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異世界ピザMAP! ピザ配達員は世界を測ります!  作者: クッソデカパイのナギ


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第20話 景色の向こうに見えた街

 フローラリア王国にある出入口の門から一歩平地に出ると、人の往来の少なさに驚かされる。王都で生活している時と比較にならないほどで、まるで王都と平地に見えない境界線が敷かれているかのようだ。



 久しぶりにすれ違ったと思えば、みな商人とおぼしき身なりをしている。体格の良い男性が担いでいる背負子しょいこには、きっと他国から仕入れた商品が収められているだろう。



 リン式測量法で地図の作成を進めているあたしにとって、この人の少なさは好都合とも言えるけれど、“王都から出るには資格が必要なのだろうか”と疑ってしまうほど、人気ひとけのない風景を奇妙に感じる。



 以前ルディオ侯爵が言っていた通りだ。国同士の交流はほとんどないことが伺える。そう言えば、フレアも隣りの国に行った経験がないと言っていた。きっと自分たちがどれくらい広い世界に生きているかを知らないまま一生を終える人がほとんどなのだろう。



 …な~んてことを言ってみる。だって言ってみたかったんだもん。



 確かに都合よく人の往来が少ないのは本当。もちろんモンスターとのエンカウントだってないし、気候も味方してくれてるおかげで測量も捗るってわけ。



 あたしは体調が回復してすっかり元気になったよ。限界で倒れそうになったあの時、ミオルさんがMAP!に駆けつけてくれるなんて思ってもいなかった。ヒーローの登場でMAP!も助かったし、あたしも体調の回復に専念できて地図作成も再開できたんだけど…。



 ちょっと悩みも出てきちゃった。



 気の置けない仲間が増えた分、地図を作るために外にいる時間がすごく寂しく感じちゃう。それに、地図が広がれば広がるほど、そう簡単にはフローラリア王国には帰れないってことだよね。



 地図を描き続けるにしても、描いていることはまだみんなには内緒だから、『しばらくの間MAP!を留守にします』って言っても通るはずがないし。



 とかなんとか言ってるけど…結局は、温かい場所から離れたくないだけ、なのかも…。一人で行動すると、装備を身ぐるみはがされたみたいで不安に襲われる。



「ダメダメ…!自分でやってみたいって思ったことなんだから、ちゃんとやらなきゃ!」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 今まで描けなかった分を取り戻すように測量を進めていくと、あたしにとって思い出深い場所に辿り着く。元の世界(あっち)から異世界こっとに来た時、ルディオ侯爵と初めて会った道だ。



 あの時はパニックになって余裕がなかったけど、こう見ると逆に不自然なくらい何もない平地だなぁ。あるのは生えてる草とどこまでも続く一本道だけ。そう言えばルディオ侯爵は向こう側から来たんだっけ。この一本道がどこに続いているか確かめてみよう。



 測量をしながら進んで行くと、驚くことに平地のところどころに高さのある台地が目立つようになってきた。測量を彩るギミックが増えたって感じがする。



 近づいてみると、あたしが両手をかけて、蹴り上げで登れる高さ。登った後に少し歩いてまた台地があって、それが積み重なって大きな階段になってるイメージ。全部で3段から5段の台地がちらほら見える。



 …となると、台地の形状に沿って、等高線を描かなきゃね。



 この台地は…あたしが156㎝で、台地の高さは目線より少し下だから…140㎝くらいかな。ん?140㎝()()()…?あれ、そう言えば、リン式測量法だと正確な高さまで測れないじゃん。



 でもちょっと待てよ…測量画面に表示されてる『梵天ピンから台地に立った時の斜めの距離が2800㎜』、『梵天ピンから台地に立った時の水平との角度、つまり水平器が示す角度が30°』、『平地に対する台地の水平器が示す角度が90°』…とくれば…“三角関数”…!!!



 ま、まぁ“やや理系”のあたしからすれば朝飯よ…。



 ええと…高さ=sin30°×2800㎜、sin30°=0.5だから、高さは1400㎜…。バッチリ予想通り!!



 ……じゃなくてさ、これ超簡単な問題じゃん…。問題ってか例題じゃん。初めて公式が出た時に、脇に“やってみよう”とかちょこっと書いてるやつじゃん。



 普通さ、誰かが設計しない限り、現実にこんなピッタリした数字なんてないでしょ…。測量画面の左上に付いてた電卓のアイコン…こんなのいつ使うのって思ってたけどコレに使うんじゃん…。これからもっと複雑な数値になっていくわけでしょ…?筆算よりは早くて正確ってか?



 …とは言え測量画面さえない状態でやった偉大な先人がいるんだもんね…。文句は言えないか…。



 贅沢すぎる機能に理不尽すぎる文句を言いたい放題した後、平地から高さ7mほど(大体3階建てのビルの高さ)の台地に立って見晴らしの良い景色を楽しんでいると、向こうに人の営みを感じさせる色彩を見つけた。



「ん?…地平線の近くに屋根が見える…。」



――――――街だ!!!



 絶対にあそこだ!平地で出会った時のルディオ侯爵は、きっとあの街に行った帰りだったんだ。



 あたしは急いで台地を降りて、いくら全力で走っても疲れないこと良い事に、測量も忘れてダッシュで向かった。

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