表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/28

7,呪具

やっぱりさりげない頭脳派、ですね

 「あれは呪具ですね。騎士の鎧に仕掛けられていたのでしょう。他国の3人との間にそれぞれ鎖のようなものが見えます。……おそらくダメージが鎖でつながった騎士のほうに移るものなのでしょう」

 魔導師長さんがそう推察します。


 「待ってください!その3人がそうならもう3人はどうなんですか?あの方たちにもなにか」

 みうが魔導師長さんに詰め寄ります。

 「あの3人も他国の3人とそれぞれ繋がっています。こちらは……糸でしょうか。糸のようなものが手足と頭から伸びています」


 会場の歓声が響きます。騎士3人がレンさんに向かって剣をふるいます。その剣には殺気がこもっているように私には映ります。なんで?

 「お姫様、騎士たちの行動はおかしいです。昨日は他国の3人と戦うために対策を練っていたはずなのに……これじゃあまるでみんなでレンさん1人を倒そうとしてるみたいじゃないですか」

 みうの言葉通りです。この舞台自体がレンさんを倒すための、もしかしたら殺すための場所、ということ?

 「魔導師長さん、わたくしも同じ意見です。どうなんですか?これは一体なんのつもりですか」


 「私にも何が何だか。この者たちのみなのか、あるいは騎士団全体なのか。とにかくこのままではまずい」

  

 レンさんには未だ攻撃は当たっていません。ですがレンさんの攻撃は確かに当たっているはずなのに騎士3人の攻撃は鋭さを増していきます。

 「痛みを感じていないのですかあの方たちは。鎖は他国の3人のダメージを肩代わりしているだけ、なんですよね?」

 私の問いに肯定し、魔導師長さんは続けます。

 「彼ら3人はおそらく糸から魔力を送られています。そしてあの糸、おそらく――」


 「おおっと、すごい動き、まるでからくり人形のようだ。自分自身に自動操縦の術でも使っているのか、とんでもない動きだ」

 実況が聞こえてくる。そうです、「からくり人形のよう」ではなく――


 「からくり人形そのもの、ということです。彼ら3人が使い捨て、もう3人も身代わりで使いつぶす。……こんな時に団長は何をやっているんだ」

 魔導師長さんは小さい魔法球を取り出し騎士団長さんと連絡を取ろうとしているようですがつながらないようです。

 

 「お姫様、見てください、闘技場が」

 みうの言葉に会場を映した魔法球に目を移す。闘技場の安全装置が止まった?なんで?

 「ってみう、あなたもしかしてさっきからの全部見えているの?」

 「はい、魔法の力の流れ、みたいなものですよね。私も驚いているんです」

 みうは冷静に返答してくれます。

 「昨日はぼんやりとだったんですが、今日ははっきりと見えます。多分これが「みう」になった、ということでしょうか」

 まって。レンさんが言っていた「別の存在に変えて」ってこのことなの?ただ見えてるだけじゃないわよね?


 「あっ、お姫様、レンさんが1人壁に飛ばしましたよ。残りは2人、ってなんで?」

 私も魔法球を見つめます。2人を相手するレンさん目掛けて壁にぶつかった1人が文字通り矢のように飛んできました。

 危ない!私はとっさに目を閉じてしまいます。

 

 数秒間の後魔法球越しに風が吹きつけられます。

 「お姫様、レンさんが糸をきりましたよ!」

 みうの言葉で魔法球に目を向けると、右手で床に押さえつけ、左手には開いた扇が握られています。あれが陛下から提供されたという武器ですか。確かに手足と頭の糸もきれいに切られているようです。


 「おおっと、さすがに動かない。どうやら会場の機能が働いていないようなので私が判定します。これは戦闘不能です!」

 実況の戦闘不能判定に合わせ、残りの糸が付いた2人がレンさんに飛び掛かります。ですが、後ろに飛び退いて3人が衝突している間に2人の分の糸も切ってしまいます。


 「ああっと激突、飛び掛かった2人これはどうだ……動きません。戦闘不能!戦闘不能です!」

 会場は歓声に包まれます。


 「すごいです!すごいです!あの人怖そうなだけじゃないんですね!」

 みうも興奮しています。わかります、あれはかっこいいです。


 魔法球が彼の声を拾います。

 「もう少し取っておくつもりだったが、このままではこ奴らも死んでしまうのでな。……さて後の3人はどうするか」

 残った鎖に繋がれ動かない騎士を見つめながら扇を閉じ、胸の前に構えます。


 「まさかこの騎士たちをかばいながら戦っていたとはな。全くとんだお人よしだな。こいつらは自分から俺たちに力を貸してくれるように頼んできたのさ。だからこうやって有効活用している」


 どうゆうこと?騎士自らこの状況に手を貸したということ?

 「お姫様、以前の巫女の話は知っていますか?」

 私がいいえ、と首を振るとみうは続けます。

 「以前の巫女は優勝者の王国騎士と任につく前に賊と戦って行方不明なのです。その騎士が賊と共謀し巫女を国外へ連れ去ろうと計画したようですが、その騎士も捨て駒だったようで警備兵がついた時には騎士だったものの跡しか残されていなかったようです」


 偶然か、魔法球に映るレンさんが他国3人の黒い魔法のような攻撃をかわしながら続きを話してくれます。

 「前回の件で信用を失った王国騎士をどうやったか知らないが唆し、今度こそ巫女を手に入れようということか。国の資料には前の巫女が国境は越えていないことは書かれていたからな」

 そんなことまで調べていたんですか?魔王に探偵まで混ざってきてます。


 「そうだ大正解だよ。だが、いつまでもかわしていていいのか?もうすぐ使い果たしてしまうぞ」

 彼の視線の向こうにいる3人の騎士が今にも倒れそうな様子です。鎖を黒い霧がつたいます。もしかして命をつかってる?


 「おしゃべりで助かったよ。確認は済んだ」

毎日覗いて下さる方、本当に感謝しています。励みになってます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ