こんな連中に説かれるようじゃ、俺も終わってる。
「では、改めて、川畑直貴様の今後の処遇について説明させていただきます。よろしいですね」
久野は車を運転しながら言った。
「・・・・・。」
直貴は、返事をしなかった。
「あなたは今からある場所へ監禁されます。借金が返済されるまでシャバには戻れないと思ってください。」
「・・・強制労働か?」
直貴はボソッと言った。
「察しがよろしいですね。しかし、今から行くところにはあなたと同じようなクズが世界中から集められます。それはもう何百人と。組織としてもそれほどの人数を収容することはできません。そもそもあなたたちは力仕事程度の労働力にしかならない技術も知識も無いクズです。そんな人達をそんなにたくさん雇う意味はほぼありません。ですから、あるゲームによって人数を減らします。」
久野の説明に直貴は反応した。
「どういうことだ?」
「つまりですね。一〇〇〇万円の負債者が三人いたとします。あるゲームで負けた者が三〇〇〇万円の負債を背負い、勝った二人を開放すると言う意味です。一人あたりの付加を大きくし、負債者自体の人数を減らすと言うことです。川畑直貴様にはこれに参加していただきます。」
「・・・・・。」
直貴はすぐには返事ができなかった。暫くの沈黙の後、
「ま、負けた時は借金が三倍だと?そんなゲームにはのれない。のれる訳無いだろ。」
「そう言うと思いましたよ。あなた達のような人達は負けた時のことしか考えない。だからそうやっていつもチャンスを失う。もっとよく考えてみてください。勝ったらチャラと言うことはそのまま勝ちが積もればプラス、つまり四〇〇〇万円の負債者が出てあなたがプラス一〇〇〇万円で開放される事だってあるってことです。あなたの人生で今まで一〇〇〇万円が近くに見えたことがありますか?無いでしょう。これはクズから一気に人間、いやうまく凌げば富豪に手が届く、まさに千載一遇のチャンス。このゲームに参加しない手は無い。」
「・・・いや、わかる。わかるけど、その、なんて言うか・・・ここのところ博打はからっきしダメで・・・。そのゲームに、勝てる気がしないって言うか。」
情けねぇ、どれだけ負けてきたんだこいつは、久野は敬語を使うのをやめて言った。
「直貴、その考え方、そのマイナス思考が今まで目の前を通ったいくつのチャンスを見逃してきたことか。今のお前をダメにしているのはお前のその心だ!そうやっていつまでもマイナス思考ばかりを繰り返すからお前らのような奴はいつまで経ってもマイナスのまま、上にあがろうという姿勢が既に無い。お前は心まで貧しくなっちまったのか?それに考えてみろ。今から戦う相手は百戦錬磨のギャンブラーって訳でもないしプログラムで管理された完全無欠の機械でも無い。事業に失敗して倒産した会社の社長や借金つくって自殺した親のせいで捕まっちまったかわいそうなガキとか、そう言った衰運の流れにある奴らが相手なんだ。言わば運の無い奴らの最後の戦い、ここで負けるようなどうしようもない奴ならもう、死んだっていい。この先、生きていても辛いだけだろう。お前だって元はギャンブラーの端くれだろ?運が無い時は、もっと運の無い奴を喰えばいいだけだ。それともまじめに働いて一〇〇〇万返済するのか?強制労働施設じゃお前らのことを人間扱いなんてしてくれない。お前が一日中力仕事をして、それを何年、何十年繰り返したら一〇〇〇万貯まるだろうなぁ?そんなんじゃないだろう?勝ってくるんだ。お前の人生に勝ち癖をつけてくるんだよ!!!」