第29話 改修完了。再度木星、ガニメデへ
圭一はスカイスフィアの改修のための設計を終え、造船会社と交渉し、部品、部材を購入した上、作業員を借り受けることなった。工期は1週間を見込んでいる。
DORAの格納庫はスカイスフィアの赤道部分に設けられた直径2.6メートル、深さ1.8メートルの円筒で、上方および左側から伸びる緩衝材付きのプレスアームでDORAを下方の緩衝材付き台座と右に設置した緩衝材付き台座に押し付け固定する。台座には荷重計が取り付けられており、各プレスアームは1トンの力でDORAを固定する。もちろん、加速時や地球上ではその分の荷重が追加される。
信号線及び電力線は先端にプラグを付けたアームがDORA側に取り付けられるコンセントに嵌るようになっている。
DORAを包むサーマルブランケットについては、国内で人工衛星を製造している企業と交渉して必要量購入することができた。その際、その企業で開発した人工衛星用の耐熱・耐寒樹脂も入手することができた。
翔太はDORA内部の過熱、冷却関係の設計をまとめ、機材を発注している。
DORA内部の機器に対する過熱、冷却は、定温の気体、ここでは摂氏4度の水素ガスをパイプを通して各機器の間を循環させる方式とした。パイプ内に水素を循環させるため加熱、放熱板を内蔵した気体ポンプを導入している。ポンプ用放熱板はDORAの外殻に取り付けられた放熱板に直結している。
DORAの改修は翔太の指示の元、組み立て工場の脇で行われた。こちらの作業には例の人工衛星製造会社から作業員を3名ほど借り受けている。
サーマルブランケットはDORAを包んだ後、荒い銅製の網で固定され、その上に耐熱・耐寒樹脂を厚めに塗りつけた。透明化して硬化した耐熱・耐寒樹脂の表面は樹脂用研磨機で磨き上げられた。
翔太と圭一がスカイスフィアとDORAの改修で忙しくしているあいだ、明日香と真理亜の二人は早々にプログラムの開発、修正、デバッグなどを終えている。
最終的には、改修開始から予定通り1週間でスカイスフィアとDORAの改修工事は終了した。最終的にDORAの質量は0.1トン増加し、1.2トンとなった。
改修工事と並行して、船内へ消費物資などの搬入も終えているので、スカイスフィアはDORAを腹に抱いて、いつでも木星に向けて飛び立つことができる。
飛行許可は改修が完了して3日後に取っているため、最終チェックを終えた面々は一度溜まっていた私用を済ませるため休みをとった。
出発は午前8時を予定し、行きの片道は6.75億キロ。230.5時間の飛行で謎の天体『ゲート』に到達し、スラスターによりゲートとの相対位置を維持しつつDORAをゲートに向けて放つ。
スカイスフィアは最長7日間木星を周回しつつ留まりDORAの帰還を待つことになる。
帰還時の木星-地球間の距離は往路とほとんど変わらず約6.7億キロ前後、230時間ほどで地球に帰還する予定だ。
木星のゲートに向けての出発日。
午前7時30分。組み立て工場の屋根がゆっくりと開放されて行くなか、翔太、圭一、明日香、真理亜の4人は、いつも通り普段着でスカイスフィアに乗り込んでいった。
各部の最終点検を終えた4人は操縦室の各自の座席に座り、シートベルトを締めた。
8時00分
「センサー類正常。
スカイスフィア、主電源装置起動。電圧正常。内部電源に切り替え。
外部電力切断」
「スカイスフィア計測重量525トン。離昇推力526トンをセット。
主推進器起動。
推力上昇、10トン、計測重量510トン。
推力200トン、計測重量320トン。
推力400トン、計測重量120。
推力526トン、計測重量0。スカイスフィア離昇」
「スカイスフィア、微速上昇」
屋敷の使用人たちが見守る中、スカイスフィアがゆっくりと上昇を始めた。
「これより、スカイスフィア、対地球加速度1G、船内加速度2Gまで加速し、高度20000キロで木星に向け天頂望遠鏡をセットした後、対地球加速度1G、船内加速度1Gで中間地点まで加速。中間地点で反転後、1Gで減速し木星のゲートを目指します。
自動操縦セット。……。
セット確認」
架台を離れたスカイスフィアがゆっくりと上昇を始め、組立工場の開け放たれた屋根から青空に向かって上昇していった。




