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2,宮仕えの子

 扉がノックされ、

 「失礼します。お姫様、準備のほどはいかかでしょうか」

 一度巫女習得儀式の準備物を持ってきてくれた宮仕えの子が戻ってきました。


 「はい。確認をおねがいできますか?」

 私は彼女を部屋に招き入れ、服飾の確認を頼みます。自分では目の届かないところなどは彼女に見てもらうのが一番です。


 「素敵です!何も問題はありません!」

 少しうっとりとしたような顔を見せましたが、すぐに笑顔いっぱいで答えてくれます。


 「では行きましょうか」彼女を促すと、

 「はいっ!」と元気のよい返事です。


 

 私たちは最後の儀式を行う場所に向かって歩きます。

 場内は空からの不審者騒動があったにもかかわらず、明日から開かれる闘技会に向けての点検がここ数日と変わらないように行われており、その慌ただしさは昨日までとそう変わらないように感じます。


 程よい雑音。だからなのか考えてしまいます。

 私がここを発った後も、彼女は元気に過ごしていられるのか。


 私がここに来た当初から食事は彼女と2人で私の部屋でいただいています。何やら以前巫女修練機関によからぬことがあったから、とのことで。

 彼女はあまり満足な食事をとっていなかったようで――毛や肌が荒れているように見られます――、小柄な私には多い食事を少し、彼女に食べてもらっていたのです。

 

 だからなのか、程なくして彼女は私になつくようになりました。

 私は妹ができたようでうれしくて、ここでの修練の日々も楽しく過ごせたのだと思います。

 

 そんなことを考えている私に、宮仕えの子が話します。

 「お姫様、私見てきましたよ、例の空から来た不審者。少しだけですけど」

 

 彼女は続けます。

 「陛下のところに連れていかれるところを遠目に見たのですよ。とにかくかっこよくてなんだか王様みたいな雰囲気でした」

 「大丈夫でしたか?なにもされていませんか?」

 私は心配して問います。


 「大丈夫ですよ。目もあっていませんし。でもですね、歩いて陛下のもとに行くようになったのは偶然騎士団長のつかう移動の杖が壊れたから、だと他の方が話していました。だからこうやって報告できたので運がよかったです」

 少し得意げに話す彼女の言葉で私の中の不安と緊張が和らぐのを感じます。

 「ありがとう。でもくれぐれも注意してね」

 

 そんな話をしているうちに儀式の部屋が目に入ります。

 「危険な真似はしないで。何かあったら逃げてね。私との約束です」

 私は右手を彼女の前に出します。


 「私はお姫様の宮仕えです。お姫様が巫女になる瞬間がみられるのに逃げたりしません」

 「ええっと、それだけじゃなくて、偵察とか、いろいろです。自分を一番に考えてほしいから」

 彼女の右手を両手で包み無理矢理な形で約束させます。


 

 握った手の部分がなんだか暖かく感じます。私の思い伝わって!


 

 「ありがとうございます。それはお姫様が巫女になってここを発ってから、心の真ん中に置きますね」

 少し寂しそうに答える彼女に私は「今から!」と念を押します。

 うなづいてくれたので私は手を放します。

 「では参りましょうか」

 気合十分、扉へと前進します。


 扉にノックをし、「巫女候補、ただいま参りました」と声をかける。


 扉がひとりでに開き、私たち2人は部屋の中へと入りました。


 

 ~・~・~・~・~

 

 「早速始めるぞ。そこの椅子に座りな」

 私の先生巫女さんが部屋の中心の椅子を示し、私はそれに座ります。

 ここからもほんのり椅子が光っているだけの部屋に思えます。

 宮仕えの子は部屋の入口に待機しているようです。


 「ではしっかりやってくるんだぞ」

 先生が頭の上に手を置く。すると私は急に意識が内に落ちていくような感覚がして――

 

 ~・=・~・=・~

 

 「おぬし。のう、おぬし。大丈夫か?」

 「…はい、大丈夫です。ここは一体」私は座ったまま、ですが白い空間に壁が見当たりません。

 「まあまあそれはよい。それよりもおぬし、ここには巫女を習得しに来たのではないのかい?」

 「そうでした、それで最終試練とは一体何をすれば」


 「まあそうせかすな。そうは言ってもお主は既に巫女を習得しているのでな。今更何かすることもないが」

 「え、そうなのですか?」一体いつから……は今はいいです。なら、聞きたいことを。どんな巫女なのか、とか。


 「お主は日の巫女。光の属性を得意としておるな」

 「光の属性……あの、日の巫女の部分は何なのでしょうか?」

 「お主の名からきているのだろう?光とは最高の相性ではないか、よかったよかった」

 なんかからかわれてます。思っていた試練とは全然違います。


 「からかっとりゃせん。本来私はただ本人が修めたものを納めるだけなのだからな。しかしお主は既に巫女。それに面白いものも持っておる」

 「おもしろいものってなんですか?何も持ってきていませんが」私の顔が、とかですか?


 「顔ではない、お主の[解析]じゃよ。なぜか深くは利用されていないようじゃが」

 「[解析]はじっと視ないと使えないんです。それだと怪しい子だと思われてしまって」

 過去のはずかしい記憶がよみがえるじゃないですか。

 「巫女となったお主が使えばパッと見ただけで使えるじゃろうて。……ふむ、これからは解析、と念じればよい」


 頭に何かが入ったような感覚です。

 「何かしてくださったのですか?ありがとうございます」


 「なあにこれはほかの者が巫女を納める分の代わりじゃな。だが、わしはお主を気に入ったのでな。おまけじゃ」


 再度頭に何かが。今度は体もあたたかいです。

 「[改変]じゃ。[解析]と共に使うがよい。すぐに役に立つ」


 巫女神さんがニカッと笑ったような気がした。声だけなのですがそんな気が。

 「おぬしら二人ならおもしろいことになりそうじゃ。世界を変えてきな!最後に、私は巫女神などではないぞ。この土地の守護精霊のようなものじゃ」

 

 え。私口に出してませんよね。さっきから会話に違和感を感じていましたが、心を読んでいます?

 「お主の顔は、ころころ表情が変わって大変面白かったぞ。また会おう」


 「待ってください、二人って闘技会優勝者の方のことですよね?誰なんですか?つよくてかっこよくて――」

 私の意識が戻っていくのを感じます。あともう少しだけ。

 「光の日の巫女、――ひな」


 私の名前。一月振りに呼ばれる響きに私も何かが変わっていく予感がした。

次の話では、おうじさまが登場します!

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