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双神の輪~紡がれる絆の物語~  作者: Guidepost
2章 学生編  生きる覚悟
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31話

 一気に嫌いになったとは言ったが、同じクラスにいるアリアンを見ていると身分による差別をしているようには見えなかった。


 身分云々とか言うより何だろ、高貴だろうが何だろうが人が嫌いなのか?


 ディルアン家のやつらは一体どんな感じなのだろうと、とりあえずクラスが同じなので流輝は手っ取り早くアリアンを観察してみたのだが、見事なくらい誰とも目を合わせない。かといって公爵家だから偉ぶっているというのでもなく、ただひたすら俯き加減だ。休み時間ともなれば心配してか、側近か護衛かいつも同じ男性が毎回ではないものの現れてそばにいるかと思えば隙あらばどこかへいなくなる。


「なあルイ。あいつ、何なんだ……」

「うーん。多分人見知りが激しいとか、じゃないかなあ」

「人見知りぃ? 腹黒ディルアンが?」


 思わず人見知りという言葉に力が入ったが、すぐに微妙な顔をしたまま流輝は声を潜めた。


「腹黒って」

「まあ、そりゃ話聞いただけだし俺自身が目の当たりにしたわけじゃねーから決めつけちゃ駄目だけどさ。だからこうして観察してるってのに観察する余地がほぼないんだけど」


 髪がブロンドなのはさすがに見てすぐにわかる。長い髪をツインテールにしているが、あんなおとなしめのツインテールを流輝は初めて見たかもしれない。元の世界でも大抵流輝の周りでそんな髪型をしている女子は元気かうるさくて、結んだ髪までぴんと跳ねていたようなイメージがあった。アリアンもわりと高めの位置で結んでいるというのに、本人の性格に反映しているのか尻尾の部分まで元気なく垂れさがっているように流輝には見えた。


「髪に人格があるみたいなこと言わないでよ」

「でも俺の言ってることわかるだろ?」

「わかるようなわからないような……」


 いつも俯き加減だから目の色はよくわからないものの、おそらくブラウンかグレーだと思われる。


「多分笑ったらかわいいだろうにな」

「……はは。それ、ローザリアとか他の令嬢の前では言わないでね」


 先ほどから授業中ではあるが二人並んで座ってこそこそと話をしていた。小声であろうが声に出してはまずいところは時折文字で会話する。いくらほぼ流輝の魔力を使うといえども通信魔法を使う気は絶対なかった。ちなみにそんな様子を周りからこっそり目の保養にされいることを、少なくとも流輝は知らない。


「何で」

「何ででも。とりあえず内気な令嬢っぽいし、そっとしておいてあげなよ」

「うーん。まあ、そうなんだけど、さ。多分あいつはちょっと他のディルアンと毛色が違うのかもな。でもそれとは別に何か気になるだろ」

「……まさか兄さん、あの人のことが好きに……」

「何でだよ……お前までわけのわかんねえ恋だのなんだのを俺に当てはめようとするなよ」

「兄さんこそ、佐藤さん云々を俺に言ってきたくせに」

「おいおい。すげー前のこと持ちだすなよ」

「兄さんだって持ち出したでしょ」

「う……。つか、あれはだってマジでそうらしいからお前に伝えただけだろ。また違うじゃないか」

「そうかなあ」

「そうなの! ……ごほん。と、とにかく俺が気になるのはあいつがいつもどこ行ってんだろってことと、マジで人見知りならあのままじゃ友だちもできねーんじゃないかってことだから」

「とてつもなく余計なお世話じゃない?」

「ルイ。お前最近かわいくないぞ」

「俺は男の子だからかわいくなくて大丈夫。で?」

「何だよ」

「それを気にして、兄さんはどうしたいの?」

「……後をつける」

「は?」


 琉生がぽかんとした顔を流輝に向けたところで先生に「そこの双子。いい加減にしなさい。君たちが優秀なのは知ってるけど、他の生徒の邪魔になる。授業を聞く気がないなら出ていってもらうぞ」と注意された。


「ごめんなさい」

「申し訳ありません、先生」


 二人とも起立して頭を下げると、着席してその後はもう黙った。

 授業が終わると話しかけようとしてくる琉生を制し、目線で「後をつけるからな」と流輝は知らせた。気づいてくれたようだが呆れたように琉生はため息をついている。

 いつものように側近か護衛かわからない者がやって来ると思って様子を見ていたが、今回はやってくる気配はなかった。だがアリアンは構わず教室を出ていく。ほんの少しの間を開けて流輝は後へ続いた。琉生も流輝についてくる。

 どこへ行くのだろうと思っていたが、アステリクラスを覗いてがっかりした様子を見せてきたかと思うとその後はどうにも目的があるような気はしなかった。アリアンは相変わらず俯き加減のまま歩いており、たまたま顔を上げて中庭が目に入ったから何となくそこへ向かうといった感じで歩く方向を変えた。


「あいつもしかして友だちいねーから手持ち無沙汰でふらふらしてるだけとかじゃねえだろな」


 アリアンから目を離し、流輝は困惑したように琉生を見た。


「言い方。でもまあ、そうかもね。もしくは内気過ぎて人のいないところにいたい、とか」

「何だよ、ほんとにディルアンか、あいつ」

「だからさっき兄さんが言ったように毛色が違うんじゃない? もういいでしょ、戻って……あ」


 琉生は話している途中何かに気づいたように声を上げて少し目線を上向きにしている。何だと思って流輝も振り向いた。するとちょうどアリアンの手元からハンカチだろうか。布が風に飛ばされているのが見えた。それは近くの木に引っかかったようだ。


「仕方ねえなあ」


 流輝は迷うことなく取りに行こうとした。すると琉生に「こっそり後をつけてたんじゃないの」と苦笑される。


「そうだけど見ちまったもんは仕方ねーだろ」

「じゃあ俺が取るよ。兄さんは危ないからおとなしくしてて」

「どういう意味だよ!」


 即言い返すが琉生はすでに木のほうへ向かって行った。

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