玉ゲッター娘に、勇者はたまげったー
「ちょっと、なんやコレ。傷が全快しとるやん」
驚愕の声に俺は起こされた。もう、朝日は出ていた。
差し込む光が、彼女を照らす。ナイスバディ♪おおきなたわわが二つ♪
「ん?あぁ、下着くらい着ろよ。アッチむいてるから」
俺は、脱がせた服を指さした。彼女の装備品も服もボロボロだったが、下着までは破れていなかった。
「おっ?せやな?アンタが助けてくれたんか?」
悲鳴でも上げるかと思ったが、あっけらかんとした訛り口調が返って来た。異世界転移前の日本の関西弁に聞こえるから不思議だ。
「すごいやん。斬られた傷も、ちぎれた腱も、折れたアバラも治ってるやん」
下着を着ながら、自分の身体のチェックをしてるのだろう。
俺もベッドの毛布の中で、もそもそと下着を履いた。
「急いで治療しなきゃ本当にヤバかった。命を助けるための緊急措置だから……その、いろいろ仕方ないと思って勘弁してくれ」
「なんや?裸で抱き合ってたことか?ん?声出すと喉がイガイガするし、ちょっとお尻の穴痛いし、前も……って、アンタぁああああ。ウチに何したんや」
「すまん。助けるために、ナニしました。医療行為としてです」
「上、前、後……全部かっ」
「はい、怪我が酷かったので、そうしました」
「初めてやったのに……こんなハゲたオッサンとやなんて、でも命には代えられへんし」
少しショックを受けていたようだ。お前なんかとヤルなら死んだ方がマシとか言われたらどうしようと思っていると。
「って、ん?ハゲ?昨日の夜光ってたし……まさか?アンタって聖女一行の禿頭勇者のおっさん?」
「そうだねぇ。禿頭勇者なんて言われてるね。今のスキルは、回復役の聖女が大怪我した時の、とっておきなので。黙っててくれるかな」
自分用に譲渡したとっておき秘密スキルを、他の女に使ったとなれば、またあの聖女は嫉妬で怒り狂うだろうし。
「ちょっと前まで、ウチもパーティに加わろうと思っててんで。でも解散したって聞いてんけど」
「ああ、聖女が失踪して離脱中でね。他の事情もあって解散したんだよ。そして今、俺は、魔王討伐をいったん中止して、聖女探しの旅をしている」
「そっかー。でも魔王やったら昨日死んだで」
「は?どゆこと?」
「聖女&勇者パーティが解散して、魔王軍が前進したのは知ってるんか?んで、聖女&勇者パーティのいない人類軍なんて簡単に蹂躙できるやろうから、魔王も前線視察に来てたんや」
「前線に来たからって、俺達、聖女&勇者パーティ抜きだと、人類に魔王軍は強すぎるだろ?」
「せやからな、ウチが殺した」
「なっ、なんだって!?」
仮に1対1であったとしても、たかだかスケルトンに苦戦していた盗賊の女の子に、魔王が倒せるとは思えない。
「ウチのスキル使ったんや。強力やで……特に男にはなぁ」
「スキル?どんな?」
全然わからない。
「せやなぁ、アンタは命の恩人やし、極秘スキルでウチの命助けてくれたし、教えたるわ……『金玉瞬間移動』」
フンッ という静かな音が鳴ったかと思うと、彼女は親指と人差し指で、ドングリのような大きさのピンク色の肉塊をつまんでいた。
「これ、なんやろな?」
さっぱりわからない。
「なんだ?それ?」
「自分の股間、触ってみぃ?何か理解できるわ」
俺は、自分の股間を触った。
「ない、二個あるハズのものが一個しか無い。片方しか無い」
股間にはタマタマがあるはずだ。しかしタマしかない。
つまり、彼女がつまんでいるアレは……
「これ、さっきまで袋に入ってたアンタのタマGETやで」
タマゲタって、洒落にならない。
「おいっ、返せ。元に戻せ。俺のタマ……」
「大丈夫やって。焦らんでええ、もうちょっと見とき」
いや、タマ取り出されて焦らない男はいないだろう。だって男だもん。
仕方がないので、彼女の様子を見る。
ガラガラガラ……彼女は、空いてる手で窓を開けた。
そうして、ポォオオオイっと投げやがった。
「おッ俺のタマァああああああ」
「これが、ウチの最強スキルや。『金玉大爆発』」
ちゅどぉぉおおおおん!
窓の外では、俺のタマが大爆発した。
「きゃぁああああ、おッ俺のタマァああああああ」
思わず悲鳴を叫んでしまった。どうしてくれよう、片タマになっちまったじゃねぇか。
「なんや、泣いとるんか。男って大げさやわ」
「男だからだよ~シクシク」
「大丈夫や、ゆうてるやんか。『金玉蘇生』。ほれ、股間触ってみぃや。」
「なっ……ある。あるぞ。ちゃんと二つ」
俺は、空席となった片方の玉座に玉が再び座っていることを確認した。
「よ、よかった……」
感極まった俺の目から水滴がしたたり落ちる
「べっ、別に、もう泣かんでもええやろ。よしよし」
「バッキャロー、いきなりタマ取り出されて、投げられて、爆発させられた男の気持ちになってみろっ」
「そんなもん、ついてへんから、わからへん……女の一句」
誰がキンタマ爆破について一句(5・7・5)詠めと。
「そんでなぁ?袋に2個入ってる状態で、神経から切り離さず両方大爆発させたら、どうなると思う?」
「魔王でも死ぬぞ……男だったら」
「せやねん、だから魔王も男やったから、死んだんや」
魔王討伐は、昨日の時点で完了したらしい。
だったらさ、俺、勇者だけど、いらないよね。
人間、あせると、語彙数が減りますね。
「おッ俺のタマァああああああ」
大切なモノなので2回言いました。
「そんなもん、ついてへんから、わからへん」
現実世界では、金的蹴りをされて痛がる男に
蹴った女が詠む句だったりしますね。
くっそ、あのアマ、加減なしに蹴りやがて。
ローファーの革靴って痛いんですよ。