40 VS折紙アレン②
Another story:綾織ナズナ
■SIDE:綾織ナズナ
「本当に、お前はそれでいいのか」
折紙アレンは静かにそう言った。
なんで?
早く終わらせたらいいじゃん。
あたしなんて、シオンには及ばないし、アレン君の相手としても相応しくない。
まぐれでここにいるだけなのに。
なんで、問いかけるの?
「お前にもなりたいものがあったんだろ」
ないよ。そんなの。
小学校は楽しかった。友達が沢山いて、人生がいつも鮮やかだった。
何も考えなくて良かった。
中学に入って、周囲が将来のことを考え始めた。
あたしは今のままがずっと続くって思ってたから、あんまし気にしてなかった。
でも3年生になった時にはみんななりたいものがあって、あたしは取り残された。
人生というセーブのないRPGは、先行者利益にまみれて、育成を見失えば、八方塞がりになる。
「あたしは人を助けたいわけじゃなかった」
アレン君はそれを黙って聞いていた。
別に誰に話してるわけでもないけど。
「あの日、浅倉シオンという光を見て、それがあたしのなりたいものになった」
「あいつは俺の命の恩人だ。お前にとっても同じなんだな」
わかんない。そうなのかな。
「でも、彼女がここにたどり着くまでに何を代償にしたのかを考えた時ぞっとした。明るい青春も、大切な友達も、時間や心もかなぐり捨てて、たったひとつのこの場所を選んだ。……そんな人と自分を比べようなんて、自分に嫌気がさす」
こんなことを誰かに吐露したってなんの意味もないのに。それでも折紙アレンは黙って聞いていた。
「俺は授業でお前の魔剣技を見た時、俺を倒せるとしたら姫野かお前だと思った」
「──え?」
「幻影への変身。簡単に言えばコピー能力。だが、ことはそんなに簡単じゃない。見ただけで他人の能力をミラーできるなら、それができるだけの地力がなければならない。そうでなければそれは下位互換の偽物だ。でも予選でお前はシオンの技を完全にコピーして見せた」
「見てたんだね」
「少なくとも不刃流が使える浅倉シオンの業をコピーできるお前に、不刃流が使えない道理があるのか?」
「あっ──」
「敵に塩を送るのはここまでにしよう。シオンはいつも言うんだ。戦うのなら全力でと。お前がそんな腑抜けた顔で戦っていたら、全力の出しようもないだろ」
言い方は突き放すようだったけど、違う、彼はこう言いたいんだ。
しゃんとしろ、って。
できるかな。あたしに。
魔剣を持った状態での不刃流なんて、聞いたことない。
でももしできるなら?
不刃流単体のアレンよりも手数が増やせる。なにより、薙刀というリーチがある。
……いけるかも。
あたしはぐちゃぐちゃになったお腹に、魔力を流して代謝を加速させる。シオンが言ってたのはこういうことだったんだ。不刃流はその工程に慣れてるから回復が簡単だ。
遠くに落ちた薙刀を見つめ、手をつく。膝を曲げて、伸ばす。腰をあげる。
歩く。倒れそうになる。踏ん張って踏ん張って、薙刀を手に取る。
落としてごめんね。備前伝。
深呼吸。すーっ、はー。
構えは八相。関節をちゃんと決めて、折紙アレンをぶった斬る姿勢へ。
断層から、いつもと倍の魔力を引き出す。不刃流を使うのに身体に流す分。
そして、魔剣技をフルスロットルで使う分。
憧れてるだけなんじゃ超えられない。
シオンは誰より心が強い。
あたしはどうやったら超えられる?
あたしには友達がいる。
「──だよね」
それを活かさないでいつ使うんだ。
あたしは、詠唱を始める。
「幻影への変身。形態移行──利己的な遺伝子ッ!!」
加速しろ。
「第一段階──終わりのない衝動 Gravity──」
薙刀に重力選択権が付与される。
もっと、もっとだ。
「第二段階──不刃流二式。限界無しの加速技巧──」
全身の加速を感じる。軽い。軽い!
でも足りない、超えるんだ。
「第三段階──東雲流抜刀術致命的な接吻──」
薙刀が変形し紅色のパトリオット2000に変わる。砲身には薙刀がつき、銃剣の様相を呈する。
「第四段階──東雲流抜刀術──彼岸花」
八相から抜刀姿勢へ、コンマ5秒で移動する。
「……マジか」
折紙アレンのそんな顔が見れて、大満足だよ。でもまだ足りない、ここで君を倒す。決勝であたしがシオンとやるッ!
それだけは決まってるんだ!!!
あたしは抜刀から繰り広げられる弾丸を音を超える速さでぶっぱなす。
「つながる心が、あたしの武器だッ!!!!!」
──SMAAAAAAAAAAASH!!!!
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