3,みう
ひと月の修練を終え巫女習得の儀式に向かう少女こと私。
翌日より開かれる闘技会の優勝者と国のための任につく、のですが、
陛下に優勝を期待されているのは、今朝空から降ってきたばかりの謎の青年レンさん(かっこいい!)。
なんだか堂々としているけれど、とっても強い!そして頭がいい!
そんな感じで始まる私の物語
私は何をするって?今回の私は巫女の力?を披露しますよ!
~・=・~・=・~
「ありがとうございました」
「ああ、お勤め頑張ってきな。期待しているよ。」
「はい、失礼します」
私と宮仕えの子の2人は部屋を出ます。無事に私巫女になれましたよ。実は前から巫女だったようなのですが。
そんなことはいいです。ようやく彼女に名前を聞けます。もう巫女なのだから大丈夫でしょう。
「あのですね、私は巫女になれたので、もう妨害もできないと思うので……あなたの名前、私に教えてもらっていいですか?」
私は意を決して言葉にしました。そうしないといけないような、そんな感じがしたので。
「はい、お姫様。……すみません。私には名前はありません。私は巫女となられる方をお守りするためにここにおります。ですから名前はないのです」
……え?
「何を言っているの?だってあなた以外にも宮仕えはいるでしょ?わかりにくかったりとかするじゃない!」
「そんなことはないですよ。私が一番の新入りですので、おい新人、とかそこの宮仕え、とかで問題ないですし」
「いや問題あるでしょ!」
「それにですね、もともと私に名前がないので。そういうものなんです」
「いや、そんなわけ」言いかけて気づきます。確かめる方法があると。
私は彼女に「ちょっとごめんね」と断りを入れ、彼女を見て[解析]と念じます。
確かに名前が浮かび上がりません。職が護衛になっていますが、もしかして食事も護衛の一環?
あとは、隷属先がこの国になっています。
「あのね、宮仕えちゃん。あなたは私の護衛なの?あなたは……その……隷属先ってどういう」
彼女が驚いた表情をします。
「すごいですね、さすがは巫女様です。――そうですね。私は毒見役で、いざとなったら身代わりになる準備のできている宮仕え、です。そのためにお城のほうで買ってくれたんだそうです」
今の彼女は少し残念そうな表情に私には見えます。
彼女は続けて言います。
「前回の巫女の時に何か問題があったようでして、女の側仕えが欲しかったらしく拾ってもらえたんです。ですから感謝しているんですよ、私」
私は何にも知らなかったんですね。餌付けして姉になった気になって、名前がないことも知らなかったくせに。最低ですね。
「本当の名前があったりとかはないの?」
「仮の名前はあったりしました。私が育ったところで私と入れ替わりで出て行った方の名前です。だから本当の名前はないんです。私にとっては、お姫様が呼んでくださる、宮仕えちゃん、が私だけを呼んでいる私だけの言葉のようで。それでいいんです」
まるで宝石箱に宝物をしまう様に、大切に私の言葉を受け止めてくれていたんだ、と目の前の彼女から感じることができました。
――だったら今の私にできることを。
「ねえ、私があなたに名前、プレゼントしてもいいかしら?巫女の加護付きよ」
重い空気を振り払うように少しおどけて、でもとても真剣な私の提案。
「本当にいいんですか?私ずっと使います!本当の名前にできるかはわかりませんが、ずっと」
本当にうれしそうに、少しだけ寂しそうにそう答えてくれた。
そう普通は無理なのだ。好き勝手には変えられないはず。
ですが、精霊さまが言っていました、すぐに役立つ、と。多分このことなのでしょう。
[解析][改変]この2つがあればおそらく。
「私に任せて」
目を閉じ深く深呼吸する。私の周りを光が包む。
彼女の感嘆の声が漏れるのが聞こえます。本番はここから!
両手を広げ彼女を包むようにし、ゆっくり目を開きながら
[解析]
名前がない彼女の情報が表示される。ここに
[改変]
私が思いついた名前を念じる。
「なんだか体があたたかいです。背中に羽が生えたような、そんな感じがします」
彼女の言葉に安堵し、もう一度[解析]してみる。
彼女の情報に「みう」が表示されている。成功です!
「成功しましたよ、勝手に決めちゃいましたけど。あなたの名前は「みう」です!忘れないでくださいね」
了承もとらずに思いついた音の響きで決めてしましましたが、押し付けます。
「みう、みう、みう……私の名前。みう、みう……」
幾度かの復唱。どうなのかな?
「ありが……ありがとうございます。お姫様、私今日が今までで一番の日です。本当に、本当に……」
涙で言葉が出なくなるほど喜んでくれて。
「私のほうこそありがとう、みう。この名前、巫女の加護が付いてるからきっとこれからも大丈夫。あと、私の名前は、ひな。改めてよろしくね、みう」
右手を差し出す。
「ひな、さま、ですね。わかりました。こちらこそよろしくお願いします、ひなさま!」
二人して笑いながら握手した。ありがとう精霊さん!感謝の思いよ届いて――
「話は終わったか、あんたがここの奴らの言う巫女さま、だな。俺はレン、明日からの闘技会で優勝する者だ」
――なんかみうといい感じの雰囲気だったのに、だれ?
「陛下に救世主様、なんて言われてつい引き受けたのだが、なかなかに面白そうだ」
レンとは名乗ったけど、誰なのよ。かっこいいけどなんか物語の中の若い魔王、みたいな感じ。
「ひな様、あの方です。私が見た空からの不審者は」
みうの声が聞こえたのか、あいつが少し笑って手を振る。
見るからに怪しい。でもわかる。彼は、なにか他の人とは違う感じがする。
次回 レンさん戦います!