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異世界ピザMAP! ピザ配達員は世界を測ります!  作者: クッソデカパイのナギ


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第31話 何が正解?

「なぁ…ルディオ、どういうことだ…?食い違ってるぞ?」


 今まで温厚だったルディオ侯爵は、口元で指を組み、俯いて視線をテーブルに投げ出している。でも何かを捉えているわけじゃない。可能な限り視覚情報を遮断して、過去の情報を整理しているんだろう。


 普段はピザを目の前にすれば、お客さんと全く変わらない喜びを見せていたけど、今はくうを見つめる鋭い眼光だけで人を圧倒できそう。きっとルディオ侯爵の部下にとっては、常に緊張感のある方なんだろう。これが先頭に立って国を統治する人間なのか。少しの隙もなく、周りの空気さえも一瞬で変えてしまった。


 ピザ屋MAP!に店内BGMがあればこの雰囲気も少しは和むのかな。とは言っても、元の世界(あっち)ではごまんとある音楽プレイヤーなんてものは異世界こっちにはひとつもない。普段なら、店内に響くお客様とのやり取りがBGM代わりなんだけど、こんな雰囲気の時には音楽の力を借りたくなる。


「私がネレイダで交渉をするときは必ず相手も国王・ミルファハン王の側近だ。国民に直接話を聞くことはできない。交渉する人間が高い位置にいるからこそ、国民の真の声を聞くことができなかったわけだ。」


 視線を落としたまま、声のトーンは低く呟くようだった。自分の行動を悔やむかのように漏れた声。けれど、立場がある人の反省に相打ちを打つべきか判断がつかない。


「…リン、そなたは、私たちが時間をかけても得ることができなかった情報を掴んだと思える。だが、それだけでは私がネレイダに踏み込むまでの確定的な証拠がない。」


ルディオ侯爵の思惑がわからないままだけれど、少し迷って言及してみる。


「もう少し、ネレイダで話を聞いてきましょうか?」


ルディオ侯爵はあたしがこう言うと思って先回りしていたのかもしれない。


「ダメだ。それは危険すぎる。リンは諜報員ではない。美味しいピザを作って、地図を描くべき人間だ。それに一度に動くと悪い結果を招く可能性も出てくる。」


「そう…ですね…。」


 あたしの本分に集中させてくれたことに嬉しさが溢れてきたものの、気迫に圧倒されて力のない返事しかできないでいる。


「私はリンの味方だ。リンが気に入って買ったそのネックレスを否定しないし、作った鍛冶職人を疑いたくはない。だが私は立場上、どうしても何通りもの可能性を予想して行動する必要がある。」


 どちらかが“ウソ”という二者択一に巻き込まれたこの状況でも、あたしへの気遣いを忘れない。ルディオ侯爵は続ける。


「まずは予定通り、地図を進めて行ってくれ。」


「明日からはナトリカと合同で調査を進めて行く予定でした。」


「なぁリン…。あまり言いたくないはないけど…大丈夫なのか…?」


「確かにナトリカはネレイダ出身です。でも彼女とはちゃんと話して、ピザも一緒に食べてきました。自らの意志で地図の作成に協力したいと言ってくれましたし…。それに、偶然、二国間の食い違いについて知ることになりましたが、政治的な思惑が一国民にまで届くとは思えなくて…。」


「…そうか。」


 ガルネさんは心配を口にすることで、あたしが一度退くことを期待していたのかもしれない。思いがけない反論に寂しさと悲しさが入り混じった声で力なく返事をした。


 ガルネさんのそんな姿は初めてで、申し訳ない気持ちが沸き上がったあたしは何も言えないまま目を逸らしてしまう。


「明日からはどっちの方角に調査に向かう予定なのだ?」


 ルディオ侯爵は、会話が終わり際を見計らったように、視線を落としたまま口を開いた。まるでお父さんとお母さんから質問されてるみたい。確かにルディオ侯爵とガルネさんは異世界こっちの両親と言っても過言ではないけれど。


「あ、明日からは、フローラリア王国を基点として北側に向かいます。ここからでも見える山脈を最高到達点にして、毎日夜には戻ります。」


「うむ、必ずそうしてくれ。私は城に戻って情報を整理する。」


 門限を設定してすぐにルディオ侯爵は立ち上がり「それでは失礼する」と言って足早に店を出て行った。


「それじゃあ…アタシたちも休むとしよう。リンも疲れただろう。フレアもミオルさんも今日もお疲れ様!」


 そう言ってまず席を立ったのはガルネさん。空元気なのがすぐにわかる。


 フレアもミオルさんも「不穏な状況でも地図の作成を進めなきゃいけないのか」そんなことを言いたげな表情だったけど、無言のまま立ち上がった。


 あたしがムキになりすぎたのかな…。明日からナトリカが合流して地図作成もぐっとやりやすくなるのに、政治的な思惑に水を差された気分になったのが正直なところ。


 でも、地図を作成する仲間ができたからと言って独りよがりだったかな。ピザを作る仲間ができた時は嬉しかった。今度は測量の仲間ができたからといって、ガルネさんたちの気持ちをないがしろにしてるわけじゃない。


「難しいな…。」


 そう呟いて、そっとネックレスに手を触れた。


——————————————————————————————————————


「…これと、あとこれも持って行って…最後は、このナイフを隠して…と…。」

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