第39話 新たな謎の天体
スカイスフィア2はゲートを潜り抜け、チャラワン星系に到着した。ゲートそのものはガス巨星の衛星軌道を周回している。また、ガス巨星の周囲にはX金属を含む小天体が環を形成しているものと考えられている。
スカイスフィア2は、ゲートから距離を取り、ガス巨星の周りを周回している小天体群が形成する環に接近していった。環といっても、環を形成する小天体の密度は高いわけではない。
X金属捕集ドローンの隕石の捕集方法は、
0、らしい隕石に対して、ドローンが接近し、X金属レーダーでX金属かどうか判断する。ドローンは操縦者である明日香が対象をカメラに捉えてモニター越しに操縦するため、対象隕石に対してライトを向け照らし出す。
1、対象隕石がX金属隕石なら、対象隕石に向かってネットを広げた3機のドローンが近づき、隕石と速度を同調させてネットで隕石を捕獲する。ネットに捕獲された隕石は、回転エネルギーを失い最終的にはドローンに対して停止する。
2、スカイスフィア2は隕石倉庫のハッチを開き、ドローンはネットを介して捕獲した隕石をスカイスフィア2のハッチに向け押し出す。
3、スカイスフィア2は隕石倉庫内に隕石を収納し、速やかにハッチを閉じ、スカイスフィア2に対する隕石の運動エネルギーが庫内に吸収されるのを待つ。ちなみに隕石倉庫の内側にはハッチを含め緩衝材が張られており、隕石の運動エネルギーは容易に吸収される。
なお、隕石倉庫のハッチの形状は半径3メートルの円形で左右から扉がスライドすることでハッチが開閉される。
スカイスフィア2は環の中に進入していった。スカイスフィア2の周囲にイレギュラーな動きをする隕石は見つかっていない。もし、そういったイレギュラーな隕石がスカイスフィア2への衝突コースを取り接近してくるようなら、自称砲術長である圭一が、レールガンを発射して破壊するつもりである。
「前方にちょうどいい隕石を見つけたわ。距離は15000メートル。X金属隕石ならいいんだけど」
「スカイスフィア2目標に向け接近。
D1、D2、D3リリース、微速前進」
……。
「目標隕石との距離、200メートル。スカイスフィア2、目標隕石との相対位置固定。
D1、D2、D3、目標に接近。3機ともX金属の反応を捉えた。やったー!
ここからはわたしの腕の見せ所ね。向こう側にドローンを回り込ませてっと。
……。
キャッチした」
「「うまい!」」
「さんざん訓練したかいがあったわ。
倉庫のハッチ開放。
じっくり寄せていくわよ。
よしよしよしよし。ここでリリース」
3機のドローンはスカイスフィア2から見て停止し、ネットから隕石がゆっくりとスカイスフィア2の倉庫のハッチに向けて移動を始めた。1分ほどで隕石は倉庫に収まり、ハッチは閉じた。
「一丁アガリ!
次どんどん行くわよ」
……。
順調にX金属隕石の捕集は進み、3時間ほどかけて概算で80立方メートル。1600トンのX金属がスカイスフィア2の赤道部に設けられた縦横6メートル、奥行き8メートルの隕石倉庫に収集できた。
「これだけ集めれば、十分だろう。
明日香ご苦労」
「明日香さん、ご苦労さん」
「さすがに少し疲れたけど、やったーって満足感があるわね。隕石って氷の塊もそれなりにあるかもと思ってたんだけど、1個も見当たらなかった。氷の隕石って表面が反射して、X金属っぽかったら嫌だと思ったけど、ラッキーだったわ。
それじゃあ、ドローンを回収するわね。
と、言っても帰投命令はAlt+Ctrl+Homeボタンで一発なのよ。DORAのときはCtrl+Homeボタンだったけど今回は3機同時だから」
明日香がキーボードを操作すると同時にドローンは機敏に反応し、3機は格納庫に戻り格納庫のハッチが閉まった。
「収集作業は終わったけど、これからどうする?」
「こんなに簡単にX金属を収集できるとは思っていなかった。
真理亜さんの観測もあるから、少し滞在するとしても、この辺りは環の真ん中で小天体が多数浮遊しているから少し移動しておこうか」
「了解。
待って、モニターに何か映ってる。何あれ?」
明日香がモニター上の一点を指さした。そこには球型の何かが浮かんでいた。
「拡大できないか?」
「今やってみる」
「球型の天体か。見た目は完全に真球だな。
縮尺から言って、直径は1.3キロというところか。1.3キロ程度の天体がこんな惑星の近くで真球に近い形状を保っているとはとても思えない。俺にはどう見ても人工物に見えるが二人はどう見る?」
「ちょっと待って。真理亜に言って、天体望遠鏡を向けてもらうわ。
真理亜聞いてる?」
『どうしたの?』
「今謎の天体を見つけたの」
『えっ、また?』
「方位を送るから真理亜の望遠鏡で見てくれない?」
『了解』
……。
『何あれ!? 望遠鏡で捉えたから、そっちでも見えるでしょ?
どう見ても人工物よ。強いて言えば宇宙船』
操縦室の3人はモニターに映るその人工物らしき天体を見て言葉を失っていた。
『明日香、聞いてる? あれは宇宙船よ』
真理亜の声が操縦室に響いていた。
「宇宙人がいたってことか。宇宙人がいたとして、ゲートを作った宇宙人ということだよな」
「その可能性は高いが、絶対という訳じゃない。現に俺たちだってゲートを作ったわけじゃなくてもゲートを利用しているわけだからな」
「向こうは衛星軌道を描いているだけで無反応に見えるけど、どうする? 形が人工物に見えるだけで大型の隕石かもしれないわよ」
「表面がツルツルで真球に見える形状の物体が大型隕石だとは考えづらいぞ」
「もしあれが宇宙人の作ったもの、あえて宇宙船というならあの大きさからみて、地球の科学より進んだ科学を持っていると考えていいだろう」
「当然だな」
「ということは、先方は既にスカイスフィア2を見つけていると思わないか?」
「でもあの天体は、不自然というか逆に自然というか、そこらの隕石と同じように自転してるわよ。シリンダー状の宇宙船なら重力を生むため自転することは考えられるけど、球型の宇宙船だと場所によって重力が違ってくるから相当使いにくいんじゃない。もし宇宙人があの天体の中にいるとしたらかなり物好きな連中なんじゃない?」
「……。見た感じ自転速度は、5分で1回転だ」
圭一は、電卓として使っているスマホを胸から出して計算し、
「……。赤道部分でも50分の1G程度の遠心力しかない」
「なるほど。もしかして、あの天体は宇宙の難破船かも知れないぞ。乗組員は脱出した後で乗り捨てられた宇宙船とか」
「翔太が言うと、可能性が少なそうなことも、本当になってしまうからな」
「さすがに今のは思い付きを言ったまでだが、どうする?」
「近寄ってみるか?」
「ドローンを送ってみましょうよ。D4は捕獲ネットに繋げていないから身軽だしいつでも出せるわよ。あの天体の周囲を近くから観察すれば何かわかるかもしれないわよ」
「よし、それでいこう」
「了解。
格納ハッチ開放。
D4リリース、D4微速前進」
そこから先は明日香がD4を操縦し、新たな謎の天体にD4は接近していった。
「近づいてみるとかなり大きいな」
「あそこに孔が開いているように見えるが。さっき見えてたか?」
「映像は録画しているから、すこし戻して確認してみよう。
明日香、頼む」
「了解。隣りのモニターに出すわよ。
あっ! 開いていない。さっき開いたんだ。生きてる。あの天体だか宇宙船は生きてる!」




