そこに入ったら、もう終わり
直貴は思った。
こいつらは敵だ。俺をこんな状況に貶めたまさに元凶。こんな奴らに説かれているようじゃ、確かに俺も終わってる。しかし、奴らの言っている事は間違っていない気がした。俺は今までマイナス思考でいくつものチャンスを見逃してきただろう。思えば、マイナス思考になってからの俺は最悪だった。そうだ、思い出せ、プラス思考だった頃の俺は何もかもうまくやっていたじゃないか。こいつらのおかげで最後のチャンスは見逃さずにすんだみたいだ。全く俺という奴は土壇場では必ず運がいい。そう、このプラス思考がいい。良い方向へ向かう姿勢。俺は運がいいんだ。このまま強制労働施設で働くなんてごめんだ。そんなことよりこのチャンスを活かしてみせる。何せ相手は人生の負け組み達、選りすぐりの衰運の持ち主達だ。俺は負けない。負けるわけが無い。最後に勝って昔の俺を取り戻す。ここから先の俺の人生、勝ちの流れに乗ってみせる。
直貴は久野の説得に対して返事はしなかった。しかし、心の中では既にゲームへの参加を決めていた。
久野は思った。
全く、馬鹿はどこまでも馬鹿だ。たった今出会ったばかりの人間の言うことをどうしてこうも簡単に信じることができるのだろう?いったいどんな人生を歩んできたらこんなに甘い人間になるのだろう?お前らは今まで騙されて騙されて、それでも馬鹿正直に信じてきたからここまで落ちてきたんだろ?いいかげん学習するべきだ。疑うって事を。人間は嘘つきだって事を。
ちょっと焚きつけただけで熱くなりやがって、『俺にもまだ勝ちの目はある。俺はぎりぎりでやっぱり運がいい。』そんな顔してやがる。おいおい、もう勝ちの流れに乗ったつもりかよ。お前みたいな単細胞はおそらく一瞬で終わりだ。喰われて終わり、勝ち癖をつけるなんてとんでもない。お前は一生負け組みのレールの上だよ。
残念だがお前達が今からやろうってゲームは強制労働施設送りを選別し、勝者をシャバに戻そうなんて甘いゲームじゃない。だいたいお前達のようなクズを強制労働させたところで返済が終わるのは何年先か?そんな途方も無い時間を費やすより、もっといい方法がある。お前らのようなクズをおもちゃに使いたがっている組織に売りつけるんだよ。お前達はそこで適当に弄ばれて飽きたら捨てられる。これから始まるゲームでおそらくシャバに戻れる奴は一人もいないだろう。
久野はプロだから表情には出さない。




