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双神の輪~紡がれる絆の物語~  作者: Guidepost
2章 学生編  生きる覚悟
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62話

 せっかく他国へ、それも学園にも全く留学生がいない未知の国、モールザ王国へやって来たというのに自由に出歩けないと知って流輝はあからさまにがっかりしていた。


「できるわけないでしょ。こんなに護衛つけられてる俺たちが」

「気をつけてたらいいんじゃないのか? 別に俺、単独で行動したいっつってんじゃないぞ。キャスやフランがついてたらいいじゃないか。ニューラウラでだっていつもそうしてただろ」

「自国と他国じゃまた違うだろ」


 琉生の言った「自国」という言葉に、流輝は何気にこそばゆさを感じた。でも違和感はない。そもそも自分も無意識の内に「他国」と口にしていた。


 そうだ、そうだよな。ニューラウラ王国は俺らの家や家族がある、俺らが住む国だもんな。


 元の世界のことはきっとどうやったって忘れられない。でもそれでいいと思っているし、もしかしたらいずれ帰られるかもしれない。だが今やこの世界も流輝たちの世界になっている。


「何急に照れてんの兄さん」

「う、うるさいし照れてないし。なーちょっとくらいよくね? つか俺、不満なんだからな」

「何が?」

「さっきローザリアと話してた時だよ。何か二人だけでわかったような雰囲気になっちゃってさ。俺仲間外れみたいだったし」

「……何それ。そんなんじゃないし仲間外れとか何言ってんの、子どもみたいなこと」

「元の世界だったらまだ未成年なんだから子どもでいいし」

「わけわかんないこと言ってないで、ちゃんと用意してよ。この後王子たちに会うんだから」


 モールザ国王にはすでに挨拶している。大層な椅子の上からにこやかに迎えてくれたが、流輝はどうも好きになれそうになかった。これといった理由があるわけではない。一夫多妻制といった印象のせいもあるかもしれないが、それは各国の文化でもあるため好き嫌いの判定にはならない。ただその後ようやく案内された個室に引っ込み、今こうして着替え終えた琉生がやってきて話している際に「理由はないがあまり好きになれそうにない」と言えば琉生から「わかる」と返ってきたため、多分この感性は間違っていないような気はする。


「もう王に挨拶したんだし、別に王子まではいいんじゃないの」

「そうはいかないでしょ。いいから早く旅用の服着替えて。じゃないとキャス呼ぶからね。兄さんがどうやら着替えを手伝って欲しいって言ってるって」

「やめろ。飛んでくる気、しかしない」


 微妙な顔を琉生に向け、流輝は渋々着替え始めた。マントなどを外せばそれでいいじゃないかと思うのだが、他国の王族相手にそうもいかないくらい本当はわかっている。だが面倒なものは面倒だ。

 渋々着替え終え、キャスたちと合流して流輝はそれぞれの王子たちが住まう宮殿へ向かった。ローザリアはまだわずか八歳である第二王女の元へ挨拶をしに行くと言っていたので、構わず双子だけで向かう。ちなみに第一王女はすでに結婚して王宮にはいないらしい。


「そういえば第一王子ってキャスと四つくらいしか変わらないんだっけ?」

「ええ、そうです。俺が今二十六で王子殿下は二十二だったと思います」

「まだ父親が王のままなんだね」

「リキ様たちがご用意なさっておられる間に少しここの使用人の話を聞いてみたんですけどね」

「……たぶらかしてな」

「なっ、失礼なこと言うなフラン。彼女たちが俺に噂話をしたそうだったから、手助けをしてやろうと声かけただけで」

「いいからキャス、それはどうでも」

「どうでもいいってそんな寂しいことおっしゃらないでください」

「いいから、何? 話聞いてみたら、何」


 ため息をつきながら流輝が促すとキャスはそうそう、と思い出したように頷きながら続けてきた。


「第一王子はどうやらお飾り王子って言われてるらしいですよ」

「お飾り? 何で? 綺麗な顔でもしてんの?」

「兄さん……さすがにそのままの意味じゃないでしょ」

「そ、そうだよな。そりゃそうだ。でも何でそんな風に呼ばれてんだ? 仕事ができないとか?」

「使用人たちの話ではおとなしくて何も口出しもできない物静かな王子、だそうですが」

「ふーん。じゃあ第二王子は? 確か第一王子と一つしか歳、変わらなかった気がするけど」

「ええ、そうですね。第二王子殿下はもう少し覇気があるらしいですが、申し訳ありません、詳しくは聞いていなくて」

「え、謝らなくていいよ。どうせ話したらわかるだろうし。サンキュー、キャス」

「いえ、もったいないお言葉です」


 どのみち先入観はあまり持たないほうがいいしな、と流輝は思った。知らないより情報は何でも知っていたほうがいいが、こと人に関しては変に先入観を持つと本当の姿が曇って見えてしまうことがある。第一王子が「お飾り王子」と呼ばれているのだとしても、実際会って流輝がどう思うかが大事だと思っていた。

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