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異世界ピザMAP! ピザ配達員は世界を測ります!  作者: クッソデカパイのナギ


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第17話 希望を断ち切る若さ

「すいません。このパンを3つと、これも3つください。」



「はい、いらっしゃい。ん?…おぉ…君か…。」



「お久しぶりです。最初に食べたこの味を忘れられなくて。」



「なんだ。気に入ってたんじゃないか。やっぱり、僕のところで修行したくなったか?君には才能があるぞ。」



「ありがとうございます。そう言ってくれて嬉しいです。でも修行はできないんです。…ミオルさん。」



「…!?…パンには名前を書いていないはずだが…。」



「そこまで主張の強いパンではないですが、昨日の夜に落としたハンカチには書いてましたよ。」



「そのハンカチ…探していたんだ。ありがとう。一体どこで落としたのか…。」



「鍛冶屋のイートインスペースに落ちてましたよ。きっと昨日の夜に落としたんですね。…別に覗かなくても…せっかく来てくれたんですから、店に入って来れば良かったのに。」



「……。」



「そうだ。今日ここに来た理由は、もう一つあるんです。ミオルさん、一緒にピザを作りませんか?実は一緒に働きたくて覗いてたとか。」



「…ふざけるな。誰があんなもの…。」



「えっ…!?」



「君の若さがまぶしいよ。だから“一緒に作ろう”なんて歯が浮くことを恥ずかし気もなく言えるんだ。」



「そんな…。ミオルさんの力が必要なんです。パンを作ってきた経験が、きっとピザにも活きてくるはずです。」



「ははっ。若くして店を持てる人間は言うことがひと味違うな。君にはわからないだろう。勝てない人間の気持ちなど…。」



「そんなこと思ってません。ここのお店で売られているパンは綺麗に成形されているものばかりです。丹精込めて作らないとこうはならない。ずっと努力を積み重ねてきた証じゃないですか。」



「火を自由に扱える側にはどうとでも言えることだ。」



「それなら一緒に火を使いましょう。鍛冶屋の空いているスペースで、作ったパンを販売しても構いませんから。」



「そんな口上で周りを固めたのか?美味いと言っていたこのパンのことも、どうせ裏では笑っているんだろう。」



「そんなわけないじゃないですか。だったらそもそも買いませんよ。」



「頼むから放っておいてくれ。」



「…諦めるんですか?」



「“諦める”だと!?今、“諦める”と言ったのか!?じゃあ売上が下がった現状をどう説明する!?君がいなければ…君さえいれば僕はまだやれたんだ!」



「……。」



「もう帰ってくれ。君に僕の何がわかる。」



「…わかりました…。……すいませんでした。」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 あたしは、異世界ここだったら何をやっても“きっと上手く行く”って勘違いしてたのかな…。



 最近は少しずつ自信を持ててきた。でもそれは生まれつきあたしに備わっているものじゃない。みんなの力のおかげ。



 “勝てない”と思った相手と出会った時、あたしならどうするだろう。やる気をなくす?諦める?それとも研究して対抗しようとする?でもこれは“質問に対して答えただけ”だよね。その人の努力やその状況に至った経緯までは考えてない。



 ミオルさんは何もしてこなかったどころの話じゃない。修行して地道に努力を重ねてきたんだ。火が扱えない状況の中でずっともがいて、やっとこのパンを開発したんだ。これは言わば“希望”なわけで、それを壊したのはあたしってことになる。



 “キミ強いね。あたしと一緒にやればもっと強くなれるよ”って年上に面と向かって言ったあたしの厚かましさよ。



  「あ~あ…。」



 力なく漏れた言葉に呼応するように、フローラリア王国にそよぐ柔らかい風があたしの頬をそっと撫でた。


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