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異世界ピザMAP! ピザ配達員は世界を測ります!  作者: クッソデカパイのナギ


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第11話 異世界ピザ屋「MAP!」

 ガルネさんが石窯を作り始めて1ヶ月後。鍛冶屋は、今や立派な「ピザ工房」になっていた。石窯、作業台、ピザを石窯から出し入れするためのピザピール、生地を切り分けるためのスケッパー、そして秘密兵器まで作ってくれた。全部揃ったあたしは最強というほかない。


 いやぁ、作業工程がわからないから、正直途中まで不安でいっぱいだったよ。石を積むのってあんなに大変なんだね。しかも火を扱う炉の近くだからって、温度管理だの、換気だの、ガルネさんとフレアがめちゃくちゃ気を遣ってくれた。


 魔導鋼は鍛え方によって自由自在に形を変えられるらしいんだけど、貴重な素材だからミスのないように、フレアから意見ももらいながら、石窯の内側半分を覆うように設置してもらった。もう半分の場所でピザを焼いていくよ。


「……ふぅ。やっと形になったな。しかし武器以外に魔導鋼を使う日が本当に来るとはな。」


 汗をかいたガルネさんが大きく背伸びをする。その隣で風魔術を扇風機みたくあててあげるフレア。そんな使い方もできるんだね。


「ありがとう、ガルネさん!フレア!本当にありがとう!」


 思わず飛び跳ねて喜んじゃった。


「……リン、これでピザが食べられるね。」

 

 くふふっって感じでにんまりしてるフレア。


「うん。楽しみにしててね!」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 で、よし、次にやることは、そう、食材の調達!


 ピザって言ったら色んな具材があるけど、今回は定番のマルゲリータを作ってみる。食材はシンプルで、トマトソース、チーズ、バジル、あとオリーブオイル!これは看板商品になりそう。いや、絶対なる!


 生地はもうできてるから、食材を市場でささっと揃える。

一緒に買出しに来てくれたフレアはというと―――


「……リン、お腹空いた。」


「うん、早く作って食べようね。」


 買い物に付き合ってくれたフレアが小さな子供みたいでかわいい。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「…ただいま~、リンもおかえり~。」


「ただいま~、ってか今まで一緒だったじゃん。」


 足早に鍛冶屋に戻ってきたけど、外はすっかり茜色の空。お腹が空いて空いて仕方がないフレアは椅子に座るでもなく突っ伏しちゃった。


 ガルネさんが「おかえり!」と声をかけてくれた。小さなことかもしれないけど、あたしには元の世界(あっち)とダブって少しじ~んとくる。


 この大きなフローラリア王国にある鍛冶屋で始まった小さなプロジェクトはまだ3人。だけど初めからそう決まっていたみたいに息が合ったあたしたちは、少しずつ一緒に進んだことで、信頼が花開いているのを実感する。


 そんな特別な人たちから「おかえり」って言ってもらえると、寂しさが浮き沈みするあたしの胸にじんわり響くんだ。


「リン?突っ立ったままでどうかしたか?」


「え…?…ううん、何でもないです!」


「…お腹が空き過ぎてぼ~っとしちゃったんでしょ。」


「その体勢で言うんかい。」


 さぁメインイベントの始まりだよ。完成した石窯を背にして、瑞々しい食材が並べられた作業台に、あたしは再び立つ。


「ついにこの時が来ました。ガルネさんとフレアが作ってくれた石窯、あたしが仕込んだ生地、そしてフローラリア王国の恵みを使ったピザを作っていきます!」


「お~~~!」


「…ずっと待ってた!」


 2人の拍手にあたしのテンションもMAX!


「…にしても、この膨らんだ生地をどうやって使っていくんだ?」


 ガルネさんから、おあつらえ向きの質問がきたところで―――


「まずは生地を伸ばして行きます。手を交差させて、指先で丸い生地の手前から奥に向かって押す。押した時に盛り上がる縁の部分は触らないように。押したら生地を裏返します。この時、縁を触らずに生地の右側を両手で柔らかく持って裏返します。常に右側が手前に来るように裏返すのがポイントです。そしてまた指先で手前から奥に向かって押します。押して裏返して押しての作業を4回ほど繰り返して、生地を大体手のひらサイズに広げます。触りすぎも良くない。」


「…縁に触らないのはなんで?」


「ここがピザの重要な部分で、焼くと膨らむんだ。触ると空気が抜けて、せっかくの良い状態が台無しになっちゃう。つまり、美味しくなくなっちゃうの。」


「思ったより繊細な料理だな…。」


「次は手のひらサイズにした生地を更に伸ばしていきます。右手の小指側で生地の右側を押さえます。この時も生地の縁には触りません。右手で押さえたまま、左手で生地の左側を引っ張って伸ばします。伸ばしたら、右手に裏返してのせて、表を上にして台に戻します。これを4回ほど繰り返します。」


「それは思いっきりやるんだな…!?」


「はい。しっかり捏ねていれば、ちぎれずに伸びてくれます。そしてこの作業がしっかりと出来ていれば、生地の縁にちょうどよく空気が残った状態になります。中心部は持った時に透けてない程度の厚みが好ましいです。次は伸ばした生地に具材を乗せて行きます。」


「…いっぱい、いっぱいのっけて!」


「もちろん!まず、伸ばした生地の中心からトマトを潰して作ったトマトソースを塗り広げていきます。この時、縁には塗らずに中心部にだけ塗ります。縁にまで塗っちゃうと、ソースが重みになって焼いた時にちゃんと膨らみません。チーズはいっぱい乗っけちゃお。次はバジル。ちぎってパラパラとまぶします。手でちぎると香りがたつ美味しいピザになります。最後にオリーブオイルをたら~っと全体にかけてあげるのも忘れずに。そしてピザピールに乗せて火入れの準備をします。」


 いよいよピザを焼くよ!


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ここからが本番。ピザは高火力で一気に焼き上げるから、火力が最重要になるの。石窯の温度は450℃~480℃が必要。この時の炉床ろしょう温度は400℃、ドームの上部は600℃にもなる。そのために、薪を石窯に入れて時間をかけて熱を均一に入れる行程が必要なんだけど…そこでフレアの登場。魔導鋼に火入れして、石窯の温度を調整した後にそれを維持する。」


「…うん、わかった。」


「温度は石窯から出てくる熱気を肌で感じて覚える。」


 実家のパン屋を手伝ってて良かった~。


「…じゃあ、やるね。」


 お~~~!フレアが構えるとピンポン玉状の火の玉が数個出て来て、魔導鋼に跳ね返って卓球のラリーみたく上下を行ったり来たり!


 初めて見る火魔術の動きに見惚れてしまいそうだけど、温度管理をしっかりしなきゃ。


「フレア、もっと上げられる?」


「…うん」


「もっと」


「…うん。」


「まだもう少し。」


「…うん。」


「お、おい、本当に大丈夫か?」


「あっ上がり過ぎた。もう少しゆっくり下げて。」


 あたしは石窯の内部を見て温度を感じながら、手を上下に動かしてフレアに伝える。


「きた!オッケー!これを維持して、まずは石窯全体を温める。」


「…わかった。」


「なぁリン、ピザは繊細な料理じゃなかったのか!?炎が燃え盛ってるし、食べ物を扱うとは到底思えない温度だぞ!?」


「大丈夫!この温度じゃないとダメなんです。」


 薪で温めるよりも圧倒的に早く石窯の状態を最高にしてくれたフレア。ピザピールに乗せたピザを、窯の火元から少し離れた場所にスっと置く。


「焼く時間は90秒ほど。石窯のどこに置くかも重要。火元に近い奥の方へ。ピザを置いたら30秒はピザを絶対に動かしちゃダメ。ピザを置くと石窯の温度が一時的に下がっちゃうから、もう一度安定して熱が伝わるようにする。その間に水分が蒸発して底面が固まって行く。それと同時にソースがかかっていない縁がふっくらしてくる。30秒を過ぎたら、一度ピザをめくって底面が焦げていないか見る。表面の焼き加減は、石窯の奥が暗くて状態を判断しにくいから、ピザピールで石窯の手前まで持ってきて、明るい場所で縁の色を見て判断する。焼き色が薄い縁があったら、そこに火にあたるようにピザを回転させて、置いてあった元の位置に戻す。そうしないと他の炉床部分が熱すぎて焦げちゃう。その後も焼き加減を確認しながら丁寧に焼いていく。―――――――――できた!」


「う…おぉぉぉ…!?なんだ…これは…!!」


「…はぁっ…はぁっ…はぁっ…!!」


 試作品第一号完成!!湯気が立ち込める出来たてのピザは、焦げ目のついた縁が完璧に仕上がってる。溶けたチーズがトマトソースと混ざり合って美味しそうなグラデーション。そこにバジルの緑と香りが映えてピザに爽やかさを演出している~。


「じゃあ、食べてみよ!」


 大きめに4等分したピザをフレアとガルネさんと、3人でかぶりつく。


「うんまっ!」


「ん~~~!!こりゃ美味いな!!」


 ガルネさんが豪快にむさぼってる横で、フレアが目を丸くして固まってる。


「フレア…?もしかして、あまり口に―――」


「……美味しい……こんなに美味しいの、初めて!!」


「ほんと!?良かった。固まってたからビックリしちゃった。」


 残りの1片はフレアのお腹の中へ。フレアが頬を紅く染めながら食べる姿、反則級に可愛いんですけど。


「…ねぇ、リン。もっと…もっと食べたい!」


「いいねぇ。あたしにもくれよ。」


「うん!ピザパーティーしちゃお!」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「あ~美味しかった~。」


「…これもう私の大好物。…明日も…食べたい。」


「これを広めたら間違いなくこの国の食文化は変わってくるな。」


 やっぱりピザは大人数で食べるのが美味しい!楽しい!

 お腹がいっぱいになったフレアはもう眠たそう。うとうと顔もかわいい。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「よし、店の名前を決めよう。」


「名前って、店に名前をつけるのか?」


「えっ?そうですけど…この鍛冶屋にも名前ありますよね?」


「いや…ないな。」


「え~~~!もったいないですよ。ガルネさんも鍛冶屋に名前つけるのはどうですか?」


「そうかぁ?でもまぁ今はあたしのことは良いんだよ。そんなことより、リンはもう店の名前を考えているのか?」


「はい、実はこっそり考えてました。その名も…」


「その名も…???」


「ピザ屋“MAP!”

M…Making

A…Awesome

P!…Pizza!

(美味しいピザを作ろう!)」


「マップ!なんだか不思議な響きだけど、分かりやすいし、すごく好きだぞ!」


「ありがとうございます!これから、ピザを世界中に広めて行きます!」


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