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一撃必殺!パイルバンカー!~スキルがなくて追放された俺はパイルバンカーで天下を取ってざまぁする~  作者: 喰寝丸太


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第15話 あのお方

Side:リリアンヌ・エングレイ

 千里眼であの方の戦いを見守ります。

 アイラは馬車の扉が壊れて開いた穴から、身を乗り出して戦いを見ています。


 なぜに武器が鉄の杭なのでしょう。

 たしかにザコオークに鉄の杭を打ち込めば死にます。

 ですが、不思議です。

 あれがあの方のスキルなのでしょうか。

 杭を強化するスキル。

 もしかして付与スキル系でしょうか。

 それとも剛力系スキル。

 よく見ると、杭は爆発で打ち込まれています。

 爆発系のスキルでしょうか。

 そうなら、直に爆発でダメージを与えた方が早いと思うのですが。


「杭強化魔力パイルバンカー、【アラーム、バインド、バリヤー、エクスプロージョン、クールウォーター】。パイルバンカーを」


 あの方のお声が聞こえました。

 これは魔法語。

 ということは魔法です。


 意味が分かりません。

 警報の魔法は何のためにあるんでしょうか。

 拘束の魔法は杭が空中に浮いていることから、このためなのでしょう。

 結界に爆発、ここに謎がある気がします。

 爆発を冷やすために冷水魔法?

 冷却魔法じゃ駄目なんですか。


 それにジャキンという金属音とプシューという謎の音。

 それに白い煙。

 意味が分かりません。


 ザコオークはあの方の迫力に押されています。


「プギィィィ!」


 オークキングが咆哮します。

 いけません。

 金縛りになったら、あの方がやられてしまう。


 静寂の魔法を掛けなかったのが悔やまれます。

 ですが、ここからではオークキングやあの方に届きません。

 戦場に踏み込むべきだったのでしょうか。


「こんな物! スキル破壊魔力パイルバンカー! 魔力を使った技は効かないんだよ! パイルバンカーは無敵だ!」


 あの方が動き出します。

 良かった。

 あの方はどうやら対抗手段を持っているようです。


 オークキングは考えている素振りを見せた後に短く吠えました。


「プギッ!」


 ザコオークが一斉にあの方に攻撃を加えます。


「杭強化魔力パイルバンカー、【アラーム、バインド、バリヤー、エクスプロージョン、クールウォーター】。パイルバンカーは反動で窮地を脱することができるんだぜ! 胸熱だろう!」


 杭を打ち込んだ反動で、囲みから脱出したようです。

 器用ですね。

 胸熱、私も胸が熱いです。

 そしてドキドキします。

 この感情はなんでしょう。


「【バリヤー、エクスプロージョン】、ロケット加速だ」


 あの方が爆発を使いオークキングに肉薄します。


「杭強化魔力パイルバンカー、【アラーム、シャープエッジ、バインド、バリヤー、ロール、エクスプロージョン、クールウォーター】。これがパイルバンカーだ! 恐れ入ったか!」

「プギィイイ!」


 オークキングの腹に深々と鉄の杭が刺さりました。

 しかし、オークキングはまだ死にません。

 恐らく腹の肉で杭が止まったようです。


 ザコオークがあの方を囲みます。


「【バリヤー、エクスプロージョン】猫騙し、ロケット加速」


 爆発でザコオークが目をつぶった隙に、ロケット加速というもので逃げました。


「おっと、弱点を攻めるんだったな」


 オークキングはザコオークに守られています。

 どうやって攻めるのでしょう。


「【バリヤー、エクスプロージョン】、目潰し」


 地面が爆発してオークの目に土が入ったようです。

 あの方がするりとオークキングに近寄ります。

 ザコオークの中を悠々と歩いています。

 まるで王者の風格。

 オークキングもあっけに取られています。


「ほらよ、杭強化魔力パイルバンカー、【アラーム、シャープエッジ、バインド、バリヤー、ロール、エクスプロージョン、クールウォーター】。関節をパイルバンカーで狙うのは定番。胸熱だよな」


 杭がオークキングの膝に打ち込まれました。


「プギィイイ!!!」


 オークキングの絶叫。

 オークキングは片膝を付きました。


「止めだ。杭強化魔力パイルバンカー、【アラーム、シャープエッジ、バインド、バリヤー、ロール、エクスプロージョン、クールウォーター】」


 オークキングの額に杭が打ち込まれオークキングは崩れるように倒れました。

 ザコオーク達が逃げて行きます。


「これぞ、パイルバンカー! 良いパイルバンカーだったぜ! 胸熱だったぜ!」


 あの方は戦いの余韻に浸っているようです。


「やった。勝ちましたわ!!!」

「お嬢様、唾を飛ばして喋るなどはしたない」

「失礼いたしました。ですが、アイラは嬉しくないのですか?」

「嬉しいに決まってます」

「なら、もっと喜ばないといけませんわ」

「淑女たる者がはしゃぐなど、みっともない」


 アイラは堅いですね。

 そんなだから、行き遅れになるのです。

 口が裂けても、言えませんけど。


 千里眼で、あの方の顔をアップで、しみじみと見つめます。

 素敵です!

 なんという、勇猛果敢!

 美丈夫です!

 なんという、一騎当千!

 心の中で叫びます。


 思ったのですが、スキルを使った感じがありません。

 全て魔法です。

 戦闘系のスキルではないのかしら。


「アイラ、あの方を王都の屋敷にご招待したいですわ」

「そうですね。いくばくかのお金を払って護衛して頂いて、屋敷に着いたら歓待するのがよろしいかと」


「そう致しましょう。アイラはあの方をどう思われますか」

「先ほどの戦闘を壊れた扉から身を乗り出して拝見しましたが、とても戦闘慣れしているお方とお見受けしました」

「ですよね。素敵ですよね」

「ああ、お嬢様。顔が赤いですよ」

「赤くなんかありませんわ」


「危険な香りがする男と見ました」

「危険ですか? 私の危機察知には反応してないですが」

「はい、死地に笑って飛び込むような男です。こういう男に女が弱いのも分かります。ですが、やめておいた方がよろしいかと」

「嫌ですわ。まるで私があの方に心を奪われたよう」

「鏡を見てからおっしゃって下さい」

「今日のアイラは辛らつですね」


「私は虫よけの役目も仰せつかってます」

「私が恋した前提はやめて下さいまし」

「仕方ないですね。恋は反対されればされるほど燃え上がる。分かりました。お嬢様の恋が悲恋にならないようにアドバイスして差し上げます。まず全てを許さないことです。釣った魚に餌はあげません」

「違いますのに」


「ああいう方はそれはもてます。女が群がってきます。その時にみっともない立ち振る舞いはいけません。別れても傷になります」

「違いますのに」

「聞いておいた方が良いですよ。それと追うと逃げられます」

「えっ」

「男なんてそんなものです。良い男はしつこくされると逃げるものです」


 あの方はご自分が倒されたザコオークとオークキングを収納鞄に入れると立ち去ろうとしました。


「お待ちになって!!」


 私はスカートの裾が大きく広がるのを気にせず、あの方の下へ駆け寄りました。

 追うと逃げると言われましたが、挨拶もお礼もせずに立ち去らせるのは、貴族としての矜持が許せません。


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