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双神の輪~紡がれる絆の物語~  作者: Guidepost
3章 騎士編 光の救世主
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86話

 最近特に討伐へ赴くことが増えていたため、久しぶりにニューラウラ王国の自分たちの町へ戻ってきた時は流輝も琉生もかなりホッとした。危惧からの安堵とかではなく、まさにわが家へ帰ってきた時の気持ちというのだろうか。


「とりあえず風呂に入りたい」

「ほんとそれだね」


 一旦、王宮の魔術師や騎士が普段訓練に使っている広場へ集合した後でしばしの休暇を与えられての解散だった。今回は少々遠出したのもあるが、思っていた以上に魔獣が多く予定よりもずいぶん時間がかかり、何日も野営が続いていた。たまに川などで体を拭いたりするくらいはできたが風呂が恋しかった。


「ふ。疲れ切った様子だな、リキ・ターナー。情けない。俺などまだまだやれるというのに」

「煩い黙れルバス。というか寄るな。俺もだろけどお前臭いから近寄らないで」

「なっ、相変わらず失礼なやつだなリキ・ターナー」

「というかいい加減フルネームやめろよ」


 ルバスがディルアン事件の後も騎士としてずっとがんばってきているのを流輝も琉生も知っている。爵位剥奪されたため、貴族しかいない王宮騎士の中でずいぶん大変な思いもしただろうと思われる。だが今ルバス・ディルアンは騎士としての活躍により男爵の称号を王から与えられていた。いずれ子爵の称号も与えられるのではないかとさえ言われている。

 学生の頃はひたすら気に食わないやつだったが、そういったところは流輝も尊敬に値すると思っている。また、事件発覚後に頭を下げにきてからしばらくして本人が言いにくそうに口にしてきたが、ルバスは王族の血筋であるディルアン家の息子として何よりも血筋は大事だと父親などに言われ育ってきたらしい。


「それでも本当ならば自分の目や耳、頭で判断すべきことだろうから言い訳にしかならんことはわかっている。だが俺はそういう環境で育ち、何一つ疑問など感じなかった。例えばローザリア殿下のことも血筋がよくないため同級生としても避けていたくらいだ」


 だがその後兄であるラントが犯した罪により、爵位のない罪人の弟として周りから見られる立場となった。王族の血筋など何の役にも立たない。ルバスはただの罪人の弟であり貴族でもなんでもない一人の男だった。


「わが身で味わいようやく理解できた。身分で人を判断していた自分が恥ずかしいし情けない。兄上のことでどれだけ詫びても済まないとわかっている上に、こんな恥しかない俺がお前たちをライバル視して挑んでなど、いいはずがなかった。それに関しても恥ずかしいし心から詫びさせてもらう。申し訳ない」

「いや、いらねえわ」

「ちょっと兄さん。他に言い方があるでしょ……。もう。……ルバス。確かにラントのしたことは俺らにとって許しがたいことだし国としても多分多少たりとも赦免はないと思う。でもラントと君は一緒じゃない。君も協力者だったとかならあれだけど、君が謝る必要なんてないよ」

「それな」

「……兄さん」

「しかし……」

「しかしもへったくれもねーんだよルバス。俺らがいいっつってんだからお前もハイそうですかってなればいいだろ。それに何でお前が恥じるんだよ。ああいや、身分で人を見るのはマジ恥ずかしいと思うわ」

「ぅ」

「でもな、お前はそうやってちゃんと反省できるやつだろ。じゃあそれでいいじゃねーか。俺らだっていいと言ってるしもう二度とそのことで謝ってくんなよ。鬱陶しいから」

「兄さん」

「ああそうそう。戦闘を挑んでくるのは歓迎してやる。まあ今の俺の魔術には到底勝てねえから、剣で戦ってやってもいいぞ」

「……、……ふ。わかった。もう謝罪はしない。だが最後にこれだけは言わせてもらう」


 まだ少々俯いていたルバスだがようやく顔を上げると少し笑いながら言ってきた。


「なんだよ」

「……これも二度と言わん」

「だからなんだよ」

「ありがとう。リキ・ターナー。そしてルイ・ターナー」


 ルバスが立ち去った後も流輝はしばらく唖然としていた。そして開口一番に「ルバスがデレた」と琉生を見て呆れられた。

 あの時以来、たまに顔を合わせると相変わらず以前のようなやり取りを交わす。だが学生の頃心底うざいと思っていた流輝はわりとそれを楽しんでいたりもする。

 琉生とルバスの隊は別のようだが、今のように討伐が増えると顔を合わせることも少なくないらしい。ついでに魔道騎士団である流輝ともこうして顔を合わせたりしていた。


「名前で呼べばいいだろ」


 流輝が微妙な顔でルバスを見ていると、そこへ誰かが駆けつけてきてあろうことか流輝をぎゅっと抱きしめてきた。


「……っ?」


 突然のことでわけがわからないまま唖然となる流輝だが、抱きしめてきたのがローザリアだとわかると顔が一気に熱くなった。周りから口笛や何かはやし立てるような声が聞こえてきて余計混乱し熱くなる。


「あ、あの、ちょ、な、なに? なんなの? ちょ、ローザリアさん?」

「リキ……無事だった……」

「え? あ、はい、無事、です、けど……。……っつか、ちょ、マジ離れて! 俺、今やばいって! 風呂すげー入ってねえ……! お願い離れて!」


 戸惑いしかない流輝だが、ふと我に返るというか自分の現状に気づいて慌ててローザリアを離そうとした。だが離れてくれないし無理やり引きはがすことはできない。

 琉生に助けを求めようとしたら「俺、先に風呂入ってくるね。じゃあまた後で。兄さん」と笑顔でそそくさと立ち去られた。後で覚えておけよと恨みの念を琉生に送っているとルバスも「全く。変なところで余裕だなリキ」と呆れたような顔をしながら立ち去っていった。


「余裕ってなんだよ! ってちょ、どさくさ紛れに今名前で呼んだっ? ちょ、ねえ!」

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