コイントス、裏が出る確率 五〇パーセント この勝負での勝率 〇パーセント
直貴が投げた一〇〇円玉、いや、一〇〇〇万円は緩やかな放物線を描きながらゆっくりと地面へ向かって、勝負の行方へ向かって突き進んでいった。
・・・・チャリ、チャリン。
二、三回小さなバウンドを繰り返した後、床の上で動きを止めた。
出目は?表か? 裏か?
その場にいた皆がいっせいに小さなコインに注目した・・・と思われた。
一人だけ一〇〇円玉の行方に見向きもしない者がいた。
五十嵐だ。まるで、既に勝利を確信しているかのように。
直貴は一〇〇円玉を見ていた。地面に落ち、静止した一〇〇円玉、その出目は・・・
裏!!!
『100』の数字と製造年が記された面の方だ!
そう、直貴が賭けた方の面だ!
出た!!!出たじゃないか!やっぱりイカサマなんてない!確率五〇パーセントの勝負、俺の勝ちだ!!!
五十嵐だって神様じゃない。ただの詐欺師だ。完全確立の世界じゃ、そりゃ負ける事だってあるのさ!
勝負の前のあの自信のこもった薄ら笑いは何だ?ただのハッタリだったのか。さて、この男、負けたらどんな顔するのかね?
直貴は大きく目を見開いて口元にやや笑みを浮かべながら五十嵐の方へ顔を向けた。
五十嵐は、悔しい顔どころか未だに勝ち誇ったような笑みを浮かべたまま、直貴を見ていた。
なんだよこいつ。悔しい顔の一つもして見やがればかわいいものを。全くプライドの塊め。しかし、俺はお前に大金を取られたが、プライドだけは取り返したぜ。
直貴はプライドの塊に向かって言った。
「さて、じゃぁ堀川は貰って行くぜ。」
直貴は堀川に縛られていたロープをほどこうとした。
「待ちなさい!この勝負、私の勝ちです。」
五十嵐は細く切れ長の目で見つめ、相変わらずの薄ら笑いを絶やさずに言った。