表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
358/372

301 世界がひとつに戻った後に

 すっかり髪の毛が銀灰色になったロアは、半透明の黒目が見えるほどにうっすらと目を開いた。彼は酷い頭痛の気配を側頭部に感じたが、その実、身体における痛みなどはほとんどなかった。天井の模様に覚えがある。


「ポップの、部屋……?」


 彼の想像通り、そこはポップコーンの私室兼医療部屋だった。だが、ポップの姿はなく、代わりにそこには、見慣れた女の子がいた。


「寝坊ですかロア。いい御身分です」


 そんなジョークを怪我人に言えるのは、否、ロアにだけは言えるのは、一人だけだ。セナ・オーブリーはロアに向かって飛びついた。ロアに痛い所がないとはいえ、セナも人間であるし、そこそこ重く、ぐえーっと声が出る。


「今、重いって思いました?」

「思った」

「サイテーです」


 くすくす笑うセナを見て、ロアはようやく、戦争は終わったんだなと感じた。その安堵も束の間、彼はデルタの事を考えていた。それがさっきなのか、いつなのかはわからないが、デルタに告白をされた気がするのだ。


「なあ、セナ。デルタがどこにいるか知らないか?」

「デルタならあなたの事つきっきりで看病して、今は寝てますよ」


 おむつを替えるのもデルタがやったと聞いて、ロアはかぁっと熱くなった。恥ずかしい限りである……。


「デルタにはどうお返事するんですか?」

「考えてるんだ。多分答えはもう出ているんだけど」

「そうですか。でしたらよかったです。私の親友を泣かせたら承知しません」

「それは答えを限定しているのでは……」


 ロアはたじたじするが、セナにとっては真剣なことである。ともあれ、そこまでロアを責める気でもないし、ロアがデルタをこっぴどく振るような人間にも思えないので、それはセナなりの優しさだと言えるだろう。


「じゃあどう答えるんです?」

「キミには教えない。言うべき相手に伝えるよ」

「百点の解答です」


 セナはそう言うと、ベッドの端からぴょいと跳ねた。


 降りて、振り返って、微笑んだ。


「終わりましたね。全部」


 その言葉は、優しさに包まれていた。ゴールデンゲートブリッジでの決戦は、ようやく終わったのだ。それを改めて理解して、肩の荷が下りる。


「でも、まだ終わってない」


 セナは不思議そうにする。


「僕らはまだ、シャンバラを歩いてないだろ」


 そう。門を開けて、その先を見ただけなのだ。まだ、踏みしめてはいない。


「ですね。まだまだです!」


 ふたりの探検家は、そう言って、拳を突き合わせ、次なる旅路を思い浮かべた。

貴重なお時間を割いてお読みいただき誠にありがとうございます。

お気に召しましたら☆☆☆☆☆からご評価いただけますと幸甚です。

ブックマークも何卒よろしくお願い申し上げます。

ご意見・ご感想もいつでもお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブクマ・ポイント評価お願いします!

同作者の作品

黎明旅団 ─踏破不可能ダンジョン備忘録─

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ