1,夢
ただの村娘?の少女が、星のおうじさま?な青年と出会うことで始まる異世界ファンタジー
難しい設定をできるだけ省いて楽しく、ドキドキし、たまに胸が締め付けられるけれどそれも愛おしい物語になっていく予定です。
それでは皆さんも物語の世界に意識を送るつもりでご覧ください。
――私が歌う。私と目の前にいる青年に白く輝く光が現れる。
「後は周囲の警戒だけでいい。自分を守ることを優先させれくれ」
そう彼が言いながら駆け出します。
「なめるなよガキが!さっさとお前をヤってその女をいただく!」
大男が取り出した球体のものを飲み込み、アクセサリーを握りつぶします。
大男の周りに赤い光が現れた後、その光を食べていく半透明のガイコツのようなものが現れ、大男に重なります。
「お前、どうなっても知らんぞ」
「構わん、もとより盗賊の身、巫女を手に入れこの国での活動許可をもらうことが叶わなくなったのだ。せめて巫女を我が国で売り払ってくれる」
嫌です、気持ち悪いです、怖いです。
私もたじろいでしまいます。
大男の拳で彼が後ろに下がります。
「闘技場ではこれは使えなかったのでな。これが俺様の本来の戦い方だ。かかされた恥の分、その美形をぐしゃぐしゃにしてやる」
「お前、売り払うだとか顔ぐしゃぐしゃだとか趣味悪いぞ。だが、闘技場で制限をかけていたのはそっちだけじゃないぞ」
そうです最悪です。さっさとやっちゃってください、美形の青年さん!私には顔見えないですけど。
彼が下がった位置から足を振りかぶった体制をとります。空をけり始めたと思った瞬間には大男さんを蹴り飛ばしていました。
「さすがですレンさん!そのままやっちゃえ!」私が口に出します、って、え?
「仲間の気配もない。もう一度歌ってくれ、次で決める」
「はい!」
私が歌うと私と彼に再度白い光が現れる。光をまとった彼が大男の近くに飛んで今度は城壁に向かって蹴り飛ばす。
「すごいです、レンさん!」なぜが私名前を呼んでいます。
この状況は何なのでしょう。横顔は確かに美形だったレン?さんなんて私知りませんし。
大体私が巫女になるのは明日の話で、まだ巫女にはなってなくて。たぶんなれるけど。
「とりあえずあいつを城の兵士に引き渡す。いくぞ」
私のもとに駆け寄り手を伸ばす彼。私はその手に触れようと――。
=・~・=・~・=
ガツンッ
っっ痛っっっいぃぃ
痛いです、なんなんですか、せっかく謎の美形青年と手を取り合えるところだったのに、ってあれ?
ここは私のお部屋です。窓から見える空が少しだけ明るくみえます。
私はどうやら眠ってしまっていたようです。私の前には書きかけの手紙が置いてあります。
『拝啓、お父さんお母さん。お元気でしょうか。
私はこのひと月の修練を終え、明日巫女習得の儀式に向かいます。
そして明後日から開かれる闘技会の優勝者と共にこの国の安寧のための任につきます。
なのでふたりは巫女の親なのだと、自慢してもらっていいんですよ。
そちらの風景もとても良いものだと伺っています。私の役目がひと段落付いたなら2人の新しい暮らしを見に伺いたいと思います。
私』
最後の一行が線でつぶされていて見えません。たしか続きは。
――もしかするとこの手紙が最後になるかもしれません。
余計な心配はかけないほうがいいと消したはずの言葉が頭に浮かびます。
せっかく手紙も検閲されてもいいように教わった丁寧な言葉で……不安を与えないように……。
どのような方とどのような任につくのかはわかりません。また、そうやって旅立って無事に帝都に戻れたものはそう多くないと聞きます。
だからあんな夢を見たのでしょう。あんな願望がたくさん詰め込まれたような夢。
それでもやっぱり。
「私を守ってくれる強い方、できれば素敵でかっこよく優しい方がいいなぁ」
夢の中の彼のような。
本当は闘技会の優勝者の方のパーティに入る、と決まっているので私には選ぶことはできないのですが、心の中で願ってしまいます。願うのはタダです。たくさん希望を詰めておきましょう。
その時、窓の外を光が横切ります。流れ星だったらいいな、偶然にも願っているときだったので少し期待してしまいます。
でもきっと見間違い、朝の光が一瞬遮られただけ。それでも気になって私は窓のほうに向かいます。
私が窓を開けたとき、城門の鐘が鳴らされました。何かあったのでしょうか?このお城が攻められているとか。
そんな考えは緊急を知らせてくれた宮仕えの子の言葉で吹き飛びます。
「失礼します。城門前に空から不審者が現れて、城の者が現在拘束中です。安全が確認されるまでの間お部屋からは出ないようにお願いします」
「城門前に空から不審者が現れて、現在拘束中、でよいですか?聞き違いではなく?」
私は宮仕えの子の言葉を繰り返して確認します。いくら魔法が使える方の仕業にしても大胆すぎます。明日から開かれる闘技会に紛れる方がよほど簡単なはず。今日までのほうが警備の目も多くあるように感じられるので敵襲、ではないとは思うのですが、よくわかりませんね。
「はいそうです。なのでお姫様はお部屋で巫女習得の試練の準備をお願いします。あとでこちらに持ってまいりますので」
そう宮仕えの子は答えてくれました。呪法対策で名を名乗れていないので城の方は皆「巫女見習い」とか「巫女候補」と呼ぶのですが、彼女だけはなぜか私を「お姫様」と呼びます。以前の巫女見習いよりもお姫様みたい、との理由だそうで。
「わかりました。よろしくお願いしますね」
私の返答に彼女はよろこんでくれます。かわいいですね、妹みたいです。ですが私は彼女の名を知りません。これも呪法対策、なのでしょうか?それとも……きょう正式に巫女になれたなら思い切って聞いてみよう。
巫女の言葉には加護がある。私がここから去ってもきっと彼女を守ってくれるはず。
初投稿です。よろしくお願いいたします。