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双神の輪~紡がれる絆の物語~  作者: Guidepost
1章 幼少編 異世界召喚
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6話

 何が起こったのかわからなくて、流輝は口を開けてぽかんとしていた。だがハッとなり隣を見ると琉生もぽかんとしている。涙は枯れているようだ。

 倒れた恐ろしい生き物のそばで、漫画に出てくる騎士のような恰好をした人が同じく漫画で見るような剣をぶんっと振るうと鞘にしまう。そして二人に駆け寄ってきた。気づけば恐ろしい生き物たちは皆他の同じような格好をした人たちによって倒されていた。

 駆け寄ってきた人は相変わらず何を言っているのかわからないが、少なくとも人さらいのような下卑た笑みなど浮かべておらず、おそらく心配そうに二人を見ている。その人の目の色はやはり元の世界では見ることのない赤っぽいオレンジ色に似た色をしていたが、双子と少しだけ似たような髪の色をしているからだろうか、何となく流輝はホッとした。


 似た色っていうか、ねずみ色っぽい、けど……。


『お怪我はありませんか』

『おい、フラン。魔獣も倒したことだし、とりあえずさっさとこいつら連れて戻ろうぜ』

『口を慎むんだ、キャス。この人たちは特別な存在だぞ』

『どうせ俺らが何言ってんのかわからないんだろ? なら気にすることないじゃないか』

『……はぁ。本当にお前は剣の腕だけだな』

『はぁ? 何……』

『いいから馬車をこちらへ回すよう手配してこい』

『何で俺が……』


 もう一人、同じ色ではないもののやはり赤っぽいオレンジ色をした目の色に、髪の色も綺麗な赤っぽいオレンジ色をした人が近づいてきて何やら二人で話しているようだった。その後何やらぶつぶつ言いながらため息をつくとオレンジ色の髪の人はこの場を離れていった。

 ねずみ色の髪の人は他の人たちにも何やら指示しているようだ。その内馬車がやってきて、双子は促されるままおとなしくそれに乗った。相変わらず言葉は全くわからないしこのまま二人がどうなるのかもわからないが、少なくとも騎士のような恰好をした人たちは二人を助けてくれた。ということは多分危害をくわえられることはないだろうし、もしかしたら昨日の人たちも自分たちに危害はくわえるつもりはないのかもしれないとさえ思えた。

 むしろ外のほうが危険だった。この上なく危険だった。何もわかっていない二人なら一日どころか数時間もせずに死ぬだろうし、現に死にかけた。それを思い出し、流輝は今さらながらに震えが来た。


「リキ、大丈夫……? ごめん。俺が頼りなくて。ごめん……ごめん」

「ばっ、ばか。ルイが謝ることじゃねーだろ。それ言うなら俺だって頼りない。泣くな。大丈夫だから。つってもさすがにちょっと怖かったよな。それ思い出して今頃びびってきてさ」

「……うん。うん……」

「……もし。もし、な、ルイ」

「うん」

「もし、俺らがしばらくここから抜け出せないなら、さ」

「……うん」

「助けてくれたし、この人らの元にいたほうが安全な気がする」

「うん……俺もそう思う」

「きっと、さ。きっと元に戻れるよ。それまではとりあえず抜け出したお城みたいなとこでおとなしくしてよう」

「うん。そうだね」


 そんな話をしながら、まるで暖を取るかのように二人は寄り添っていた。もちろん実際は寒くない。元の世界では雪も降っていたが、もし季節があるとしてだが、ここはまるで春のような気温に感じられる。それでも心細さからお互いの体温を感じることでかろうじて安心できた。

 城のようなところへ戻ると、昨日見た威厳のありそうな大人の元へ連れていかれた。とても広い部屋の階段のようなところの上にある豪華な椅子に座っていたのでもしかしたら物語に出てくるような王さまなのかもしれないと流輝は思う。そんな人ですら心配そうな顔で二人に駆け寄ってきた。やはりここにいるのが一番安全なのかもしれない。何を言っているのかわからなくてもどかしいが、それは外へ出ても同じことだ。なら追いかけられたり殺されそうになったりする外より断然、ここがいいに決まっている。

 二人がしばらくここでおとなしくしていようと決めたこの日から、どんな話があったのかわからないが助けてくれたねずみ色の髪の人とオレンジ色の髪の人が二人のそばに絶えずいるようになった。おそらくだが、流輝と琉生、それぞれについているように感じられる。ねずみ色のほうが琉生、オレンジ色のほうが流輝の担当であるようだ。


 ねずみの人は全然顔の表情変わらないけど、すごく丁寧そうだし何より強そうだよな。オレンジの人は表情すごく変わるけど、何だろう、俺のこと? それとも俺らのことかな、あまり好きじゃなさそう。何となく俺もねずみの人のがよかったな。……ううん、でもやっぱルイでよかったかも。ねずみの人強そうだし、それにオレンジの人だったらルイ、怖がるかもしんねーしな。


 言葉が通じないのは仕方がないとして、名前もわからないのはなんとなく落ち着かなかった。それぞれについているとはいえ、基本的に琉生とずっと一緒の流輝はねずみ色の人とオレンジ色の人二人そろっている状態でじっと見上げ、注意を引

いた。


『何か?』

『おい、話しても通じねえだろ』

『お前は黙ってろ』

『何だよクソ』

「あの! えっと、さ。俺、リキ。こいつ、ルイ」


 通じるかわからないが、とりあえず何かお互い喋っている騎士二人にもう一度注意を促してから、流輝は再度自分を指差して「リキ」、琉生を指差して「ルイ」とゆっくり喋った。騎士二人は黙ったまま流輝を見ている。

 もう一度だけ自分と琉生をそれぞれ指差しながら名前を名乗り、最初にねずみ色の人を指差して首を傾げた。


『……ああなるほど。リキ……様とルイ? 様です、ね? 俺はフラン・ブライスと申します』


 わかってくれたのか、何やら言ってくれているがどの部分が名前かわからない。困惑して首をまた傾げるとオレンジ色の人が何やら言っている。


『長文はわかんねえだろ』

『そう、だな。しかし無礼な口を利くのは……』

『おい。キャス・ヒューズ。キャスだ。キャス』


 オレンジ色の人が自分を指差し間違いなく何度か「きゃす」と発音した。


「キャ、キャス……?」


 恐る恐る繰り返すと頷いてくれた。そして隣のねずみ色の人を差し『フラン』と言ってくれた。

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