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あたまのなか

作者: きらいろ

人が多い雑多なこの小さい箱の中を私は歩く。


いろいろな服、いろいろな色と生き物の気配が息づき混ざりあって、奇妙な世界を作り出していた。


私だけがこの場に混じっていないまがいものな気がして、人の形をしたものが蛆虫に見えてきた。そうやって自分だけの世界に閉じこもっていく。


よく、人に言われる言葉がある。言わないとわからない。黙ってたらいいと思ってるのか。


わからなかった。


私はこの世界に受け入れられていないのに、その中で違和感なく平気な顔をして暮らすあなた達が私のことを理解するはずがない、私の言葉を聞くはずがない。


言ったとしても、何か行動したとしても、飛んでくるのは世界に上手く馴染めることができた普通の人には言わない言葉で。私は何をしてもだめだった。



「馬鹿だなー」聞きなれた声が頭の中で響いた。

何?というと「つらいことなんて考えなければいいのに。ほら、今日食べる晩御飯とか好きな漫画の発売日とか!」と笑うような声色でそいつは言った。


「いまさらでしょ」私が言う

「諦めきれないの?」そいつが言った

「本能に勝てないだけ」私が言った。


考えなければいいだけならとっくにそうしている。できないのはこの自暴自棄になりきれない性格と、片付けるものがたくさん家にあるからだ。


そいつはいつの間にかいて、どれだけの間、頭の中に居るのかわかない。でもこの私を知ってくれる貴重な存在だから無下にはしない。


頭だけの存在であるなら、いつでも自由に思考停止できるんだろうか。そんなことを考えていると「できないよ」なんてことない口調で今年で1番驚く言葉が発せられた。


「いつも何を考えているの?」なんとなくそう言った。「君のこと」え?「いつもきみのことを考えてる」今年で1番驚いた言葉がさっそく更新された。なんでそんなこと。



「今日も死なずに生きれるだろうか。お金の管理は大丈夫だろうか。スマホは持ってるのか。充電はちゃんとされてるのか。そんなことずっと心配してる」いつもいつもからかうみたいに話すくせに。


言葉が続かない。言われたことなんてなかったし、そんな心から心配してるみたいな口調で言われてもいまさら自分の中の何かが変わるわけがない。どうすればいいの、わたしいきたくない。



「僕のこと心配してよ。僕のこと考えてくれたら嬉しいな」そんな殺し文句。



私がどんな言葉に弱いかをわかっていて、そいつがそこを突いてきてしまったから断る理由なんてなかった。

そうだそいつのことを考えてればいい。好きなことや嫌いなところをたくさん知ってみようかな。


そこまで考えて思いいたった。私から初めて声をかける。「ねえ、あなたの名前はなんていうの?」


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