23話
少し歩いていると何やら人が集まって騒いでいるところがあった。好奇心には勝てないので覗くと、いくつもの小部屋だろうか、穴が内側に作られたサークル状のものがテーブルに置かれているのが見えた。小部屋ごとの屋根にあたる部分にそれぞれカラフルに色が塗られている。
「なにあれ」
「ああ、ミューダ当てですよ。真ん中に置いている小さな石をミューダがどの部屋に運ぶかを当てるゲームです」
キャスの言葉に流輝は「ミューダ?」とさらに少し離れたところにある置物を覗き込んだ。すると元の世界でのネズミのような小さな生き物が出てきて真ん中に置かれている石を手にとると、しばらくフンフンと匂いを嗅ぐような仕草をした後に緑色に塗られた穴へ入っていった。とたん、近くにいる周りの観客たちが「当たった!」「外れた!」と騒いでいる。どうやらミューダがどこに石を持って入るかを当てるゲームらしい。
「さて、では今からトーナメントを始めるよ。連続して当てられるかな! 優勝者には豪華賞品があるよ!」
店の人が叫ぶと周りはさらに盛り上がっている。フランが双子を見てきた。
「やりますか?」
「俺、やる。こういうの俺、わりと当たるんだ」
流輝はハイッとばかりに手を上げながらテーブルへ近づいた。琉生はどうやら参加しないらしい。掛け金という名のゲーム代がかかるためか、先ほどは遠慮なくパラクレタを食べていたくせにゲーム好きのキャスもおとなしく見ていることにしたようだ。多分これがカードゲームだったら自分の懐を痛めてでも参加してただろうなと流輝はそっと笑った。
「また当たった! あの少年たちすごいな」
少し離れたところで周りが歓声を上げる。不正防止のためなのか意味はないのかはわからないが、参加者と見学者は隔たりがある。向こうからこちらの顔はほぼ見えないだろうが、身長などで少年だと判断しているのかもしれない。
実際、自分で言ったように流輝は先ほどからずっと当てていた。もちろん統計だのなんだのと計算してなどいない。完全に勘だ。元の世界でもくじ引きや勘を頼りに何かを当てるといったことは得意なほうだったが、今このゲームをやってみて我ながら少々びっくりしていた。
俺の勘、冴えわたりすぎじゃね?
まるで見えるかのように感じていた。
そしてもう一人、流輝と同じように当ててきているおそらく年の近い少年がいる。ちらりとその少年を見ると流輝に対して対抗意識でも持っているのか思いきりがん睨みされた。流輝たちのように一応町にいてもさほど違和感のない服装をしてはいるが素材や仕立てがかなりよさそうなので貴族かもしれない。
結局最終的に最後まで残ったのは流輝だった。少年は心底悔しそうな顔をしていて、従者だろうかに「ルバス様、惜しかったですね」と言われて「負けたら惜しいもくそもない!」と言い返しているのが聞こえてきた。相当負けず嫌いなのかもしれない。最後に流輝をひと睨みした後とても腹立たしげな様子で立ち去っていった。
「すごいじゃないですか!」
豪華賞品らしきものをもらって皆のところへ戻ると、キャスがあと一歩で流輝を高い高いでもしてきそうな勢いで興奮している。正直そこまで興奮するようなゲームではなかったと思うし改めて騎士の誓いをしてからのキャスが本当に変だよなと流輝がしみじみ思っていると琉生も近づいてきて「豪華賞品はなんだったの?」と聞いてきた。
「多分おもちゃの指輪」
微妙な顔でもらった賞品を見せると琉生は笑いながら「でも綺麗じゃないか」と指輪を見ている。
「そうか? ならルイにやるよ」
「いや、何で俺?」
綺麗だと言いながら指輪を見ていたからだというのに琉生に即突っ込まれた。微妙に納得がいかない。
「せっかくだからローザリアにあげなよ」
「それこそ何でローザリアに。あいつお姫様だぞ。こんなおもちゃいらないだろ」
「はぁー……」
「何だよそのため息」
「……なんでもない。とりあえずローザリアにあげなよ。女の子はアクセサリー大好きだよきっと。喜ぶと思う」
「そうかなあ? まあ俺が持ってても仕方ねえしな」
おもちゃのような指輪だが、それでも優勝景品だけに模造石はもしかしたら安いものでもないのかもしれない。アクセサリーには基本的に全く興味がないので流輝にはわからないが。ただ琉生からもらった宝石は大切にしている。最初はキーホルダーのようにして持っておこうかと思ったが、そもそも鍵を持つ機会が今のところ流輝にない。色々考えた挙句、髪を伸ばして髪留めにしようと思い立った。それなら肌身離さず毎日持っていられる。ただ全体的に伸ばすと面倒そうなのでサイドだけ伸ばしてそれをハーフアップのようにして留めたらいいかと思いついた。なので現在絶賛伸ばし中だ。
ちなみに琉生に言われた通り次にローザリアに会った時に指輪をあげると、流輝が驚くくらい喜ばれた。
「指輪好きなの?」
「え? あ、えっと、うん! そう。指輪、好きなの。嬉しい」
「でもそれキラキラしてるけど多分おもちゃだぞ。町の市場でやってたゲームに優勝してもらったやつなんだ」
「全然問題ないよ、それに綺麗でかわいいし」
「そっか。ならよかった。ルイがさ、お前にあげたらいいって言ってきてさ」
そんなに喜んでもらえるならよかった、と笑みを向けながら言えば、満面の笑みだったローザリアが一瞬思いきり落ち込んだように見えた。
「ローザリア?」
「そっか。ルイがね。……でも嬉しい。ありがとうリキ。私、これすごく大事にするね」
見ればやはり嬉しそうに笑っている。落ち込んだように見えたのは気のせいだったようだ。
「おもちゃなのに。お前、ほんと指輪好きなんだな」
あとで琉生に「どうだった?」と聞かれたのでやり取りを話すと何故か生温い顔をされた。




