30話
「先ほどのご質問ですが、ディルアン家の子どもたちは全員で三人ですね。長男のラント様に次男のルバス様。そして長女のアリアン嬢です」
双子もソファーに座るとフランが教えてくれた。それに続いてキャスが説明してくれる。
「ラントは今二十三歳だったかと。ディルアン家の跡継ぎとして父親の仕事を手伝っているようです。父親のドルフはモリス様同様王族の血筋ではありますので王宮勤めをしていて、一応仕事はそれなりにできるようですね」
「キャス……あの方も公爵なのだぞ。言い方や呼び方はさておき、せめて敬称くらいつけろ」
「フランは細かいんだよ。俺だってさすがに本人目の前にして呼び捨てなんかしねえよ」
少なくともキャスはディルアン家の面々を好んでいないということはよくわかる、と流輝は内心思った。変なところで素直というかわかりやすいというか、自分が尊敬したり認めた相手にはとても敬意を払うが、そうでない相手にはそれなりで、嫌っている相手だとこんな感じなのだろう。それを琉生に耳打ちしたら「兄さんとキャスって相性ほんといいよね」と耳打ちを返された。どういう意味かわからない。
とても単純そうな印象もあるが、それでもキャスは十九歳の時に当時九歳だった流輝の護衛騎士となっている。ということは王都学園を十八で卒業してからすぐ騎士として即戦力のある人物だったということだ。流輝たちが子どもだから心を開きやすいだろうと若い騎士を選んだのだとしても、光の救世主相手に実力のない騎士をあの王が自らつけようとはしない気がする。
そんなキャスとずいぶん年齢差がありそうな印象さえある、落ち着いたフランは琉生の護衛騎士となった時は二十一歳だった。キャスと二つしか変わらない。
モテるだけあるよなあ。
今もキャスを呆れたように咎めているフランを流輝はそっと見た。男の流輝から見てもフランは格好がいいと思う。見た目はキャスも格好がいいのだが、フランは中からもそれがにじみ出ている気がする。それに真面目で堅実なところもおそらく女性に人気なのだろう。
のわりに全然浮ついた噂とか聞かないんだよな。
もうこの二人とも五年の付き合いになる。キャスは二十四歳でフランは二十六歳になる年だ。この世界では成人するのが早いのもあって結婚する年齢も早そうだが、フランが誰かと付き合っているところを流輝は見たことがないし聞いたこともない。ついでにキャスもない。流輝からすればフランよりは残念感がちょいちょいあるが、キャスも見た目はいいし何より剣の腕は相当いいからそれなりにモテてもおかしくない気がするのだが、本当にそういった噂は耳にしない。
「どうかされましたか?」
そっと見ていたつもりが、気づけばひたすら見続けていたのだろう、フランが怪訝そうに聞いてきた。
「え? あーうん。フランってすげーイケメンだし仕事もすげーできるだろ? ついでにまあ、キャスも」
「何でついでなんですか!」
キャスから聞こえてきた言葉は無視して流輝は続けた。
「なのに誰かと付き合ってるとか全然聞かないんだけど。もしかして俺らにバレたら駄目とか思ってこっそり付き合ってんの? 全然バレていいしむしろ知りたい勢いなんだけど」
「……兄さんはほんと思ったこと口にするよね」
隣で琉生がそんなことを言いつつ苦笑している気配がするが、それよりもフランの唖然とした顔が珍しくて流輝はますますフランに見入った。
「……、……ごほん。こっそりとかバレてはいけないなどと思っておりません。あとどなたともお付き合いはしておりません」
だが唖然とした顔はすぐにいつものように淡々とした表情になった。フランの横でキャスが笑っている。
「キャスは?」
「俺ですか? 俺も別に隠す気はないですよ。あとフランと同じく誰とも付き合ってないですしね。女の子は好きですけど、それより好きなのが剣やリキ様、ルイ様なので、今はまだ騎士やあなたの側近としての仕事が一番ですね」
「ぇえー……剣が一番ってわからなくもねーけど……もったいない……」
「いやいや。というかそれを言うならリキ様たちこそ、学校でおモテになるでしょう。よさそうなご令嬢はいらっしゃいました?」
「い、いねーよ」
「……今はディルアン家の話をしていたと思うんですが」
「おい、せっかくリキ様と楽しい恋バナになりかけたってのに水差すなよフラン」
「は? 別に俺の話はいらねえし」
「だ、そうだキャス。では続けますが、えっと、ルバス様のご年齢は十五歳ですね。ローザリア様と同じお歳で、皆さまと同じ学園に在学しておりますのでお会いする機会はあるのではと思いますよ」
少なくとも双子たちのクラスにはアリアンしかいなかったということは残りのクラスであるセレーネかアステリにいるのだろうが、ローザリアからは何も聞いたことがない。アステリクラスにいるのかもしれない。
「で、アリアン嬢はお二人もご存じのようですね。ご年齢もお二人とご一緒かと」
「ふーん」
先ほどまでは一応聞いておきたいと思っていたが、そろそろ流輝としてはどうでもよくなってきていた。気のない返事に琉生がまた苦笑している。ただ、その後にキャスが言った言葉であまりどうでもよくはなくなった。
「ドルフがそもそも血筋を重んじるやつなんですよ。そのせいでしょうがローザリア様をあまりよく思っていないようです。もちろんわかりやすく出しはしませんけどね。それもあってあの兄弟もその考えを持っているようです。小さい頃からそんな教育を受けてたんでしょうね」
「はぁっ? んだよそれ。一気に嫌いになったわ!」
ムッとして思わず立ち上がる流輝の横で琉生もが「そういう人らなのか。覚えておくよ、フラン、キャス。ありがとう」と気に食わなさそうな顔をしていた。




