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双神の輪~紡がれる絆の物語~  作者: Guidepost
2章 学生編  生きる覚悟
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63話

 第一王子のセオはキャスから聞いていたようにおとなしそうな人だった。覇気の塊みたいな父王と違って、どこか儚げでもある穏やかそうな優しげな見た目をしている。学園に留学していたら結構モテていたのではないだろうか。

 実際話してみても落ち着いた穏やかな口調だった。ローガン王に挨拶をした際、隣に座っていたおそらく正妃であろう女性に見た目も雰囲気もなんとなく似ている。やはりあの女性は特に紹介されなかったが王妃のネイだろうと流輝はそっと思った。


「ニューラウラ王国からの長旅お疲れ様でした。ずっとお二人にお会いしてみたいと思っておりましたので、こうして会議のためわざわざお越し頂けてとても嬉しく思います」

「こちらこそ、お会いできて嬉しいです」


 今なら絶対に琉生のほうが優れた外交手腕を見せてくれるはずだ。生徒会でも鍛えられただろうし、昔に比べてずいぶん性格も一見変わった。だがこういった時は相変わらず流輝が基本的に率先して挨拶していた。流輝も別に苦手ではないが、上流社会のマナー的なものはいまだに得意ではないため、できれば琉生にお願いしたいところだった。


 でも俺、お兄ちゃんだからな。


 今も内心得意げにうんうんと頷く。

 にしても、と流輝は改めてセオを見る。確かにおとなしそうだし物静かといった印象はあるが、お飾り王子という呼び名はぴんとこない。その言葉にはなんとなく存在だけで中身の全くないぼんくら的なイメージが流輝にはあるが、セオからはとても知性を感じる。


 それともおとなし過ぎて周りの言いなりになってしまうとかなのかな?


 そう考えてみたが、一見そんな風にも見えない。おとなしそうではあるが自分の考えを持っていそうに見える。情けなさそうな雰囲気はなく、しっかりとした落ち着いた感じに見える。


 やっぱ決めつけってよくないよな。つっても本当にしっかりしてるんだったら自分の噂くらい聞いたこともあるんじゃね? なのに言われたままにしてるってことは、何だろ、やっぱお飾りってより、この人に何らかの意図がある、とか? わかんねーし、とりあえず様子見でいっか。今後親しくなるかどうかもわかんねーしな。


「とはいえ私たちは会議には参加しないと思います」


 というかただの観光のつもりだった。しかし自由に出かけられそうにない。


「おや、そうなのですか? ではローザリア王女の付き添いでしょうか。確かお二人はまだ従が付くとはいえかなり腕の立つ優秀な騎士と魔術師だとお聞きしております」


 少なくとも情報は取り入れる人ではあるらしい。


「セオ王子にそう言っていただけて何だか嬉しいですが照れますね」

「照れる必要などないではありませんか。ああでも会議に出席されないのでしたら少々時間を持て余されますでしょうか。とはいえお二人の立場ですと自由に観光も難しいですよね。よかったら私のほうで警備の者と馬車をお出しいたしますので、ゆっくりと観光なさってください」

「えっ、いいんですかっ?」


 思わず少々地が出かけた。隣から琉生の視線を感じる。思わず微妙な顔になりながら手で口を覆っているとセオが少しおかしそうに笑ってきた。


「ええ、むしろ是非我が国を見て回ってください。連合会議の時はそれこそどの国もいいところを見せるため力を入れて準備しますし、それは我々も同じです」


 だが話している途中で少し表情がかげったような気がして流輝はついじっとセオを見た。


「あの、殿下。どうかされましたか?」

「いえ。できれば私もリキ様、ルイ様についてご案内をしたいところでしたが、残念ながら時間を作れずで、少しがっかりしていました」

「そうでしたか。よかったらまた次に機会があれば是非」

「はい。その時は本当に、是非」


 セオは温かそうな笑みを双子へ向けてきた。

 その後第二王子のロニーとも挨拶をした。ロニーはセオに比べると少々気さくな感じはしたものの、セオと同じく真面目そうな印象だった。キャスが聞いた「もう少し覇気がある」というのはわからないでもないが、やはり父親であるローガン王とはあまり雰囲気は似ていない。セオよりは少々父親に似たところもありそうだが、垂れ目がちの目つきのせいだろうか、整ってはいるもののどこか血も涙もなさそうに見えてしまう父親と違っておっとりとした感じがある。ロニーもセオとは別の母親と聞いているし、そちらによく似ているのかもしれない。

 第三王子のジェスはまだ五歳とあって本当に挨拶をしただけだった。利発そうな顔をしているものの、五歳のわりにおとなしそうだった。やはりセオやロニーとは似ていないためどちらの兄とも母親は違うのかもしれない。


「……ここの王様さあ、奥さんつくりすぎじゃね?」


 一旦自分たちの部屋につながる応接室へ向かっている途中でこっそり琉生に話せば「まあ、ね」と苦笑が返ってきた。


「ルイはどうよ」

「どうって?」

「たくさん奥さんいるのって羨ましい?」

「何その質問。どのみちニューラウラ王国も元いた世界での俺らの国も一夫多妻制じゃないでしょ」

「そうだけど、そうじゃなくてさー、いいなーとか思うのかって」

「思うわけないだろ、そんなのめんどくさい」

「はは。わかる」


 だよな、と楽しげに笑いかければ琉生にニヤリと見返された。


「でも兄さんはその場限りの関係は大歓迎なんでしょ」

「だっ、から違うっつってんだろ! 俺別にそーゆーの興味ねーし」

「へえ?」

「へえ? じゃねえ。だから! あれは単にその場での話の流れっつーか、いやだってマジ面倒だから、でもその場限りの関係だったらまあややこしくねーし楽しむだけだろうか……」

「兄さん……」


 ムキになって話していると、何かに気づいた琉生が慌てたように小声で呼びかけてきた。何だよ、と言う前にだがローザリアがまた白い目で流輝を見ているのに気づく。


「ローザ……」

「挨拶が終わったし一緒にお茶でもと来たんだけど、出直すね。だからその場限りのお遊びがいかに楽しいか好きなだけ話してて」


 ニッコリと嘘くさい笑みを向けてくるとローザリアは「戻りましょう、エリス」と自分の護衛騎士であるエリスに声をかけながら踵を返していった。

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