100話
きっとロニーだけでなくセオもそうだろうが、このモールザ王国で彼らは自分たち以外の周りをまず疑ってかからなければならなかったし、誰が魔族で敵かわからない中、とても孤立していただろう。信頼と絆がどれだけ精神的にも戦力的にも強いものか、どれだけ必要なものか身をもって知っているに違いない。
そんなロニーから言われた優しい言葉だっただけに余計心に響いたし嬉しいのだろうと流輝は思った。
兵士たちの動きがさらに騒がしくなってきている中をなんとかすり抜け、流輝たちは正妃や幼い王子、王女、そして闘技奴隷と流輝たちの他のメンバーが隠れる倉庫へ戻ってきた。
ロニーが無事だとわかると皆とても喜んでいた。幼いジェスとシエナは思いきりぎゅっとロニーにしがみつくように抱きついている。
改めて簡単に自己紹介されたが、正妃ネイの他にはロニーとルビーの母親ジーナ、ジェスの母親オリビア、シエナの母親テレサ、そしてまだ子どものいないウィラという四人の公妾がいるようだ。
正直、初めにこの女性たちを見た流輝は内心ローガン王に対して改めて「何てやつだよ」と思った。何人かいるとは聞いていたが、正妃を含め五人もの女性を娶っているとは思わなかった。それとも一夫多妻制なら普通のことなのだろうか。
ネイやジーナはローガンと似た年齢なのだろうが、子どものいないウィラは下手をすればローザリアやアリアンとさほど変わらないように見える。二人よりは上だろうが、年は近いのではないだろうか。そう、おそらく第一王女であるルビーとそれこそ変わらないだろう。
羨ましいとさえ思えねえな……。
我が子と変わらない年齢の相手をよくそういった対象にできると流輝としてはドン引きだった。
とはいえこれも一夫多妻制なら珍しいことでもないのだろうか。他国の文化をとやかく言うつもりはないが、ニューラウラ王国が少なくともそういう文化でなくてよかったと流輝は思った。
俺ならローザリアだけをずっと大事にしたい。他の誰かなんていらない。
そう思ってからふと、今の考えはまるで自分とローザリアが生涯一緒にいるみたいじゃないかと思い、流輝は少し顔が熱くなる。
いや、でも大事にしたいってことはそういうことだろ。いい加減な気持ちで、昔から家族のように大事だったローザリアに手なんて出せないんだからな。
うんうんと思ったところでまた顔が熱くなった。
手を出すとか気が早いんだよ俺。
顔色に目ざとく気づいてきたキャスが「まさか魔法の使い過ぎで具合が悪くなったのでは」と心配してきた。そろそろ流輝の実力を信じ、あまり無駄に心配しなくなってきたと思っていたが、油断すると昔からの小うるさい母親みたいなキャスになる。
「俺の魔力は底なしなんだ。こんなぐらいで具合なんか悪くなるわけないだろ」
「ですが……。では何故顔が赤く?」
「なってねえ」
「いや、赤いですよ?」
「うるさい。そういえば殿下たちには側近や専属騎士はいらっしゃらないんですか」
とてつもなく話をそらしたくて流輝が今さらなことを聞くと「誰が信頼できるかわからないから」と苦笑された。流輝の気持ちが切り替わる。
「あー……。……本当につらい苦しい状況でよくやってこられました。あなたがたは絶対に生き延びてこの国を作り直して欲しいなと改めて思います。……ではこれから外に待機している俺らの仲間のところまでどうやって抜け出すかの計画を話します。そこまで行けたらあとは簡単です。転移魔法を使える魔術師が控えてますので。彼らは戦闘系でないためさすがにここまで連れて来るのは厳しくて」
倉庫外の様子を窺いつつ、流輝は計画を話した。待機している場所まで妃や幼い子どもを守りながら向かわなければならない。そのため、一部の騎士が別の場所で敵をひきつけてその隙に向かう。
本当ならば今度は集中して目くらましの魔法を使うつもりだったが、思っていたより妃たちが多いため急遽、今回もそれは諦めようと流輝は思った。代わりではないが、とりあえず幼いジェスとシエナはがたいのいい騎士二人に背負ってもらうことにする。
なんとも危なっかしい状況ではあるが、やるしかない。一応ぞろぞろと身をさらすことなく、こっそり向かうルートは確保してある。あとは気をそらす役の騎士頼みと、向かう途中誰かに見つかった場合は有無を言わせる暇もなく倒すしかない。守る人数は先ほどより少し多い分、背後から突然攻撃を食らうことのないよう背後にも気をつけつつ歩くことは可能だ。
「敵をひきつける役はあなた方ではなく、自分たちにまかせてください」
あらかじめ決めていた騎士たちにハーフブラットの騎士たちが言う。
「しかし……」
騎士たちは困惑しつつ流輝を見てきた。
「提案は嬉しいけど、あなたたちは見つかったら余計危険なんじゃないの? それに家族だってここにいるだろ」
「リキ様。自分たちのほうがここのことをよく知ってますし上手くそらせます。剣だけでなく魔法もいけますし。これでも魔族ですから。安心してください、自ら死にに行くつもりではないです。それこそ家族がいますんで。すぐにおっしゃっている外の待ち合わせ場所へ向かいます」
だから是非この役は我々にと強く願うハーフブラットの騎士たちに、流輝たちも折れるしかなかったし、ありがたいと思った。




