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ー綾ー  作者: 城塚崇はだいぶいい
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貧しき者は持たざる者に在らず。搾れ、搾り取れ

 久野祐太郎は車を運転していた。借金の返済が滞った客を連行する車だ。

 目の前に富豪と貧民がいます。この二人から金を稼ごうと言うのであればどちらをお客に選びますか?そりゃ、富豪に決まっている。金の無い奴を客に迎えても何も儲からないに決まっている。そうですね。それが普通の考えだ。しかし、ちょっと考えてみてもらいたい。 富豪が富豪になれたのは何故だ?それは商売がうまかったのかもしれないし、駆け引きがうまかったのかもしれないが、何か人に無い能力やアイデアがあったからだ。つまり富豪になるにはそれなりの賢さが必要だと思わないか?それに引き換え貧民が何故貧民になったのか?それは簡単、能力もアイデアも無いくせに人並みの努力もしない、ようは馬鹿だったから貧民なのだ。金をまきあげるのなら、賢い者を相手にするより馬鹿を相手にしたほうが何倍も簡単だ。じゃぁこの馬鹿からどうやったら金を取れる?答えは金融会社だ。馬鹿をちょっとつつけば調子に乗って金を借りる。その金をそっくりさらってしまえばいい。俺達詐欺師はそうやって食ってきた。貧民にはまだ喰う所が残っているのだ。

 さて、それでは返ってくる見込みの無い金を貸してしまった金融会社は丸損なのか?と思ったらそんな訳は無い。そもそも金を貸してその利息で儲かろうなんていう考え方が既にもう詐欺に近い。馬鹿を騙して楽に儲けようという考え方のライン上の話。金が無いのに金が使いたいから金を借りるのだ。つまり借りた金は使うのであり、使った後に利息もつけて金を返せと言われても返せるわけが無い。そんなことできるわけ無い。そんな話が通るわけが無い。だから賢い者は最初から金など借りたりはしない。金を借りるのは馬鹿だけだ。つまり金融会社は馬鹿を喰う為に創られた会社なのだ。ご利用は計画的に?そんなのただの建前!計画的に返済されたんじゃ何の旨みも無い。無計画な馬鹿がいるからこの世の金融会社は利益をあげられるのだ。それでは借金で首がまわらなくなった貧民。あちこちでぎちぎちに搾られてもう甘みなんて全くなくなってしまったこのどうしようもない搾りカスどもを最後にどう喰うのか?それにはやはりちょっとした料理が必要であり、それをするのが俺達の仕事だ。

 俺は借金で首がまわらなくなった川畑直貴と言う馬鹿なガキを乗せた車を運転しながら言った。

「移動中に川畑直貴様の今後の処遇について御説明しておきましょう。」

「馬鹿野郎!!!俺はお前らの言うことなんて聞かねぇからな!だいたいそんな昔の金を今になって持ち出しやがって!」

 直貴は相変わらず暴れながら言ってきた。

 このガキ、自分の置かれた立場が全くわかってねぇらしい。仕事柄俺は数多くの馬鹿と対峙してきたが、これはその中でも最悪のタイプ、立場が悪くなったら理屈も言い訳も出ないくせに、声だけはいっちょ前に張り上げてゴネてゴネてゴネ通す。もはや泣き出した幼児だ。

 久野は腹が立って我慢できずに言った。

「てめぇこそ今になってもがくんじゃねぇ!!!」

 おっと、俺としたことが、馬鹿に対していちいちムキになったんじゃこの仕事は勤まらない。すぐに表情を取り繕って言った。

「これは金融業界では良くある手です。貸した金が利息で膨れるまで黙っておいて、いざとなったらとっ捕まえて囲う。あなたはハメられたのです。そして、もう逃げられません。泣こうが喚こうが誰も助けに来ません。あなたは観念して借金を返すのです。」

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