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双神の輪~紡がれる絆の物語~  作者: Guidepost
2章 学生編  生きる覚悟
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71話

 正式に招待状を受け取ってしまったのもあるが、様子を窺うためという理由もあり、とりあえず双子は指定された日時にディルアン家へ向かった。

 フランは特に無言だったがキャスが屋敷を出るまでの数日間、少々煩かった。いわく「絶対に何かあるに決まっています」だの「危険です、俺らは多分少し離れたところにしかいられないんですよ」だの「俺の主になにかあれば俺は、俺は……」だの。その度に流輝は「ちゃんと用心するよ」「俺らの実力を知っているだろ」「キャスが俺を守ってくれるんだろ?」といった、適当……いや、キャスを安心させるために少々大げさに返しておいた。

 実際茶会では特に何もなかった。滞りなく進んだというのだろうか。顔が溶けそうなほど真っ赤にしながらも、アリアンが粗相することなく完璧にホストをこなしたことは、学園で会った時に褒めちぎってあげようと流輝に思わさせた。今でも少々引っ込み思案でおとなしいアリアンだが、案外貴族としての生活能力は低くない。というか淑女としての、だろうか。小さな頃から教育を受けてきたのもあるだろうが、多分本人に向いているのだろう。だというのにやり遂げたことに対して流輝はとてもホッとしたし褒めちぎりたくて仕方がない。


 つかさあ、きっとルイにお似合いだと思うんだけどなあ。淑女としてもレベル高そうだしかわいいし、一途っぽいし。


 引っ込み思案でおとなしいが、琉生なら絶対そんなアリアンを置いてけぼりになどせず手を添えて支えそうだ。だが肝心の琉生は相変わらず今も気づいているのか気づいていないのか、他の女性相手と変わらない対応をしている。


 いや、変わらなくはないな。アリアンと俺ら友だちだし、アリアンは同じ歳だけど妹みたいにかわいいしで、俺と同じく他の人相手と比べて別格にお気に入りではあるっぽい。


 ただそれだけだ。今日も真っ赤になりながら琉生に茶や菓子を勧めるアリアンに対し、優しげな笑顔で「ありがとう。もらおうかな」などといつもと変わらない応対だった。

 茶会は結局ルバスが言っていたように、ディルアン側ではアリアンのために開かれた感じしかしなかった。アリアンは嬉しそうだったしルバスは渋々といった態度ながらに礼儀正しく座っていた。ラントは最初に「改めて話をするのは初めてですね、どうぞよろしくお願いいたします」とにこやかな様子で口を利いてきたものの、敬語が取れてもやたら話しかけてくることも、妙な態度をとってくることもなかった。

 結局、用心した分疲れはしたが普通の茶会としてつつがなく終わった。拍子抜けはしたが、何もないならそれにこしたことはない。キャスはそれでもまだ「疑わしい、おかしい」と言っていたが、次にまた招待された時も変わらなかった。

 何度か続くと警戒も薄れる。それが狙いの可能性もあるが、そもそもアリアンのためという名目の茶会でドルフやラントが何かするとは流輝には思えなかった。


 こんなかわいらしい末っ子のトラウマになるようなこと、普通に考えていくらディルアンでもするわけねーもんな。


 そもそもドルフは顔を出すことすらない。さりげなく聞くと、どうやらいつも留守にしているようだ。


「我が子とその友人の茶会に父親が参加したがるとも思えないしな、だけれども二人が来てくれていると聞けば身分上、顔を出さずにはいられないだろうし」


 だから父親の留守の時を狙っているんだとラントは苦笑していた。丁寧な物言いだったし一見もっともだしでまともそうに聞こえるが、流輝としては「身分上って何だよ」とつい思ってしまう。貴族としては当たり前のことなのかもしれないが面倒だしディルアンだけに「やっぱり身分で人を見るだけあるな」などと考えてしまう。これも偏見なのだろうか。他の貴族が言えば、面倒だなとは思いつつもそれだけだったりするのだろうか。

 学園でアリアンに会った際は忘れることなく流輝は褒めちぎった。アリアンは嬉しそうに頬を染めてきたが、相変わらず流輝に対しては絶対に琉生に対してのようにやばいほど真っ赤にはならないし態度も比較的落ち着いている。


「嬉しい。その……ありがとうリキ」

「ほんとすげーと思った。……それとは別だけどさ、お前ほんっと俺に対しては扱いが違うな」

「えっ? そ、そんなことない……」


 一瞬ポカンとした後で流輝が何を言っているのか察したのだろう。今度こそアリアンは真っ赤になってきた。


「まぁいいけど。……ところでさ、茶や菓子は美味しいしお前にゲストとして扱われるのも悪くないしで楽しんではいるんだけどさ、ほんと何で茶会しようとか思ったの?」

「……私はちょっとわからなくて……。ルバスお兄様から聞いただけなの」


 ルバスもそう言っていた。


「何て聞いたんだ?」

「えっと、私だとしたくても誘えないだろうから誘っておいた、と」


 それもルバスが言っていた。やはり疑心暗鬼なのだろうか。


「そっか」

「あの……本当は来たくなかった?」

「まさか。言っただろ、楽しんでるって」


 心配そうに見上げてくるアリアンに、流輝は笑いかけながら頭を撫でた。他の女生徒に対しては絶対できないが、アリアンだと躊躇なくできるし撫でながらもついニコニコしてしまう。以前琉生に「あまり学園でアリアンにそういうことしないほうがいいんじゃないの」と言われた時は、まさか嫉妬かとそわそわしたが違った。単に「他の女性がやっかむかもしれないから」らしい。


「何でだよ」

「兄さんはそんなだけど意外にもモテてるから」

「そんな、とか意外とか余計なんだよ」

「とにかくそうだから、もしかしたらアリアンに対して変に反感持つ人もいるかもしれないでしょ。まあアリアンはかなり身分が高いからローザリア同様、大丈夫だとは思うけど」

「また身分かよ」

「その辺はまあ、貴族社会だからね、仕方ないよ」


 琉生は言いながら苦笑していた。

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