぎって食ってみた。
噛んでも噛んでも、噛み切れない。
味は悪くはない。
これでしばらく、コブリンを黙らせることができる。
家中の皮製品が全て消えた。
隙を見て畑を確認したら、畑の作物は全て食べられている。
村の食料倉庫も破られてた。
ゴブリンの数が、1000ぐらいはいるような気がする。
増えるにしても早すぎる。
俺達が餌を与えたから、増えたのか。
それにしてもだ。
ゴブリンが扉を叩く音は激しさを増す。
催促したって食料なんかない。
限界点を越えたら、きっと食われるのだろうな。
その時、サムワンが飛び込んできた。
「待たせた!」
「それでその人が凄腕の冒険者さん?」
「分からん。逃げ足だけは1流だと思う」
「逃げられるのか?」
「どう?」
「そうだな。まずは村人の避難をしよう」
冒険者が食料を持っていたので、ゴブリンの攻撃は収まった。
「しっかり掴まれ」
「俺も飛んでここまで来たから、安全は保障する」
「逃げられるのなら多少の危険性は目をつぶる。よし、やってくれ」
「【バリヤー、エクスプロージョン】、ロケット加速。【バリヤー、エクスプロージョン】、バーニヤ」
空を飛ぶのは爽快だな。
世の中にはこんな面白いことをする人もいる。
空の旅は一瞬で終わった。
ゴブリンの件が終わったら、この冒険者と空を旅したい。
いいや、空を飛ぶ方法を教えてもらおう。
空を飛んで、ゴブリンの包囲からひとりひとり逃がして行く。
避難先は隣村だ。
「肝心のゴブリンの退治だが、ゴブリンを合成して一纏めにして倒す」
「サムワン、気が狂ったのか? モンスターの合成は禁忌だ。昔、それで国が滅んだのを忘れたのか?」
「いいや、大きくすればこの人が倒せるらしい」
「任せてくれ。でかぶつを倒すのはパイルバンカーの醍醐味。絶対に仕留める」
空を飛んで助けてくれただけでも十分なんだが。
「このままという選択肢はないのか?」
「ない。パイルバンカーが巨悪を倒せと叫んでる」
「食料を買う金で依頼金は無くなる。この人を信じてみないか。詐欺師っぽいけど」
「ゴブリンはあの村が空っぽだと知ったら、この隣村に来る」
冒険者の一言に心が決まった。
「よしやろう。この一件が終わったら空を飛ぶ方法を教えてくれ」
「そんなことは容易い」
「合成」
合成すると、合成したゴブリンはしばらく動かない。
脳みそというか、思考が統一されないのだろうな。
複数の思考があると、混乱するのは分かる。
馴染ませるというか、主導権争いしてるのかもな。
動かないのは、良い事だが。
「合成すると、動かないな。ゴブリンキングを合成しろ」
「おう。合成」
ゴブリンキングを合成すると、他のゴブリンの動きも止まった。
ゴブリンキングの指示がないと、動けないようだ。
何度も合成すると、すぐに魔力が切れた。
「どうした?」
冒険者がスキル行使の止まった俺に尋ねた。
「魔力切れだ」
「おう、試したいことがあるんだよな。初めてだけど、痛くしないから。痛かったら、すぐに抜くから。先っちょだけ。先っちょだけだから」
「非常に嫌な予感がする台詞だ。そりゃ、女にあれするする時の台詞じゃねえか。先っちょだけ入れさせてくれとか言われたら、俺は逃げる」
「問答無用! 奥までずぶりとな! 魔力補充魔力パイルバンカー!」
「ふわっ、気持ちいい! 俺ってやられてしまったのか。初めてだったのに。汚された。無理やり凌辱された。純潔を失ってしまった」
「冗談はそこまでにしとけ。男同士でこの会話は鳥肌が立つ」
「最初に下ネタを言い始めたのはお前からだろ。それに、気持ち良いのは事実だ。魔力が戻ったぜ。下ネタなんか言わずに、魔力回復手段があるって、素直に言えよ」
「作業再開だ」
何日もかけて、ゴブリンを合成しまくる。
連続の徹夜はつらいけど、村を救うためなら、頑張れる。
どんどん大きくなるゴブリン。
オークの背丈を超え。
オーガの背丈を超え。
これはやばいんじゃないか。
噂に聞いたドラゴンより、でかい気がする。
これっ、なんとかなる問題なのか?




