211 一般アーツ概論
「全員席に着けー。これ以上大きな声は出せないぞ」
眼帯教諭改め、グラサン教諭は、教壇に立って教室を見回した。彼の授業は他の元七年生が開く講義のよりもぶっちぎりで人気が高い。なぜなら彼は元魔刃学園の教師であるし、元剣聖ですらあるからだ。
彼はいつもの講義形式で授業を開始した。この講義は人気なので毎回定員いっぱいまで人が入る。だから彼は一日に一回はこの講義を開いて受講できる人数を増やせるようにとつとめている。中にはリピーターまでいる始末だ。
「では一般アーツ概論の講義を始める。初めにアーツとは何か。それは元魔剣師の君たちにはわかりづらい概念かもしれないが、簡単に言い換えれば不刃流と似たような業だと思ってもらっていい」
マギに満ちた時空の隙間、断層を渡る方舟。そこで騎士たちは新たなる力アーツと出会う。それは魔剣という媒介無しに異能力を発する力。過去には不適格な手段と呼ばれたその技にも似た異能の力。
「もう使ったことのあるものがほとんどだと思うので、使い方について教えるつもりはない。ただ、アーツを体系的に学ぶことで、より自分の力と向き合い、戦闘局面で、正しい判断ができるようになる。そうなって欲しい」
グラサン教諭はアーツの基本的な構造について解説した。アーツとはマギを皮膚から摂取し、体内で循環させ、人に起こせぬ理を起こすもの。そしてその能力にはいくつかの系統があるのだ。厳密には5種類の系統がある。
「載、深、翠、遷、創」
さしすせそで覚えれば簡単だとグラサン教諭は言った。実際、いざというときに覚えやすいようにそうしているのだが、さしすせそが覚えやすいか否かは人それぞれな所があるので、何とも言えない。
「載は自らにマギを積んでゆくイメージだ。ひたすらに己を強くし強化する。その身一つの徒手空拳で戦う者がこれであることが多い」
深は己の内側を探求せし者が手に入れるもので、マギで身体を変化させたり、異形化することが出来る。それでも己を見失わない者だ。
「翠はマギから離れた状態で感知、操作を行うことが出来る。索敵や大規模なマギ操作には必ず必要となる人材だ」
遷はマギの性質を変化させる。他者のマギも、己のマギも操る、直接的な干渉系の能力だ。これは異質であり、相手にしない方が良い。
「創は中でも最も難しい。それは、マギから物を創り出すこと自体が異質であり、載も深も翠も遷も必要とするからだ」
そこで、ひとりのリピーターが手を挙げた。グラサン教諭はため息をついて彼女を指す。
「じゃ、私の三万桜って、超すごい?」
創のアーツ使いである八神ライザは人に教える勉強をするために通っているが、その実、創がすごいと褒められたいだけでもあった。
グラサン教諭は無視して進める。それよりもアーツの話が重要だ。
統一戦では、これらの相性が、きっと最も重要になるだろうから。
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