表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
267/372

226 西地区|永崎桐生戦・終戦

 ぼろぼろになった建物、地面を横に、桐生カノンと永崎ナギサはのんきにサンドイッチを食べながら話をしていた。彼らが派手に暴れたせいで、こちらに人は来ず、悠長にしていてもさして問題ではなかった。


「俺は滋賀県の特異点ゲートを守っていた。魔刃学園卒ではないが、そこそこ優秀な自負はあったんだ。だが、剣聖パラディンはいつでも東京の守護を優先した。滋賀が百鬼夜行に遭っても、見向きもしなかった」

「──魔刃学園を恨んでいるわけでも、剣聖パラディンを恨んでいるわけでもないんでしょう?」

「なんでそう言い切れる」

「なんとなく。力を持つ者には相応の責任がある。大いなる力には大いなる責任。でも、剣聖パラディンはそれを出来なかった。シオンの時も、力を持つ者が勝手に世界を作り変えた。引っかかっているのは、そこなんでしょ」


 桐生カノンは永崎ナギサと対話をする中で、確かに自分の中の感情が整頓されていくような感覚があった。大いなる力を持つ者に責任を問いたい。それは自分が持たざる者の証左であって、見苦しいとさえ言える。


 だが、そんな彼を永崎ナギサは受け入れている。


「私はいつも、教室で大きな声を出している人たちに委縮して、その圧力の中で浸透し、生きてきた。だからね、規模とかそういうのは違うけど、わかるんだよ。自分が無力だと知った時、人がどれだけ絶望するのかを」


 それは永崎ナギサなりの諦念であったが、桐生カノンは言い得て妙だと思った。スクールカーストの話など、どこにもつながりはないが、どこか似ている。誰かを助けるということは、誰かを助けないということ。


「その選択権が、いつだって強者にあるのが、許せなかったんだ」

「私はその心を醜いとは思わないよ」

「その為に誰でも殺すんだぞ、俺は」

「嘘だね。あなたは悪人しか殺さないはずだよ。記録みたもん」

「なに?」


 永崎ナギサは浅倉シオンを狙う、つまり一枚岩から外れた人間をよく観察するようにしていた。恐怖政治や監視管理をしたいわけではなく、浅倉シオンを打倒するにふさわしいかを独断で調べていたのだ。


 大義のない人間にシオンが殺されるのは避けたい。シオン以上に世界を助ける気持ちがある人間になら、構わないと彼女は思っていた。だからこそ、桐生カノンは決して悪ではないし、紛い物ではないと知っていた。


「……じゃあ、俺は初めからここにおびき寄せられてたんだな」


 桐生カノンは清々しい気持ちになった。浅倉シオンには勝てなかった。外堀は深くて広い。もう任せてもいいという諦念すらあった。だが、それは悪い意味の、負け犬の諦念ではない。自分には、別のすべきことがある。


「これを持っていけ」


 壱級の資格証。


「お前は表側で浅倉シオンを助けろ。俺は裏側から浅倉シオンを助ける」

「ふふ。なんで助ける側に回るの?」

「お前みたいな奴に慕われる奴なら、信頼できるからだ」


 浅倉シオンがその当時の剣聖パラディンだったのなら、きっと滋賀にも急いで駆けつけてくれたのだろうな。桐生カノンはそう思いながら、気絶した。その気絶は、不思議と嫌な感覚はしなかった。

お読みいただきありがとうございます!!!


続きが気になった方は☆☆☆☆☆からご評価いただけますと嬉しいです!!


毎日投稿もしていますので、是非ブックマークを!


ご意見・ご感想もお待ちしております!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブクマ・ポイント評価お願いします!

同作者の作品

黎明旅団 ─踏破不可能ダンジョン備忘録─

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[一言] 死ぬまで、問い続けるのだ。 それがシオンが本当になすべき事かを――。 むしろ問い殺す気持ちで付き合い続けるのだ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ