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双神の輪~紡がれる絆の物語~  作者: Guidepost
1章 幼少編 異世界召喚
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14話

 ようやく流輝を見つけた時、流輝は盗賊らしき男に担がれ暴れに暴れていた。


 ッチ。マジ何やってんだあのガキ……!


 だがその様子を見ると、その子どもに対する憤りだけでなく冷静さも吹き飛ぶかと思った。脳裏に大切だった妹の姿が浮かぶ。

 キャスは一瞬の内にその男のところへ移動すると流輝を奪い返した。抱きかかえたままでは埒が明かないのですぐに下ろし、自分の後ろへ回す。一応かろうじて冷静な気持ちを保っているつもりではある。我を忘れたら守れるものも守れなくなる。だがともすれば忘れそうになるのを何とか堪えている状態だった。今にも切れそうな危うい糸みたいなものだ。


「テメーら全員、何やってくれてんだ……おとなしく投降しやがれ……でないとぶっ殺すぞ」


 後ろで流輝が「キャス、どうしたんだよ……何かいつもと……」と何やら言っているがそれどころではない。自分を保とうと何とか耐えながら、キャスは剣を振るった。魔族と戦うこともあるキャスにとって、たかが盗賊など塵芥にも等しい。ただ、今は自分を保つことが中々に困難で、ともすればそれに気が行きがちだった。

 ふと、他の盗賊たちを雑に剣で薙ぎ払っていると、自分の背後を狙っている盗賊の一人を感じる。一瞬の内に体をひねって対応しようとする前に、しかし流輝がその男に飛びつこうとして逆に投げ飛ばされていた。その衝撃で気を失ったのだろうか、ぴくりとも動かない。


「この野郎!」


 流輝を投げ飛ばした男を速攻で倒すと、キャスは思いきり唸った。


 クソ……! 俺こそ何やってんだ……! 馬鹿野郎、冷静になれ……! この子どもは妹じゃねえ。しかも絶対に守らなきゃならねえ光の救世主の一人なんだぞ……! 俺の馬鹿野郎が……!


 怒りや憤りといったものを振り払い、キャスはようやくいつもの自分を取り戻した。そして一気に盗賊たちを倒す。盗賊は皆倒れ、関係のない者たちはあっという間に逃げ、ようやく剣についた血を空で切ってから鞘にしまうと、キャスは流輝の元へ駆けつけた。

 流輝は完全に意識を失っていた。そのまま横抱きにして抱き上げるとキャスは歩き出し、とりあえずこの場所から一番近い近衛兵の詰所へ向かった。

 抱きかかえる流輝はとてつもなく軽かった。キャスはため息をつく。

 あの時、流輝が助けようとしなくともキャスは対応できていた。いくら冷静さに欠けていようが、ただの人間相手にいくら人数がいようが、あれくらいはキャスにとっては全く問題はなかった。


「……マジで軽いな……」


 こんな子どもが咄嗟に庇わないといけないと思うくらい、自分は冷静さを欠いていたのだろう。キャスに任せておけば大丈夫、と流輝が安心できないほど不安定に見えたのだろう。何と情けないことなのかと、流輝を抱えていなければ今すぐ自分を殴りつけたい気持ちだった。

 流輝と琉生はもう十二歳になったはずだが、相変わらず年相応に見えない。それよりも幼く見える。双子がこちらの言語を理解してお互い意思疎通ができるようになった頃、双子の実年齢を聞いて自分たちだけでなく王も唖然としていたくらいだ。

 だが、それでも光の救世主の一人なのだとキャスは妙に実感していた。あんな盗賊に囲まれ、おまけに元々連れ去ろうとされていたくらいだというのに、普通なら怖くて縮こまっているような状況で流輝は一瞬の迷いもなくキャスを助けようとしてくれた。そういえば召喚されたばかりの時もひたすら自分の弟を守ろうと立ち向かっていた。


 あの頃あの時、怯えて足が動かなくなっていた俺とは違う……。


 確かに今回また流輝は無謀なことをしでかした。だがそれも自分の弟が心配なあまりの行動なのだろう。

 近衛兵に盗賊のことを報告すると、キャスは改めて流輝を抱きかかえ、ターナー家へと急いで連れ帰った。




 ふと目を覚ますと、流輝は自分のベッドの上で眠っていたことに気づいた。そして重みを感じて隣を見ると、琉生が流輝にしがみつくようにして眠っていることに気づいた。琉生の目元を見ると涙の跡がある。

 目が覚めた際に琉生の姿があることに心からホッとしながら、流輝は琉生の目元をそっと撫でた。自分も泣きそうな気持になる。


「よかった……目、覚まされましたか」


 キャスの声がしてそちらを見ると、部屋の片隅にいたらしいキャスが流輝のようにホッしたような顔で少し近づいてきた。


「俺……」

「リキ様は俺を助けようとして盗賊に突き飛ばされ、意識を失われておられました」

「そ、うか。ごめん。役立たずで……」

「とんでもない。俺こそ本当に申し訳ありませんでした」

「……何でキャスが謝んの?」

「何よりもまずあなたを守らなければならないのに、冷静さを欠いておりました」


 確かにいつもと様子は違っていた。ちなみに今も何となくいつものキャスではないような気もしないでもない。とにかく、あの時のキャスの様子について聞いていいのかわからず、流輝は琉生を見て「ルイ、帰ってたんだね」と呟いた。

 そして、琉生は流輝が気を失っていると知り、ずっと泣きながらそばを離れなかったと聞いた。キャスもフランから聞いたらしいが、流輝に何か贈りたいからと町へ出向く使用人に頼み込んでついて行ったらしい。


「何で贈り物なんか……」

「また聞きですけどね、リキ様は弟であるルイ様のためにいつも不安を隠してがんばろうとしてくれているから、だそうです。本当はルイ様より優しくて繊細なのに、と」

「せ、繊細とかそんなことねえけど!」


 琉生にそんな風に思われていたこととかキャスの口から聞かされたこととかがあまりに照れくさく、流輝はムキになって言い返した。


「……あなた方はまだ子どもなのに親元から離され、異世界に突然連れてこられた。お互い不安で仕方ないでしょう。改めてあなた方のつらさを俺も実感しました」

「キャス? あの、何か悪いもんでも食べたの……?」


 もしくはキャスの振りをした魔族だろうか。


「俺、あなた方を見ていて、少し俺の妹を思い出しました」

「キャスの……? 妹いたんだ。今いくつ?」

「……もう亡くなってます」


 俺の馬鹿……!


「ごめ……」

「お気になさらず。妹は……俺が今のあなたと同じ十二歳の時に盗賊に殺されました」

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