47話
生徒会室で話題に出た合同授業だが、その授業内容は模擬戦闘に限らない。他の内容もある。魔術に関する内容だと流輝としては今のところ力を発揮しないようにしているため、もどかしさしかない。かといって思う存分使った時点でただごとではないとバレる可能性しかないため、仕方がないとは理解している。
今はもう学園に入学して一年は経ったが、入学して数か月経った頃の初めての合同授業は模擬戦闘だった。今でも一番よく覚えているのはルバスがとりあえず鬱陶しかった、だろうか。
流輝にとって初めての模擬戦闘が行われる際、とりあえず今の状態で使える魔法や剣技の何を使ってもいいと教師は説明してきた。生徒たちには慣れている慣れていない関わらずシールドを張ってくれた。危険を察知すると魔力のフィールドが展開され生徒が動けなくとも自動的に障壁を作ってくれる防御魔法らしい。
「一度しか使えん簡単なやつだ。自ら降参するかそのシールドが作動したらその時点で終了だな。君たちの今の実力を見るためだが、特に今年入学してきた者はまだ授業では魔法も剣もさほど実技を経験していないはずだ。無理はしないように。別に今回の模擬戦闘が直接成績に響くことはそれほどないし、他の力を発揮できる授業や試験もある」
それほど、ということは多少は響くということじゃないのかと流輝は内心苦笑する。
授業でさほど実技をしていないと教師も把握した上で行うのは、実際に現状の実力を見たり生徒自身が早くも選択科目を考える上での参考になるからだろうし、大抵の貴族たちが剣や魔法といった何らかの習い事を学園に来る前から行っていることが暗黙の了解というか常識なのだろう。
組み合わせは自由でいいらしい。とはいえそれぞれが持つ力は様々だ。先輩たちはお互いの力もそれなりに把握しているからか、自分たちと似た力を使う者同士すぐに組んでいるようだ。すでに何人かは教師に「今から始める」と宣言している。組む相手を決めても勝手に戦闘を始めてはいけないようだ。あと流輝たちと同じ歳の者もすでに一年前から在学しているからか、要領はわかっている様子だ。歳は一つ下になるが同じく今年入学した者たちが少々戸惑っている。
ルバスは授業が始まり次第真っ先に流輝のところへ来るかと思っていたが、どうやら誰かに話しかけられているようだ。流輝はとりあえず今年入学した者たちと同じように様子見することにする。琉生は生徒会に入っているのもあってか、すでに何人かの者に「俺とやろう」「俺が相手だ」などと声をかけられている。おそらく同じ生徒会の、琉生が持つ剣の実力を多少知っている者たちだろう。本当の力を知ればむしろ挑む気にもなれないのではないだろうか。
ローザリアも同じクラスの誰かと組んでいるようだ。ローザリアの属性が水だとはこの間知ったばかりだ。魔力は中の上といったところらしい。剣も王族としてそこそこ学んでいると聞いたことがある。魔法か剣か、それとも両方を使って戦うのか、流輝としては少々興味があった。
ところで魔術師自体この世界では希少な存在だとはすでに以前聞いている。大抵の者はあまり魔力を持ち合わせておらず、魔力を日常的にさほど使わないのだそうだ。使うとしても魔法石を利用するか、ちょっとした応用や生活魔法程度だと聞いた。そのため、魔術を学んでもそれを戦力として使える者は相当数が少ない。多少使えても長い詠唱が必要となる上に力はさほど強くない。おまけに一度使うとしばらく使えないようだ。
よって今回の模擬戦闘も大抵の者は剣を使うか魔術を多少応用して使うかになると思われる。剣があまり得意でない者は早くも棄権する者がいるかもしれない。
模擬戦闘が授業であることはソリアには事前に話してあった。
「俺、あまり使わないほうがいいよな、魔法」
「うーん、そうですねえ……すいぶんお強くなられましたが、そうですね、まだ、全ての属性が使えることは秘密にしておきましょう。学園に魔族が紛れていることはないと思いたいですが、正体がどこでバレるかわかりませんからね。ですが魔術師を目指すわけですし、多少の強い魔力は見せつけてやりましょう」
「はは。見せつけるって。誰に」
「もちろん、皆さんにですよ。スカッとしますよぉ、きっと」
「別にそういうのはいいよ」
「リキ様はもう少し性格悪くなりましょうよ」
「何でだよ……」
「どのみち成績がいいに越したことはありませんから。えっと何でしたっけ? ディロンでしたっけ、デンアンでしたっけ、その子もさらっとやっつけちゃってください」
「ディルアンな……。キャスたちはよく知ってそうだったのに、何でソリアはたまに他の貴族に疎いの。魔術師も騎士たちと同じく貴族に仕えたり王の命で戦いに赴いたりするわけだし、疎いのおかしいだろ」
「私、あまりそういうの興味ないんですよねー……ああでも人を観察するのは好きですよ」
どう観察するんだか、とその時ソリアの話を流輝は少々引き気味に聞いていた。
そういえばアリアンは、と辺りを探しながら見ると、案の定すでに棄権したのか木陰に座って見学をしけこんでいる。流輝は思わず笑いながらアリアンに近づく。
「お前、早すぎだろ」
「リ、リキ。その、私は戦う力を持ってないから……」
「そういえばお前の属性ってなんだ?」
「土。その……園芸とかならね、その、私もまだ、できるの。お花とかも好きだし。でも戦うのは」
無理だとばかりにアリアンはきゅっと目を瞑りながら首をふるふると振った。高めに結われたツインテールもつられて揺れている。
実際この間、魔術系の薬学授業が温室で行われたのだが、アリアンは意外にもたくさんのことを知っているようで教師に質問されていても消え入りそうな声ながらにすべて答えていた。
「じゃあ今から戦うルイを見放題だな」
ははは、と笑いながら言えばアリアンが真っ赤になってきた。
「おい! 俺の大事な妹に手を出すなリキ・ターナー!」
その時、狙ってたのかといったタイミングでルバスの声が聞こえてきた。流輝は微妙な顔を声がしたほうへ向けた。




