第33話 隕石
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DORAを回収したスカイスフィアは一路地球への帰路についた。地球までの距離は6.7億キロ、230時間の旅となる。
帰路の間、DORAの撮影したゲートの先の映像を分析することにした。真理亜は映像から星系内の惑星を特定をすることにした。DORAは位置を変えて全天の映像を撮影しているので、惑星ならば、位置がわずかにズレるので発見可能と考えられる。
星系の位置の特定については、研究所に戻ってから既知恒星のスペクトル分析結果との照合から始まる。ゲートの先の恒星がスペクトル分析済みの恒星ならすぐに特定できる。それで該当する恒星系が発見できなければ、既知の星系からの主要恒星の見え方から当てはまるものを探し出す作業となる。画像処理の問題なので、太陽系からそれほど遠くなければ特定可能、特定できなくても大まかな位置を掴むことは可能と考えている。
DORAの映像によると、ゲートに突入後DORAは位置を変えながら全天の撮影を続けたが、突入後15時間あたりで映像がブレた。そこからノイズなども発生して見づらい映像がしばらく続き、一度映像が5秒ほど中断した。そのあとの映像には木星の姿が映っていた。DORAは異常発生後ただちにゲートを抜け出て太陽系に帰還し、スカイスフィアを待っていたようだ。
「15時間経過したところで起きたあの映像のブレは、何かがDORAに衝突したためのものだろうな。おそらく隕石だろうが、推力から考えられる加速度は半減し、しかも直進できないとなると確かにDORAの中に、その隕石が取り込まれているな」
「だな。
地球に帰って、DORAがどうなっているか早く確かめたいな」
「焦っても仕方がない。落ち着いていこう」
「分かっている」
地球への帰路を急ぐスカイスフィアは中間地点で180度回頭を慎重に行い、予定通りDORAを回収後230時間で地球への帰還を果たした。
地球を出発して20日目。時刻は21時15分。スカイスフィアは、組み立て工場の架台の上に着陸した。
「ご苦労さま、今日はもう遅いが、まずはDORAの確認だ」
「DORAを固定しているプレスアームを緩めて、下の台座にかかっている荷重を調べてみるわ。上から1トンの荷重をかけているから、下の台座の荷重から1トン引けばドーラの重さが分かるはず。DORAの出発時の重さは1.2トン、今の荷重は、……。
4トンちょうどだわ。ということは、1.8トンも重くなってる」
「かなりでかい隕石がDORAに突入したんだな。よく生還できたものだ」
明日香の前のモニターにはDORAの後方カメラがとらえた組立工場内が映っている。
「それじゃあ、DORAを起動して、プレスアームを緩めるわね。
荷重、3.5、3、2.5、2、1.5、1。
リリース。荷重ゼロ。このままゆっくり前進させて、DORAを架台の上に。
……。
ゆっくり下降。ゆっくりー。
架台の上に乗った」
「お見事」
「DORA推進器停止。
発電機は動かしておいた方が良い?」
「データは転送済みだから停止していいだろう」
「了解。DORA発電機停止。
ふー」
「ご苦労さん。
確認しにいくぞ」
「それじゃあ、スカイスフィアに外部電源を接続。発電機停止」
「わたしもいくから、待って!」
ハッチから飛び出た4人は斜路を走り下り、DORAが着陸した架台に向かった。
DORAの外殻の3分の1くらいに渡って内側に折れ曲がり、折れ曲がった真ん中に破孔が空いていた。破孔の大きさは50センチから60センチ。
「よくこんな大孔があいて帰ってこれたな」
「これも、一種の奇跡かもな」
内部は暗くて破孔からはよく見えなかったが確かに何かが内部に転がっている。
「どれ、ハッチを開けて中を確認してみよう」
翔太がハッチを開けると、DORA内部の構造材が折れ曲がり機材もあらぬ方向に向いたり、配線などが引きちぎれたりしていた。そして、破孔の反対側には、短径50センチ、長径70センチほどの隕石が転がっていた。隕石の表面は格納庫の照明を浴びて銀色に眩しく輝いていた。
「おい、翔太。この大きさで1.8トン、しかもどこかで見たような輝き。
これってもしかして?」
「X金属によく似ている。プラチナに見えるのは確かだ」
「えっ! X金属なの? まさか!」
「少し削り取ってみるか。
そこらに工具があったはず」
格納庫内の隅に置かれたロッカーから、タガネとハンマーを持ちだした翔太が、ハッチに半身を突っ込んで、丁寧に隕石から試料を削りとり、ハンカチに包んでポケットに入れた。




