26話
十六歳から選択科目ができるが、その際に魔術科や騎士科を選択する者は大抵、魔術師や騎士を目指す者のようだ。そして希望すれば特定の騎士や魔術師に付いて従騎士や従魔術師として昇進することも可能だと聞いた。通常はこの王都王立学園で騎士や魔術師を紹介されるが、本人に希望がある場合、対象者にその資格があればになるが、その相手に付くこともできる。
「従騎士とかになれば仕える騎士の身の回りの世話したりするんだそうだ」
ニコニコと双子に説明してくるのはとても気さくではあるが、北の方にある国、レイクオーツ王国の第二王子であるフィン・ティターンだ。少し茶色みのあるまさにゴールドといった髪色に青い目をした上品な様子は流輝が想像するような王子様といった風貌で、最初話しかけられた時思わずぽかんと口を開けて「王子様だ……」などと口走ってしまったし、その記憶を自分と琉生とフィンから消し去りたいと思っている。
こんないかにも王子様といった人が何故自ら自分たちに話しかけてくるのだろうとさえ思ったが、どうやら生徒会の会長をしているらしく双子にも勧誘したくて話しかけてきたようだった。実際その時も生徒会室に招かれ、茶と菓子を出された上で話をしていた。
「殿下、俺そういうの向いてなくて。せっかく誘ってくれて嬉しいけど」
ちゃんと「殿下」と呼びかけられたとはいえ、敬語を忘れていたと気づいたのは琉生が口を開いてからだ。
「私は少々興味があります。よかったら今度見学させてもらってよろしいでしょうか」
マジかよその話し方、つか興味あんのかよルイ、と思わず結構な勢いで琉生を見ると、琉生からは苦笑が返ってきた。
「もちろんだよ。見学だけでも是非。とても歓迎するよ。あと二人ともよければ普通に話してくれると嬉しい。名前もフィンと是非呼んでくれないかな」
ちなみに王族、特に他国の王族は本来もう少し身分が下の者に対しては威厳を保たねばならないのではと思っていたが、フィンが双子に対して気さくなのは双子が大公爵子息とはいえただの貴族ではなく、光の救世主だと知っているからだそうだ。安全のため基本的に救世主のことは秘密にされているらしいが、どうやら王族レベルだと知っているらしい。そして救世主の身分は王族と同じくらいなのだともフィンから聞いた。
「だから君たちに王族扱いされるとむしろ俺が困る。もちろん君たちのことは秘密だけども、他にも俺の友人ならば貴族であっても気さくに話す相手はいるから安心して欲しい」
「わかった、フィン。俺のこともリキと呼んで」
「わかりま……わかったよ。俺はルイ、と。でもさすがに俺は気が引けてしまって……できればフィン王子と呼ばせてもらえると……」
速攻で頷いた流輝の隣で琉生が少々申し訳なさそうな顔をしている。最近ますます琉生からしっかりとした雰囲気と言えばいいのだろうか、そういったものが感じられる気がする。
「うん、大丈夫。でも本当に気を使わないで友だちとして仲よくしてもらえたら嬉しいよ」
そしてこの王子ほんと気さく過ぎる勢いだけど爽やかで上品そうでマジ王子様だな……何かキラキラした粒子みたいなものまで見えてきそうだわ。
そんな風に思った記憶だが、今もわりと流輝はフィンのことはそんな風に見えている。
「フィンは従騎士とか従魔術師になる必要ねえだろ」
「まあそうだね。とはいえ俺は第二王子だから王位は継がないんだよ。でも兄を支えるためにも経済学科を選ぼうかなと思っているよ」
王族は経済学科を選択する人が多いらしい。実際十七歳から魔術科、騎士科、経済学科のみ、王宮に関連する学科のため本格的な実践などを学ぶようになると聞いた。そして王族以外ではあるが、十八歳になると王宮勤めなどを希望する者はそれぞれ試験を受け、合格した者のみ卒業後その職につける。魔術科、騎士科は実技試験、経済学科は筆記試験らしく、不合格の者は町の衛兵職や他の職についたり再試験までまた勉強するしかない。
そんな話を聞きながら、流輝は前から思うことはあったものの改めて、皆十代の初めの頃から将来のことを考えているのだなとしみじみ思った。元の世界だと中学や高校くらいで進路や将来のことをしっかり考えている人のほうが少ない気がする。とはいえ元の世界では小学生だったので実際はどうかわからないが、少なくとも流輝はあのまま成長していてもただ学生生活を満喫していただけの気がする。
しかし今現に特に明確なヴィジョンがあるわけではないものの、それは自分の中でまだ心づもりや心構えがないからかもしれない。
いつか元の世界へ帰られるのだろうかという思いと、帰られないかもしれないという思い。そのせいで自分がしたいこともピンとこない気もしないでもない。
ただ、帰る帰らないに関わらず、今ここで生きているのは間違いないわけで、おまけに自分は救世主ではないかもしれないものの召喚された理由もとりあえずはわかったわけだ。琉生を守るという思いだけでなく、帰られる帰られないを言い訳にしていないで、いい加減自分の立ち位置や覚悟などを決めるべきなのかもしれない。




