二人の戦闘
「背骨っもらったぁああああ」
スケルトンのボロ剣と俺のショベルがせり合いになり、柔道の内股の要領で転がしたスケルトンの背骨にスコップを突き立てて体重をかけた。
ギシ、ギシ、ギシ……
上半身と下半身が分離したスケルトンが地面で蠢く。
「もう一撃っ」
今度は、首の骨にショベルを突き立てて体重を乗せる。
スケルトンは動かなくなった。
「なんやろなぁ泥臭い戦い方やわぁスコップやし。ほんでアンタ勇者なんやし、こうパパっと倒してくれへんかなぁ」
セィソが俺の戦い方にケチをつけてくる。スコップじゃなくてショベルな。
「パパっと倒してもいいんだけど、ショベル格闘術も使わないとなぁ。カラダが錆びつくんだよ。中年だし」
「オッサンやもんなぁ。元気なんは、股間だけかいな」
「……うっさい。戦闘もこの通りやってるだろ」
「ええけどさ。今夜ベッドの上で使う体力、残しときや」
「……え?それって、いいの?」
「せまい小屋で、記憶にも残ってない初体験なんて、ウチ嫌やし。短剣もらったし。」
「俺じゃなくて、どっかでイケメンでも捕まえたらいいんじゃ?」
「はっ?ウチに言い寄る男なんて、おらんのんよ。まぁそのうち分かるわ」
そんな話をしていると、またスケルトンが出てきた。
「オッケー。オッケー、夜に備えて体力温存っと」
そうして、スケルトンが近づいてきたので……楽に倒す方法を選ぶ。
「頭皮聖光ッ」
ツルツルピカピカの俺の頭皮から、眩い光が放たれる。
スケルトンは灰になった。
「ほんま、その技すごいなぁ。反則や」
「この光は、スケルトン、ゾンビ、リッチと、死霊とかは瞬殺できるんだ」
「あ~あ、光の勇者って、ハゲ頭の光のことなんかいな」
「もっと正確にはカメ頭なんだろうけどなぁ」
「ホンマ色々と幻滅してしまうわ」
そうこうしてるうちに、オーガに出くわした。
ゴブリンと違い、体格がゴツイ。
「あ~、あれ♂(オス)や。ウチに任せとき『金玉雷撃』」
オーガが股間をおさえて、転がった。同じオスとして気の毒だ。
「ほいっ首チョンパよろしゅうな」
股間をおさえて気絶している、オーガの首にショベルの先端を当て、下向きに踏み込む。
ザシュッ
南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。
オーガの胴と首は、離れた。
「よっしゃ、ほなタマタマ採集するでぇ~」
「スキル使えよ」
「ウチも泥臭い戦い方を忘れたらあかんさかいな」
オーガの股間から竿が引きちぎられ、裂かれた袋から、タマタマが取り出される。
「『金玉乾燥』。オッケー2個GET」
乾燥されたタマタマを彼女は瀬戸物の箱に収納する。
「乾燥したタマでも使えるのか?」
「せやで魔法の威力は半減すんねんけど、腐るよりましや。オスの敵が多い時は、産地直送でタマを爆発させたりすんねんけどなぁ」
そして俺は、ギルドに出すとお金がもらえるオーガの右耳を切り取りながら、ふと疑問に思った。
「ところで、タマGETが目的ならオーガの首を斬らなくてもよかったんじゃないか?まぁモンスターだから殺すけどさ」
「えとな……タマタマ抜かれた、ゴブリンとかオーガって悲惨な末路やねん。失った自分のタマタマを探し回って暴れてなぁ。最後は無くなったことに失望して死ぬんや。タマタマ抜いたら殺してあげるのが優しさやねんで」
「そ、そうか」
ひどい話だ。タマタマを持つ者としては、聞かなきゃよかった。
そんな感じで、森の中のロングホーンラビット、ビッグボア、ゴブリンなどを倒しタマタマを収集しながら、俺達は街に到着した。
「やっぱ二人やと効率的にタマ集めできるわぁ。24タマやで大量大量♪」
「金的で気絶してるモンスターにトドメ刺すだけの簡単なお仕事でした」
まぁ、メスのモンスターもそれなりに出てきたけど、ショベル戦闘で問題なく倒せたし。
「ほんで、街にも到着したし。はよ入ろか」
「そうだな、セィソの新しい防具も必要だろう」
そして俺達はシュペリアの街の門をくぐった。
固いものだとナイフで切るより、ショベル&足の力でザックリやる方が案外楽だったりしますからねぇ。
それと、足で踏むところの出っ張りが別の意味ポイントなんですよ。そこに敵の前腕とかが引っかかるようにして振り回すと、関節極めれたり色々。トンファーで握るとこ利用する感じ。ああ、どう説明したらいいんだろう。
興味ある人は「システマ シャベル 武器」とかで検索してみてください。そういった動画の大きいスコップバージョンです。