シュペリアを救え
「タプンツェル殿下。真魔王軍、新魔王軍、双方進軍中です」
「このままでは、シュペリアの街で激突するでござる」
王女&勇者軍の作戦会議は混乱していた。
「双方が潰し合うのを静観して、漁夫の利を得ればよかろう」
「そうもいきません。新魔王軍の主張は、スケルトン奴隷や人間奴隷の解放、財産の平等化なのですが……本音は『勇者様は私のもの』でございます。一方、真魔王軍の主張は、魔王血族者の支配による統率と平和、伝統の保守なのですが……本音は『勇者はウチのもんや』でございます」
「下手したら、両魔王軍の挟み撃ちだなヲイ」
ん~?そっかそっか、勇者を巡って姉魔王20歳と妹魔王15歳とが三角関係でドンパチやってるのね。どうしよう……俺。帰って寝よっかな。頭のキャパシティー超えちゃったよ。日本にいた頃は、電車で空いてるシートに座ったら、隣になった若い娘が「ハゲ嫌っ」とか言って立ち上がって去っていったのに。俺なんかを巡って、巨乳美女の姉魔王20歳と、貧乳美少女の妹魔王15歳が姉妹で戦うなんてなぁ(遠い目)
↑ とかなんとか考えていると……
「勇者殿、出陣でござる」
「勇者様、出陣ですわぁ」
贅肉王女と筋肉令嬢にステレオで催促された。
「え?でるの?」
「二人を止められるのは、勇者殿だけでござる」
「両方からボコられる可能性は」
「もちろん、あり得ますわぁ」
「……やだ」
「放っておくと、シュペリアの街が瓦礫になるでござる」
「シュペリアは、勇者様が懇意にしていたギルドですわぁ」
そうか、浮気がバレたギルドマスターとか、生死不明の秘書さんとか、口の悪い受付嬢とか、精力料理を出してくれるホテルとか……色々、世話になったよな。
「よし、わかった。シュペリアに向かって出陣だ」
「幸い、わたくし達が、一番シュペリアに近いですわぁあああ」
「うむ、先に陣取れば良いのでござる」
ということで、俺達の軍はリヴァケープからシュペリアの街へと移動した。
「世話になったギルドマスターに、ちょっと相談してくる」
「わかったでござる」
俺はシュペリアの冒険者ギルドへ入った。
「あら、種馬勇者さん。近寄らないでください、妊娠します」
受付嬢が相変わらずだ。魔王軍の情報は伝わっていないらしい。
「っつたくよぉ。女性騎士団の時は、置いてけぼりとか言ってたクセに」
「あっ……あの時は、あの時です」
「すまないが、ギルドマスターに至急の用事があるんだ。案内してくれ」
受付嬢は、すこし表情を曇らせて……
「マスターに御用ですか。いつもの奥の部屋ですので、どうぞ」
「わかった」
そうして、俺はノックをした後、ギルドマスターの部屋に入室する。
「返事がありませんけど、入りますよ」
「やぁ、禿頭勇者の君か……久しぶりじゃな」
「なんか、やつれましたね」
「愛する秘書が、別の支部に飛ばされたんじゃい」
「奥さん絡み?」
「や、やめて、ヨメこわい」
この人……もう駄目かもしれない。
が、しかしそんなことは言っていられない。
俺は、この街が真魔王軍と新魔王軍の決戦場になりそうなので、それを伝えた。そして、せめて住人の避難だけでもギルドに依頼しようと話を進めてると……
「そうか。新魔王軍と真魔王軍の挟み撃ちか……仕方がないのう。終わりじゃ」
「怖くないんですか」
「ふふ。怖い?もうワシが恐れるものは一つしかないのじゃ」
「これ、放っておいたら、奥さんに怒られますよ」
「……ひぃいいいい。わかった勘弁してくれ。ギルドとして最大限の協力をしようではないか」
昔会社にいたねぇ。『嫁さん以外にコワイものなし』な人。ヨメが怖すぎて恐怖がマヒしてる人。え~と、たしか名前は、凛古風だっけ?そうじゃなきゃ、こんなリスキーな、なろう小説書いたりしないね。おっとメタ発言してしまった。
「それじゃ、いつでも逃げられるように、街の人達に荷物をまとめておくように通達してくださいね」
「あぁ、わかった……ヨメこわい」
俺が部屋を出ると、ギルドマスターは、のろのろと動き出した。
「種馬勇者さん?マスターへの用事って?」
王女&勇者軍に戻ろうとすると、受付嬢に声をかけられる。
「ここが戦場になるかもしれないからな。君も逃げる準備をしておけ」
「戦場って、敵は?」
「俺と一緒にいた、セィソとヘシアだ」
「……竿姉妹対決?種馬勇者のどこがいいんだか」
竿姉妹どころか、実姉妹なんだけどな。
「そんなん、知るかっ」
「ん~♪がんばってくださいね。痴情のもつれ戦争」
「へいへい。放屁ガスで窒息死する前に、逃げろよ」
「男の人は、玉潰しのセィソさんに全滅させられそうですしねぇ」
「そうだった。男優先で逃がしてやれ……な」
「はいはい。じゃぁ、私が孕む前に、帰って下さい」
「うっせぇ」
そうして、俺が王女&勇者軍に戻ると、軍の斥候から報告が来る。
「新魔王軍と真魔王軍、街の北側2キロ先で交戦中」
もう、始まったらしい。シュペリアの街中でなくてよかった。
「わかった、俺は戦地へ先行する。ベアトリスとタプンツェルは放屁ガスで窒息死しない程度に距離を詰めきてくれ。それと、真魔王に金玉を潰されないよう、男の兵士は後衛で移動するように」
真魔王が、玉潰しのセィソだと、初めて知ったのか思い出したのか、男兵士達は股間を押さえていた。
「私が馬車を操縦します」
俺が乗り込もうとすると、スケルトンメイドがやってきた。
「戦地だぞ」
「私とスケルトンホースなら、タマタマもありませんし、放屁ガスで窒息することもないですから」
「なるほど、よろしく頼む。だが非戦闘員なんだから、無理はするなよ」
「骨の私に、そこまで気遣ってくださるなんて」
「あとで、恥骨マッサージもしてやるよ」
「あぁん♪それじゃ、行きますよ。勇者様」
「おぅ」
そうしてスケルトンホースが引く馬車は、ガラガラと音をたてて戦地へと向かった。
とんでもない姉妹喧嘩ですね。
いや、全部ハゲ勇者が原因なんだけどwww




