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260 黎明|或る者の覚悟

 セナとロア、そして重傷を負っているサリンジャーは遊撃部隊として敵の隙を狙っていた。しかし、その敵というのが、数えきれないほどの大量の大剣を宙に浮かせる、突如現れた破格の女であるので、時機が無い。


「あれほどの能力──いったいどれほどの代償を払ったのだろうか」


 ロアが真剣な声でそう呟くとサリンジャーはさっと否定した。


「相手はファントムだ。奴ら自身の能力なんだろう。アタシら借りるだけの人間とは違って、素の能力値がバカ高いんだ。冗談じゃない……」

「ですが、あれほどの量の剣を操るとなると、動きが煩雑で思考を割くリソースが個々で弱まるのでは?」


 セナの良い分ももっともだ。しかし、敵方に居る魔剣の女──剣聖オリガは魔剣の一本一本を、全て指の様に扱う。今はまだ緊張状態が続いているが、剣聖オリガが腕を一振りすれば、一個大隊が鏖殺される。火を見るより明らか。


「黒影が動き始めたな──。本陣と同時に動いたってことは、あくまで先陣を切るつもりはないってことか。ラウラがフロイトにやられでもしたら、黒影は主戦場を置き去りにしてラウラ救出に動くだろう」


 サリンジャーの見立ては正しい。


「それは……。黒影という部隊の方々は黎明旅団などどうでもいいと思っているんですか?」

「セナ、それは逆じゃないか?」

「え?」

「黎明旅団、どころかこの大陸オラシオンで最強の術師であるラウラ・アイゼンバーグが万が一負けるようなことがあるなら、それはもう旅団どころか人間の負けだよ。それを防ぎたいんじゃないかな」


 ロアの考えにサリンジャーは首肯した。


「黒影は元々、世界各地でラウラが拾って来た子ども達なんだ。ロアが甲板で受けたような訓練を十年以上こなし、いくつもの極地を無名で踏破した実績もある。ラウラは、自分が死なない最低保証を持っているわけだ」


 遊撃隊はなおも様子をうかがう。戦火はまだ上がらない。


「ラウラが死ねば、文字通り終わりだ。ラウラは勝利の象徴となることで治安維持をしていることを正しく理解しているし、それを守ろうともしている。黒影の連中も、敬愛を以てそれを実行に移すんだ」


 ロアは少しだけ感激した。ラウラ直下の暗殺部隊との噂を小耳に挟んでおり、見た目も黒装束だったので、血なまぐさい部隊だと思っていた。だが、今聞いたのが真実なら、黒影に背中を預けられるとも思った。


「ラウラが拾った子ども……。ってことはスイレンの友人も?」

「ああ、黒影の二割くらいがアマハラストリートギャングだな。スイレンは秘書として後方支援しているからあそこにはいないが、彼女の友も多くいる」


 皆それぞれが己の胸に信念と意志と覚悟を抱いている。ロアはその事実に打ち震えた。この戦い、決して負けない。彼自身も、そういう覚悟を決めて。セナと目を合わせる。彼女もまた、燃える目の奥の灯を輝かせている。

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